国際舞台で活躍する石川のアーティストたち
Vol.2
2005/09/11 石川県立音楽堂コンサートホール
1)モーツァルト/フルート協奏曲第1番ト長調K.313
2)モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」〜恋とはどんなものかしら
3)ロッシーニ/歌劇「セヴィリアの理髪師」〜今の歌声は
4)マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」〜ママも知るとおり
5)ビゼー/歌劇「カルメン」〜恋は野の鳥
6)メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調op.64
●演奏
小泉和裕指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサート・ミストレス:マヤ・イワブチ)
今永靖子(フルート*1),中西富美枝(メゾ・ソプラノ*2-5),水上由美(ヴァイオリン*6)
Review by 管理人hs
今日は石川県立音楽堂で行われた「国際舞台で活躍する石川のアーティストたちVol.2」という演奏会に出かけてきました。この演奏会は,毎年春に行われている北陸新人登竜門コンサートの続編のような感じのコンサートで,石川県出身のアーティストとオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)とが共演するというものです。この日は,フルートの今永靖子さん,メゾ・ソプラノの中西富美枝さん,ヴァイオリンの水上由美さんの3人の金沢出身の女性ソリストが登場しました。

今回の演奏会は,OEK定期会員全員ご招待だったのですが,それ以外にも招待券を複数枚入手できたので,それに学生券を加えて家族全員で聞きに行ってきました。どこで聞こうか迷ったのですが,2階のバルコニー席の前の方(2列目でしたが)が空いていたので,この辺に陣取ってみました。少々,ステージ上で見にくい部分はありましたが,背後に誰もいないというのは大変落ち着いて聞けるものです。また,これぐらい前の方の席でオーケストラを聞くと,自分がオーケストラの中に入っているような感じで聞くことができます。指揮者の動きとオーケストラの反応が手に取るように分かり,大変面白く聞くことができました。各ソリストの音も大変良く聞こえました。

我が家の子供が,チラシの裏に書いていた落書きです。今永さんは鮮やかなピンクのドレスを着ていらっしゃいました。
中西さんは赤〜紫系統のグラデーションのドレスを着ていらっしゃいました。
水上さんは水色のドレスを着ていらっしゃいました。
(番外)我が家の子供が「気になった」OEKの奏者です。どうもコントラバスのボガニーさんのようです。
こういう演奏者の息の音が感じられるような場所で聞くと,技術的な良し悪しよりは,どれだけ真剣勝負で演奏しているかということの方が重要に思えてきます。今回の演奏会は,そういう意味でも大変聞き応えがありました。

とはいうものの,我が家の子供の方は,音楽を聞くことよりはチラシの裏に落書きを描くことに熱中しており,演奏会の間中,演奏者の顔ばかり描いていました。演奏者の方々には失礼ではありますが,結構面白いので,以下,その絵と合わせてレビューしましょう。こういうことができるのもステージに近いバルコニー席ならではかもしれません。

最初に登場した,今永靖子さんはベルリンを中心に活躍されているフルート奏者です。ベルリン・フィルのエキソトラ奏者としても活躍されているとのことです。今永さんのフルートの音は凛としており,大変バランスの良いものでした。どの部分も生気に富んでおり,全く飽きることがありませんでした。私の座っていた座席は,フルートの筒のまさに延長線上にありましたので,本当に音が良く聞こえました。

今回,病気療養中の岩城宏之さんに代わって,小泉和裕さんが指揮者として登場しました。小泉さん指揮のOEKの演奏も大変きっちりとしたもので,今永さんのフルートの落ち着いた雰囲気ととても良く合っていました。バルコニー席からは,小泉さんのプロフィールもよく見えました。その滑らかな棒の動きが,オーケストラから流れの良い音楽を引き出しているのがよく分かりました。

続いて,ウィーンを中心に活躍されている中西富美枝さんが登場しました。中西さんは過去数回OEKと共演していますが,今回はメゾ・ソプラノのための名アリアを4曲並べたこともあり,その声の素晴らしさを堪能できました。中西さんは,スラリとした方でしたが,フォルテの音での声の迫力には素晴らしいものがありました。彼女は,ウィーン国立歌劇場の合唱団員として活躍されている方ですが,ソリストとしても十分活躍できるような実力をお持ちだと感じました。引き締まった声で,各曲を見事に歌い分けていました。

最初の「フィガロ」のケルビーノのアリアは「ズボン役」ですが,ショートカットでボーイッシュな雰囲気のある,中西さんの爽やかな雰囲気によく合っていました。OEKは全編ピツィカートで伴奏をしていましたが,近くで聞くととても味わい深く感じました。「セヴィリアの理髪師」のロジーナのアリアは,さらに変化に富んでいました。高音の力強さが大変印象的でした。「カヴァレリア・ルスティカーナ」の「ママも知るとおり」のたっぷりとしたシリアスな歌も聞き応えがありました。「カルメン」のハバネラでは,手の所作も付け,オペラの雰囲気を伝えていました。これらの曲をきっちりと歌い分けていたのは,ウィーン国立歌劇場の合唱団員として多くのオペラの舞台の踏んでいることによるのではないかと感じました。

後半は,新人登竜門コンサート等でOEKとも数回共演したことのあるヴァイオリンの水上由美さんが登場しました。水上さんのヴァイオリンは大変丁寧で,端正なものでした。第1楽章などは,音楽が流れるというよりは,音をなぞっているような硬さがあるような感じがしましたが,第2〜3楽章は,OEKと一体となった幸福感のある音楽を楽しむことができました。特に第2楽章の心優しさが印象的でした。第3楽章は独奏とヴァイオリンが揃いにくい楽章ですが,今回の演奏はとてもよく揃っていました。それだけ独奏とオーケストラとの協調性が強い演奏だったと思いました。

今回,演奏活動のキャリアの長い前半のお二人の演奏の方が貫禄を感じさせてくれる演奏でしたが,水上さんの初々しさの残る端正なヴァイオリンも魅力的なものでした。演奏会の名前のとおり,「国際的に活躍する石川県出身者」であるこの3人の方々の活躍を見守っていきたいと思います。(2005/09/11)