オーケストラ・アンサンブル金沢高岡公演
2005/09/05 高岡市民会館
1)バッハ,J.S./管弦楽組曲第3番〜エア
2)ロッシーニ/歌劇「ブルスキーノ氏」序曲
3)ロッシーニ/歌劇「ウィリアム・テル」序曲
4)ラロ/スペイン交響曲op.21(3楽章カット版)
5)マスネ/タイスの瞑想曲
6)シューマン/交響曲第3番変ホ長調op.97「ライン」
●演奏
金聖響指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートミストレス:マヤ・イワブチ)
川久保賜紀(ヴァイオリン*4-5)
Review by 川崎(富山市在住)さん

: 「スペイン交響曲」の4楽章、アンダンテ。厚味あるスローペース、モノ悲しさのバックグランド。絡み合うヴァイオリン・ソロ、ジャスト・フィット。情緒タップリの泣き節でないが、シェイプアップ・エッセンスが効果的。ヴァイオリニストとオーケストラの思惑が一致、連合軍でエモーショナル相乗作用。深淵で濃厚な渡り合い、意地張りカッシリ性。相手を信じての自己主張、それを受け入れる許容性。集中力の高揚、素適な緊張感。イイ音楽、説得力に富み心に残るモノ。5楽章、スピードアップのネジ巻きモード。明るい色調、クセある味付け、ポイズン含み。良好な信頼関係の維持、川久保さんの顔に喜び、思い通り。してやったり会心のノリ、イキイキハツラツ縦横無尽。フラストレーションの解消、聴き手の私もモヤモヤ感霧散。

3楽章抜き、通常のカタチと追加チラシに明記。でも、指揮者交替による演奏順変更(大トリ→前半最後)のトバッチリかなと邪推(本来は3楽章も演奏する予定だった?)。4、5楽章に比べ、1、2楽章は不完全燃焼、残尿感に似た歯がゆさ、ジレッタさ。チグハグ違和感、ギクシャク・コミュニケーション。意図に反し裏目裏目のヴァイオリニスト、孤立無援、一人相撲。毒々しいジプシー啖呵も空回り、べらんめいコブシも空虚。手足バタバタ、酸欠アップアップ。オーケストラとのイメージ・ギャップ、テンションの温度差。指揮者とソリストの、陽気なラテン風音楽に対する、認識の相違から生ずるモノと片付けたくないが。

アンコールのマスネの「タイスの瞑想曲」(川久保さんはタイスのメディティエイションと紹介)、オケ版の実際は初めて。気の張らぬポピューラーソングかな、そんな軽薄な予測が見事覆される。抑えの効いた渋い甘さのヴァイオリン・ソロ、控え目な上品さ。ドライ・モード、澄み切った朗々ロマンチックとは別物。バックのオーケストラとの調和、気心ピッタリ、物分りよさの解決黒頭巾に非ず。ヴァイオリニストの大袈裟でなく僅かなでしゃばり、その差し引きが珠玉のヒラメキ、妙なる響きのニュアンス。十分に練り上げた独創性、その素適さに目を見張る。演奏家だけの工夫、アイデンティティ。真摯で孤高の完成品、侵し難い気高さを伴う、満足充実の余韻、最高の気分。

初めのロッシーニ、「ブルスキーノ氏」序曲。シャレッ気、ジョークの軽いノリ。間違えても真面目で重々しくはミスマッチ。あわてずユックリ、微笑みフェイズ。譜面台を弓で叩くのにはビックリ。

「ウィリアム・テル」序曲、実演で聴くのは2回目。今日のは、スケルトンがクッキリ。作曲家の細工、工夫が手に採る様に。目の前で展開、面白さ、楽しさイッパイ。でも懐かしいローン・レンジャーのオーバーラップはなし。指揮者に、ロッシーニではしたたかさを感じる。後半のシューマンは都合で聴けなかった、残念。(2005/09/09)