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シェラザードと千一夜物語
2006/08/16 金沢蓄音器館
「千一夜物語」の朗読とリムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェラザード」のSP盤での鑑賞

●演奏
レオポルド・ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団(録音年不明),太郎田真理(語り)

Review by 野々市町Tenさん
岩城先生が金沢での最後の指揮となったのが「シェラザード」。お盆の夜、熱心な蓄音器館ファン約50人がつどい先生を偲ぶ企画となったのではないか。太郎田さんは音楽堂でのアナウンスやOEKとの「夏の夜の夢」での共演でおなじみである。

場内を暗転にし小さなスポット、蝋燭に灯がともる。黒っぽいドレスに白いベールをまとった太郎田さんが登場、「今宵は私とともに昔のとおい国の都バクダッドへ想いを馳せていただき」と千夜一夜物語の序を語り始める。続いて「七つの冒険とシンドバット」のお話。ここで、第1曲「海とシンドバッドの船」がかけられる。フィラデルフィアのオケがポルタメントをかけた演奏を聞かせるのが意外だ。次の話は、3人の息子が空飛ぶ絨毯、望遠鏡、命のリンゴで姫を救うお話。第2曲「カランダール王子の話」、管楽器の名手が活躍するこの楽章が一番楽しめた。続いて「アルダシル王子とヌフス姫の恋物語」姫の乳母である老婆のシーンでは、声色を使いわけ情景が目に浮かぶようだ。渾身の語り。第3曲「若い王子と王女」の有名なメロディ・音楽と語りが一体となっていく。蛇足だがこの曲を聞くと「男はつらいよ」の寅さんが草原を歩くシーンを思い出す。あれは第何作だったろうか、あの映画もお盆の定番だったものだ。次は「修行僧カランダールが語る航海と難破」、第4曲「バクダッドの祭り、海、難船 終結」と進み、「こうして千と一夜、寝物語をさせていただきました。ア・サラーム・アレイコム」と蝋燭を吹き消し幕。余韻を残し拍手。岩城先生を偲び、アラブの平和を祈る。

終演後、太郎田さんを訪ねると汗びっしょり、本人いわく「夏の夜の夢」より緊張したとのこと。やはり小さなスペースで聞き手を目の前にしての語りはさすがの太郎田さんも何カ所か噛んだとか。しかし必要かつ十分なプロの実力を存分に堪能した。いくつかの物語をアレンジした語り、さりげない演出の数々の真のコラボレーション、太郎田さんは12月9日にはモンテヴェルディの「オルフェオ」にも出演とのこと。今後、蓄音器館でもこの企画はシリーズ化していただきたい。「ペール・ギュント」なりチャイコフスキーの三大バレエなり、シェイクスピアもぜひに。「マクベス」「ロミオとジュリエット」期待が膨らむ。

当夜は開演前にアラブ風の曲がBGMとして流された。定番のドリンクサービスは「スペインのスパーリングワイン、ロゼ」と「ルーマニアのリースリング、白」。トルコの白いちじく添え。(2006/08/18)