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2006 いしかわミュージックアカデミー
IMA学生オーケストラコンサート
2006/08/27 石川県立音楽堂邦楽ホール
モーツァルト/ディヴェルティメントニ長調K.136
メンデルスゾーン/弦楽のための交響曲ハ長調「スイス」
●演奏
原田幸一郎指揮いしかわミュージックアカデミー2006学生オーケストラ
Review by 管理人hs
今年のいしかわミュージックアカデミー(IMA)も最終日となりました。この日は,IMAでオーケストラスタディを受講した学生がその成果を披露するコンサートが行われました。当初は岩城宏之オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)音楽監督が指揮する予定だったのですが,6月にご逝去されましたので,IMAのミュージックディレクターである原田幸一郎さんに変更になりました。岩城さん指揮の学生オーケストラの演奏も非常に楽しみだったのですが,幻に終わってしまいました。

この学生オーケストラは,弦楽器だけからなるオーケストラなのですが,大部分がIMAのマスターコースを受講した日本,中国,韓国出身の学生ということもあり,非常にレベルの高い演奏を楽しむことができました。年齢的には中学生〜大学生が中心でしたが,中には小学生も混じっていました。

編成は第1ヴァイオリン16,第2ヴァイオリン16,ヴィオラ10,チェロ8,コントラバス2(ゲスト)ということで,弦楽オーケストラとしてはかなり重量感のある編成で,この点でも大変聞き応えがありました。弦の動かし方なども整然と揃っており,清々しい印象を残してくれました。

最初に演奏されたモーツァルトのK.136のディヴェルティメントは,OEKの演奏でもお馴染みの曲です。原田幸一郎さんは桐朋学園出身の方ですが,この曲などは,斎藤秀雄さんから厳しい指導を受けたことのある曲なのではないかと思います。第2楽章は,サイトウ・キネン・オーケストラの演奏会のアンコールでもよく演奏される曲ですが,今回のアカデミーでもきっと厳しい指導がなされたことでしょう。

OEKの場合,25名ほどで演奏されますが,この日は上述のとおり50名ほどの大編成で演奏されました。全楽章とも自信に満ちた堂々たる演奏でした。特に音がぐっと盛り上がる部分での何ともいえない高揚感が若々しさを感じさせてくれました。

続いてもう1曲メンデルスゾーンの弦楽のための交響曲第9番「スイス」が演奏されました。チェロのパートは前曲とは大幅に入れ替わっていましたが,人数はモーツァルトの時とほぼ同様でした。この曲を聞くのは初めてのことでしたが,メンデルスゾーンのその他の若書き作品の場合同様,とても良い作品でした(メンデルスゾーンの作品の完成度の高さには驚異的なものがあります)。弦楽のための交響曲ということでもう少し規模の小さい作品かと予想していたのですが,4楽章からなる立派な作品でした。

第1楽章はシリアスな気分を持った序奏から始まった後,「スイス」というタイトルに相応しい爽やかな音楽となりました。第2楽章は最初の部分はヴァイオリン4名によるアンサンブル,中間部はチェロやヴィオラの合奏という独特の構成でした。3楽章はプログラムの解説によると,「ヨーデルをイメージした楽章」ということでした。「そう言われればそうかな」という気持ちの良い楽章でした。第4楽章は生き生きした曲でした。最後の部分でテンポアップする辺りに若々しさを感じました。

編成的にはOEKが演奏しても良いような曲でしたが,メンデルスゾーンの作曲した年齢を考えると,十代の若い人達が演奏すると本当に新鮮な気分が出る曲だと思いました。

この2曲で演奏会は終わったのですが,その後,今年のIMA音楽賞の発表がありました。せっかくなのでこれも見てきました。こういう表彰式があることは知らなかったのですが,このことについては,チラシ等でお知らをした方が集客面から良かったのではないかと思います。2曲だけの演奏会だと割高感があります(私自身も実は無料の券で入場しました)。

この音楽賞は,今回のアカデミーを通じて講師の先生方から高い評価を得た受講生を表彰するものです。表彰といっても,コンクールのような厳しい採点を元に選ぶのではなく,強い印象を残した受講生を講師間で話し合って選んだとのことです。このアカデミーは10日間ほど行われるのですが,その共同生活の中から選ばれた学生ということで,コンクールよりは,全人格的な評価がされるのではないかと思います。

今回,IMA音楽賞を受賞された6人の方は海外の著名な音楽学校に奨学生として派遣されるとのことです。次の方々が選ばれました。

ヴァイオリン:ジユン・キム(Ji-Yun Kim),ユン・タン(Yun Tang),福田悠一郎
チェロ:上村文乃,ピアノ:木米真理恵,声楽:馬原裕子

この方々をはじめ,今回の受講生たちは,これからいろいろな音楽コンクールを受け,また金沢で演奏会を開くこともあるのではないかと思います。その日を楽しみにしたいと思います。(2006/08/28)