ピアノの詩人ショパン:心の旅
第4回結ばれし絆
2005/09/27 石川県立音楽堂交流ホール
1)ショパン/マズルカト短調op.24-1(1836年)
2)ショパン/マズルカ変イ長調op.24-4(1836年)
2)ショパン/バラード第3番変イ長調op.47(1841年)
3)ショパン/ノクターン嬰ヘ短調op.48-2(1841年)
4)ショパン/ポロネーズ第6番変イ長調op.53「英雄」(1843年)
5)ショパン/ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調op.35「葬送」(1840年)
6)(アンコール)ショパン/幻想即興曲嬰ハ短調op.66(1834年)
●出演
吉村絵里(ピアノ*1-2),梅木綾子(ピアノ*3,4),長野良子(ピアノ*5,6)
大野由加(ナビゲーター)
Review by 管理人hs
石川県立音楽堂交流ホールで6回シリーズで行われている「ピアノの詩人ショパン:心の旅」の第4回目に出かけてきました。このシリーズもすっかり定着してきました。毎回,このシリーズのステージには季節に合った照明が施されているのですが,今回はすっかり秋色となっていました。会場にはショパンに関連するパネル展示があったり,演奏だけではなく,多面的にショパンを楽しめるような工夫がされています。大野由加さんの分かりやすい解説とともにとても気持ちよくショパンの音楽を楽しむことのできるシリーズです。

今回はショパンがジョルジュ・サンドと共にノアンで幸福な生活を送っていた時期の作品を中心に選曲されていました。その中では,長野良子さんによって演奏された「葬送」ソナタがプログラムの中心でした。「幸福な生活」と書いておきながら「葬送」というのも妙ではありますが,この曲では「ショパンの故国ポーランドに対する哀悼の意」を表現しています。ジョルジュ・サンドとの生活の中で,創作意欲を取り戻したショパンの円熟期の代表作と言えます。

私自身,ソナタ第3番の方は実演で聞いたことは数回あるのですが,この「葬送」ソナタを実演で聞くのは,初めてのことでした。今回は,この曲を中心に楽しむことにしました。

長野良子さんの演奏は,初めのうちは,ミスタッチが目立ち,ちょっと心配な感じでしたが,次第に調子が出てきて,第2楽章以降は,大変聞き応えのある音楽を楽しむことができました。特に作品の核となる葬送行進曲では,行進曲の堂々たる歩みと,いつまでも浸っていたいような美しく幻想的な中間部との対比が見事でした。不可思議な音の動きが続く第4楽章については,ぼんやりとした感じの曲かなという印象を持っていたのですが,長野さんの演奏は大変鮮やかなものでした。ピアノの音自体,しっかりとした芯のある音で,第1楽章の切迫感のある雰囲気からして,意志の強さを感じさせてくれました。

アンコールでは,有名な幻想即興曲が演奏されました。大曲の後だと大変爽快に響きました

前半に登場した,吉村絵里さんと梅木綾子さんの演奏は,長野さんに比べると,演奏の雰囲気自体が若い(というか熟していない)ところがありました。演奏のインパクトも少々弱いところがありました。

吉村さんは,マズルカとバラードを演奏しました。どちらもリズムがちょっと硬い感じがしましたが,とてもまとまりの良い演奏でした。バラード第3番は,私が最初に買った「ショパン・ピアノ名曲集」のCD(アシュケナージの録音です)の第1曲目に入っていた曲ということもあり,聞いていて懐かしくなりました。そういうせつなさを感じさせてくれるような美しい演奏でした。

梅木さんは,今回登場したピアニストの中では最年少とのことでした。ピアノの音には,吉村さんよりも重みがあり,ノクターンとポロネーズには相応しいと思いました。有名な「英雄ポロネーズ」はとても丁寧にたっぷりと弾かれていましたが,ポロネーズという躍動感のある舞曲にしては,少々大人しいかな,という気がしました。実演で,数限りなく演奏されてきた有名曲だからこそ感じる点なのですが,もう少しアクの強さのある演奏の方が面白味が出るのになと思いました。

このシリーズも4回目までは全部聞いたことになります。これからいよいよショパンの晩年に向かって行きます。あと2回ですので,ここまで来たら全部制覇したいなと思っています。(2005/09/28)