京都大学交響楽団・金沢大学フィルハーモニー管弦楽団ジョイントコンサート
2005/08/10 石川厚生年金館

1)ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調op.88
2)ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調op.55「英雄」
3)ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
4)(アンコール)レスピーギ/交響詩「ローマの松」〜「アッピア街道の松」
●演奏
塚田瑠美(1);関大輔(2-4)指揮金沢大学フィルハーモニー管弦楽団(1,3-4),
京都大学交響楽団(2-4)
Review by 野々市町Tenさん  
近年、この会場に足を運ぶ機会は少なくなった。響きがデッドというより伝わってこないからだ。しかし、京大の演奏、それも最も好きな交響曲のひとつエロイカである。残念ながら夏場でもあり聴衆が少なかった。まだまだクラシック音楽ファンの裾野は広がっていないのかもしれない。

エロイカ、関さんの指揮振りは真に明快。しかも1楽章の三拍目や2楽章の四拍目(実際は2拍子だが)を次の章節の弱起ではなく、上から振り下ろすのだ。冒頭の主和音も明らかに3拍子の一拍目だ。したがって二拍、三拍目は完全な休符となるので、テンポはおのずとゆったりする。弦、木管のバランスもよく、sfもたっぷり強調した堂々たる歩み。朝比奈先生のベートーヴェンを思い起こす。結尾部の盛り上げも自然、Uあたりからの弾むようなヴァイオリン、トランペットのタタタタンのリズム感、わくわくする。そしてテーマはオクターブあげることなく品よくまとめる。

2楽章、ここに最大の力点が置かれた。指揮棒を譜面台に置き、テンポをおとしたっぷり歌う。冒頭のコントラバスの装飾音符も意味深い。オーボエの美音につづきAのヴァイオリンによるテーマ、ぐっと楽器を持ち上げ感動的である。(「のだめカンタービレ」のひとこまを思い出してしまった)そしてクライマックス、4本のホルンを高々とかかげての強奏、ドーレミファーミ、レーミファソーファミ、熱い。

3楽章、一転早めのテンポで軽やか、このトリオでのホルンは1番と4番が交互に演奏してあくまでも3本、sfだけ強調してあとは流す。

4楽章、ここも早くて軽やか、ピチカートのテーマの前のフェルマーターもあっさりしている。私はこの変奏曲の楽章を最も好む、その点からはやや物足りない。心がこもったポコアンダンテ、しかしここのホルンのクライマックスはさほどでもない。プレストでティンパニの強奏が冴え、最後はきっちり八分音符ふたつと四分音符ひとつで締めくくる。

全曲をとおして、隅々まで神経が行き渡った演奏、各パートがそれぞれに充実。会場が音楽堂で満席であったら、どれほど高揚したことか。

金大のドボルザークはサマーコンサートの時よりずいぶん精度が落ちている。どうしたことか。メンバーの交替か。

合同演奏のワーグナーも雑な演奏。そういえばこの会館のこけら落としは朝比奈先生のこの曲ではなかったかな。アンコールにアッピア街道の松、これも大音量のみ。練習不足か。(2005/08/11)