ハイドン Haydn
■交響曲第83番ト短調Hob.-I 83「めんどり」

パリ交響曲」の3番目に書かれた曲です。セットの中では唯一短調で書かれています。「めんどり」というニックネームは,第1楽章の第2主題が鶏の鳴き声を思わせる軽妙さを持っていることによります。

第1楽章
まず,鮮烈なトゥティで悲劇的な雰囲気のある第1主題が演奏されます。ここに含まれている「タッタタ」というリズムはこの楽章の基本的なリズムとなっています。その後,経過的な動機が出てきます。第2主題の方は,この曲のニックネームのもとになっている「めんどりの鳴き声」風の軽妙前打音を含む軽妙なものです。この主題が反復される時には,もう1羽めんどりが加わったようにオーボエが加わるのも印象的です。この両主題は対照的な性格を持っていますので,全体として二元的な印象を雰囲気を作り出しています。

展開部は,まず,第1主題がハ短調に転調されて出てきます。第2主題が出てきた後,第1主題の冒頭動機と経過部の動機とが組みあわされて緊張感を増していきます。展開部の最後では静かなムードになった後,再現部につながって行きます。再現部では,経過的なメロディの調性が変わっているのが特徴です。ちょっとためらいがちの雰囲気になった後,最後は明るい気分で楽章が結ばれます。

第2主題
ソナタ形式で書かれています。弦楽器の弱音で歌い出される第1主題は,スタカートと滑らかな部分とがうまく結びつけられています。経過部には新しいメロディが出てきますが,突然フォルテが出てきて「びっくり」させられます。第2主題の方も弦楽器で演奏されます。

展開部は,第1主題が短調になって出てきます。その後,長調に戻り,新しいメロディが出てきた後,経過部での「フォルテ」が出てきます。その後も強弱の対比が続きます。カノン風の部分に続いて,少し縮小された形の再現部になります。最後に短いコーダがついて楽章が終わります。

第3楽章
素朴な情感にあふれたメヌエットです。ヴァイオリンとフルートの音が融けあい方が印象的です。フルートはトリオでも活躍します。ロココ的な気分のあるメロディが演奏されます。その後,最初の部分が戻ってきます。

第4楽章
12/8拍子の生き生きとした狩の音楽になっています。第1楽章では,二元的な主題が出てきましたが,最終楽章の方は同じソナタ形式でも対照的に単一主題的です。「タタタ,タタタ」というリズムが続く第1主題の後,フォルテのフレーズが出てきて経過的な部分になります。第2主題は第1主題と同じ楽想に基づくもので,終結部を兼ねています。

展開部は「タタタ,タタタ」という音型が,転調しながら,繰り返し繰り返し出てきます。その後,再現部になります。名残惜しげに休符が入った後,コーダとなって全曲が結ばれます。(2004/02/28)