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オーケストラ・アンサンブル金沢ジョイントコンサート:朝日親子サマースペシャル
2006/08/20 石川県立音楽堂コンサートホール
1)鈴木輝昭編曲(山上啓介作詞)/モーツァルトの百面相
2)モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K.219
3)チャイコフスキー/バレエ音楽「眠りの森の美女」〜ワルツ
4)ドヴォルザーク/交響曲第9番ホ短調op.95「新世界から」〜第2,4楽章
5)(アンコール)山本直純(榊原栄編曲)/歌えバンバン
●演奏
マーク・シール指揮オーケストラ・アンサンブル金沢;石川県ジュニアオーケストラ(3-5),OEKエンジェルコーラス(1,5),ジー・メイチェン(ヴァイオリン*2),斉藤彩(司会)

Review by 管理人hs
夏休み恒例のオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のジョイントコンサートに出かけてきました。今回はモーツァルト生誕250年と日豪交流年2006にちなんだ内容となりました。指揮者は,当初ジョン・クローさんの予定でしたが,マーク・シールさんという若い方に変更になりました。シールさんは,オーストラリアのメルボルン生まれの方で,オーストラリアでもユース・オーケストラの指導をされている方ですので,今回のジョイント・コンサートに相応しい方といえます。

登場したのは,OEK,OEKエンジェルコーラス,石川県ジュニアオーケストラの3団体でした。前半,OEK+エンジェルコーラスでモーツァルトの曲を演奏した後,後半,OEK+ジュニアオーケストラの合同演奏となりました。

最初に演奏された「モーツァルトの百面相」という合唱曲は,昨年の秋に石川県立音楽堂で行われたモーツァルト・フェスティバルの時に一度聞いたことがありますが,今回はオーケストラとの共演ということで,さらに楽しい演奏となっていました。最初,合唱団員が雑談をするようにザワザワとしゃべっている中,歌劇「フィガロの結婚」序曲が文字通り「ザワザワ」と始まります。岩城さんが以前,「当時のオペラの序曲は,会場がザワザワとした状態で聞いていたはずなので,ザワザワ言っていて下さい」と言った後,「フィガロ」の序曲を演奏したことがありますが,そのことを思い出しました。

その後,次々とモーツァルトの曲がメドレーで出てきます。ディスコのリズムに乗せて,いろいろな曲がメドレーで続く「フックト・オン...」というシリーズが数年前に流行ったことがありますが,雰囲気としては似ています。ただし,一定のリズムの上で演奏されるのではなく,テンポが変わったり,調性が変わったりしますので,かなり起伏に富んだ感じになっていました。

歌詞は非常に多く,しかもかなり早口で歌っていましたので,あまり聞き取れなかったのは残念だったのですが,モーツァルトの人生を振り返るような内容だったようです。ただし,歌詞が分からなかったとしても,途中,メランコリックな短調の部分が出てきたり,「魔笛」の「夜の女王のアリア」が出てきたり(子供の声でも苦しそうでした),トルコ行進曲に合わせて手拍子,足踏みが入ったりと非常に多彩な内容となっていました。会場で聞いていた子供たちも十分楽しんでいたのではないかと思います。


2曲目は正真正銘のモーツァルトの作品で,ジー・メイチェンさんというこちらもオーストラリア出身の若いヴァイオリニストが登場しました。演奏された曲は,先日の定期公演で内藤淳子さん独奏で聞いたばかりのモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番でした。

明るく穏やかな響きで始まった後,メイチェンさんのヴァイオリンが入って来るのですが,この部分が大変ゆっくりと演奏されていたのが特徴的でした。メイチェンさんの音は,芯のあるしっかりとした音で,音程も正確なのですが,この部分に代表されるように,どこかしっとりとした落ち着きを持っています。それが魅力となっていました。

ただし,全曲を通じて音楽の起伏はあまり大きくなく,淡白な感じでした。3楽章のトルコ風の部分なども,先日の広上さん指揮の演奏と比べるとかなり大人しく,少々物足りなさを感じました。

しかし,14歳の若さでこれだけまとまりの良い音楽を聞かせてくれるのは素晴らしいことです。会場の子供たちも感心していたのではないかと思います。

後半は,チャイコフスキーの「眠りの森の美女」のワルツとドヴォルザークの「新世界」交響曲から第2,4楽章が演奏されました。各楽器は,各プルトごとにOEKメンバーとジュニアオーケストラ・メンバーとが隣り合うような配置でした。コンサート・マスター(女の子だったのでコンサート・ミストレスですね)をはじめとした各パートのトップをジュニア・オーケストラのメンバーが演奏していたのは,素晴らしい点でした(ただし,ホルンは,OEKメンバーが主要な部分を演奏していたようです)。

合同演奏ということで,やはり全員で演奏するフォルテの部分の響きの充実感が素晴らしいと思いました。ダイナミックで,がっちりとした聞き応えがありました。「新世界」の方は,木管楽器のソロなど難所が沢山あり,ソロを演奏していた人達はかなり苦労していたようですが,それでも最後まで演奏し切ったということは自信になったのではないでしょうか。もしかしたら,ジュニアオーケストラの次回の定期公演で「新世界」を演奏するのかもしれませんが,是非,全曲に挑戦してもらいたいと思います。

アンコールでは,出演者全員で榊原栄さん編曲版の「歌えバンバン」が演奏されました。この曲は,昨年のこの演奏会でも演奏されましたが,ニューイヤーコンサートでのラデツキー行進曲のように,ジョイント・コンサートのアンコールの定番にしていっても良いかもしれません。何回聞いても盛り上がる曲です。

この日のOEKのメンバーは白いジャケットを着ていました。岩城さんが亡くなられた後,ずっと黒い洋服を着て演奏されていた印象がありますが,9月以降の新しいシーズンに向けての新しい動きを予感させてくれました。

PS.演奏会後,(演奏会の共催が朝日新聞社らしく)司会者の方が夏の甲子園の決勝戦の途中経過をお知らせしてくれました。その時は延長13回で1対1だったのですが,結局,延長15回でも決着がつかず引き分け再試合になったようですね。こういこともあるんですね。一体,どういう試合だったのか後でニュースで見てみたいと思います。(2006/08/16)



会場前の看板です。最近始まった「いしかわミュージックアカデミー」ののぼりも出ていました。