ハイドン Haydn
■交響曲第85番変ホ長調Hob.-I 85「王妃」

パリ交響曲」の2番目に書かれた曲です。この曲の「王妃」というニックネームは,1788年版の楽譜に付けられていたのが始まりすが,その由来はよくわかりません。マリー・アントワネットのお気に入り曲だった,という説が有力です。その説どおり,全体に華麗で気品がある曲で,フランスで人気が出た理由もよくわかります。

第1楽章
フランス風序曲の付点リズムを持った序奏で始まります。ここで繰り返し出てくる,華麗に上昇していく音型は第1主題の結尾動機としても使われます。

主部はソナタ形式で書かれています。第1主題はヴァイオリンがスーっと伸びていく一方,ヴィオラが下降していくようなメロディです。その後,序奏に出てきた上昇音型につながります。この音型による経過部の後,意表を突くように短調に変わります(これは「告別」交響曲に出てくるメロディとそっくりです)。これが再度長調に落ち着いた後,オーボエに第2主題が出てきます。この主題は,第1主題と同じもので,やはり,低音楽器の下降音型を伴っています。その後,小結尾になって呈示部が終わります。

展開部では,第1主題の下降動機が繰り返し展開されていきます。第1主題(というか第2主題も同じなのですが)優雅に出てきた後,今度は短調になります。その後は,第1主題終結部の上昇する音型なども出てきます。再現部では経過部が短縮された後,オーボエに第2主題が出てきます。簡潔なコーダが付いて,楽章が締められます。

第2楽章
ロマンスと書かれた楽章です。フランスの古い民謡「やさしくて若いリゼット」という親しみやすい曲を主題とした変奏曲です。この主題はガボット風の素朴なもので,2部構成です。それぞれの部分が繰り返されます。

主題が弦楽器のみで演奏された後,第1〜第5変奏が演奏されます。ただし,変奏といっても主題そのものはほとんど変化せず,オブリガードが付けられるだけ,という感じです。第1変奏はフルートが加わり,後半はフォルテで力強く演奏されます。第2変奏は短調になります。第3変奏では,長調に戻り,第1変奏同様フルートのオブリガートが付きます。第4変奏には木管楽器が加わります。最後の変奏では,和音が強奏され,名残惜しげなコーダとなります。

第3楽章
メヌエット楽章です。メヌエット主題自体,素朴でおっとりとした雰囲気のあるものですが,トリオに入るとさらにおっとりとした雰囲気になります。ここではヴァイオリンとファゴットがレントラー風のメロディを演奏します。その後,木管楽器が順にソロを演奏します。

第4楽章
ロンド・ソナタ形式で書かれています。第1主題は,慌てていながらも,何となくユーモアを感じさせてくれます。その後,フォルテの経過部となります。続いてヴァイオリンに第2主題が出てきますが,この主題は第1主題から出てきたものです。他の交響曲の最終楽章同様単一主題の性格を持っています。

第2の経過部がフォルテで出てきた後,第1主題が再現されます。続いて,第1主題が展開されます。途中,シンコペーションのリズムが繰り返し出てくるのが印象的です。

両主題が再現された後,簡単なコーダとなって全曲が結ばれます。(2004/02/28)