モーツァルト・フェスティバルin金沢
ビバ!モーツァルト&ザルツブルク(前半)
2005/10/09 石川県立音楽堂交流ホール
1)モーツァルトの百面相
2)サウンド・オブ・ミュージック・メドレー
3)モーツァルト/モテットニ長調,K.618「アヴェ・ヴェルム・コルプス」
4)モーツァルト/ヴェスペレハ長調,K.339「聴聞僧のための夕べの祈り」
5)ヘンデル(モーツァルト編曲)/オラトリオ「メサイア」〜ハレルヤ・コーラス
●演奏
篠原陽子指揮OEKエンジェル・コーラス(1),清水史津(ピアノ*1)
大西真澄指揮もりのみやこ少年少女合唱団(2),棒田美江(ピアノ*2)
佐々木正利指揮オーケストラ・アンサンブル金沢合唱団(3-5),松井晃子(ピアノ*3-5)

Review by 管理人hs
モーツァルト・フェスティバルin金沢も最終日となりました。今回のフェスティバルでは,結局,オーケストラ・コンサート2回,室内楽の無料コンサート1回,それに加えて今回の合唱のコンサート1回の合計4回に出かけたことになります。

最終日,午前中のコンサートでは,合唱の後,OEK団員による室内楽演奏会も行なわれたのですが,休憩時間がかなり長かったのでパスし,合唱の部だけを聞くことにしました。OEK関連の合唱団を,OEK抜きで単独でまとめて聞く機会というのは考えてみれば,珍しいことかもしれません。

交流ホールは超満員でした。合唱団関係者が多かったのだと思いますが,休日の正午前の11:00からの無料の演奏会ということで家族で聞きに来ていた人も多かったようです(我が家もそうでした)。音楽堂地下の交流ホールから1階エントランスへと階段状に客席が延び,音がエントランスまで聞こえてくるという状態は,フェスティバルを盛り上げるには十分な効果があったのではないかと思います。
開演待ちの間,ずっとザルツブルクをPRするビデオが流れていました。映画「アマデウス」を思わせるような格好良い映像でした。 司会の太郎田真理さんです。今回の交流ホールでの司会を一手に引き受けられていたようです。 交流ホールは超満員でした。ガラス窓からのぞき込んでいる人も沢山いました。

今回は,OEKエンジェルコーラス,もりのみやこ少年少女合唱団,OEK合唱団の順で合唱団が登場しました。以下,「風景写真的」に撮影した,ステージ写真と併せてご紹介します。

エンジェル・コーラスは,白いシャツに蝶ネクタイという服装でした。
エンジェルコーラスによる「モーツァルトの100面相」という曲は非常に楽しい曲でした。一言でいうとモーツァルトの名曲のさわりを集めた「モーツァルト・メドレー」なのですが,二重唱,五重唱,小さい子供は休み...などいろいろな編成の曲が動作を交えて巧く組み合わせていました(「モーツァルト生誕250年」などという歌詞が入っていましたのですが,この部分は「替え歌」かもしれません)。大変良くできた編曲でした。曲の中では,ピアノ協奏曲第23番の第2楽章に歌を付けている部分が印象的でした。ずっと以前,同じような発想で薬師丸ひろ子が歌っているものがあったな,と思い出しながら聞いていました。振り付けの方では,トルコ行進曲に合せて複雑な動作をしているのが印象的でした。こういう動作は,複雑なものほど,子供たちは面白がって挑戦したがるのかもしれません。

エンジェルコーラスは,かなり幅広い年齢層ですので,振り付けを含めて練習は大変だったと思いますが,メロディが次々と沸いて出てくるような「モーツアルトらしさ」,モーツァルトの音楽の中に含まれている,いたずらっぽく無邪気な「子供っぽさ」がうまく表現されていると思いました。

この合唱団のユニフォームである緑色のジャケットで登場しました。
続く,もりのみやこ少年少女合唱団の方は,この演奏会のもう一つのテーマである「ザルツブルク」に絞った選曲でした。「ザルツブルク×子供たち」という連想で行くと当然出てくる答えは「サウンド・オブ・ミュージック」となります。このミュージカル映画のサウンド・トラック盤に含まれているような名曲がその順にメドレーで登場しました。これらの曲は,オーストリア民謡っぽく聞こえるのですが,全部,リチャード・ロジャースが作曲したものです。何度聞いてもすごいな,と思います。聞いているうちに,映像の方も見たくなってきました。ザルツブルクの風景などがスクリーンに映っているともっと面白かったかなという気もしました。

もりのみやこ少年少女合唱団を単独で聞くのは初めてでしたが,おそろいの緑色のジャケットがとても爽やかでした。歌の方は,上手な人の声だけが突出して聞こえる部分がありました。エンジェル・コーラスの方にもそういう部分がありましたので,この辺は児童合唱の場合,ある程度仕方がないところかもしれません。

OEK合唱団が登場して,一気に(?)ステージ上の年齢層が変わりました。
その後のOEK合唱団は,「さすが大人!」という演奏でした。どの曲も大変聞き応えがありました。アヴェ・ヴェルム・コルプスは何回も聞いたことのある曲ですが,この日の演奏は非常にゆっくりと演奏されており,祈りを噛み締めているようでした。

続く,ヴェスプレ「聴聞僧のための夕べの祈り」という曲は,本当に素晴らしい曲でした。モーツァルトの曲の中でも屈指の名曲なのではないかと思いました。女声合唱団員による抑制の効いた静かなソロで始まった後(本当に素晴らしい歌声で,演奏直後に拍手をして称えて上げたかったほどです。プログラムに名前が出ていても良いぐらいだと思いました),合唱団と弱音で絡み合っていく曲でしたが,こんなに美しい曲を今まで知らずにいた事が恥ずかしくなりました。是非,もう一度聞いてみたい曲です。来年2月の定期公演にOEK合唱団は登場しますが,アンコールでも良いので是非取り上げて欲しいと思います。

このコーナーの最後は,モーツァルト編曲による「メサイア〜ハレルヤ・コーラス」でした。オリジナルとどの部分が違うのかよく分からなかったのですが(歌詞は英語ではなかったようです),とてもゆっくりとニュアンス豊かに歌われていました。立体感のある歌で後半に行くにつれて壮麗さが出てきました。どの曲も宗教音楽の専門家である,佐々木正利さんの指導の成果がよく出ている演奏だったのではないかと思います。

後半はOEKメンバーによる室内楽が行なわれたようですが...丁度12:00になったことと,外の天気が良かったこともあり,音楽堂を後にしました。

この1週間は,連日音楽堂に通われた方もいらっしゃったのではないかと思います。今回のモーツァルト・フェスティバルは2年前のハイドン・フェスティバルに比べるとさらに企画が充実していました。2年後のビエンナーレには,どういう企画が出てくるのか楽しみにしたいと思います。
(2005/10/10)