仁愛女子短期大学音楽学科教員による
ピアノ・ジョイント・コンサート
2005/07/15 金沢市アートホール
1)バッハ,J.S./パルティータ第1番
2)ブラームス/4つの小品op.119
3)ショパン/幻想ポロネーズop.61
4)(アンコール)
5)ドビュッシー/映像第1集
6)プーランク/メランコリー
7)バーバー/ピアノソナタop.26
8)(アンコール)
●演奏
木下由香(ピアノ*1-4),中野研也(ピアノ*5-7)

Review by 野々市町Tenさん  

仁愛女子短期大学音楽科教員就任お披露目のリサイタル。金沢出身の木下さんはOEKのジョイントでもおなじみ、デビューリサイタルもこの会場だった。そのときもバッハ、ベートーヴェン、バルトークといった正統派の選曲だった。

パルティータ、何ともすがすがしい曲で古くリパッティのレコードをよく聴いたものだ。ゆったりとしたおなじみのプレリュードから淡々と流れていく。曲ごとのテンポ感も自然だ。最後のジークで初めて力感が示される。ただ、旋律とバスラインの一体感が乏しい。高い音の音色も固いような気がした。丁寧ではあるが躍動感がほしい。

ブラームス、これはグールドをよく聴いた。晩年の作品でもありきわめてシンプルな曲に叙情が漂う。これも中庸な表現である。

ショパン、これも晩年の作品で華麗さに乏しくいわゆるショパンらしさが強調される作品ではない。3曲とおしてある意味、受け狙いでなく曲の内面を表現することに主眼を置いた選曲であり表現だったようだ。ただ、技術的には何の問題もないのだろうが、もうひとつ楽しくない。少し整えすぎたのではないか。アンコールにバルトーク風の小品。

中野研也さん、愛知県出身とのこと。素晴らしい演奏で最近では富山でのキーシン以来、この会場では小菅優さん以来、ピアノを堪能した。

映像、はじめの数小節で確かなテクニック、透明な音色が聞き取れる。第3曲の三連符にも象徴されるようにリズム感が抜群で作曲者が意図したことが明快に伝わってくる。

プーランク、はじめて聴く曲だが、曲解説にあるようにA−B−Aの三部形式や5度の下降型のテーマの転調など、おおげさにいえば手に取るように理解できた。あまりラテン系のそれも近現代の作品は好みではないのだが、確かに「フランスのシューベルト」と呼ばれるだけあって、あの8つの即興曲を思わせる佳曲だった。ため息をついているうちに拍手なしのままバーバーが演奏された。

バーバー、有名なアダージョくらいしか知らないがこの曲も立派である。Rシュトラウスのソナタも大好きな曲だが負けてない。12音技法による難渋のかけらもない。終楽章のフーガでエンジン全開。圧倒的パフォーマンスが繰り広げられた。アンコールにリスト風の超絶技巧、キーシンならここから5.6曲続くのだが。もっと聴きたかった。今度はペトルーシュカかチャイコフスキーの協奏曲を!(2005/07/16)