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Romanticピアノの翼コンサート:第4回ショパンとリスト
花の都パリでの出会い:”ピアノの詩人”ショパンと”ピアノの魔術師”リスト
2006/10/24 石川県立音楽堂交流ホール
1)ショパン/幻想即興曲(1835)
2)ショパン/ノクターンハ短調,op.48-1(1841)
3)リスト/3つのノクターンから第3番「愛の夢」(1845)
4)ショパン/練習曲op.25-1「エオリアンハープ」(1836)
5)ショパン/スケルツォ第3番op.39(1839)
6)ショパン/バラード第3番変イ長調,op.47(1840〜1841)
7)リスト/バラード第2番ロ短調(1853)
8)リスト/パガニーニの主題による超絶技巧大練習曲集第3番「ラ・カンパネラ」(1831〜32)
9)(アンコール)ショパン/練習曲op.10-1「革命」
●演奏
澤田加能子(ピアノ*1,2,6),徳力清香(ピアノ*3,7),入澤恵理(ピアノ*4,5),大野由加(ピアノ*8,9;ナビゲーター)
Review by 管理人hs  小人の踊りさんの感想
今年度,石川県立音楽堂交流ホールでシリーズで行われている「ピアノの翼コンサート」の第4回に出かけてきました。今回は,「花の都パリでの出会い:”ピアノの詩人”ショパンと”ピアノの魔術師”リスト」というサブタイトルどおり,ショパンとリストを比較するプログラムでした。ショパンについては,昨年度,このシリーズでずっと聞いてきたのですが,今回のように比較しながら聞くのも面白いものです。

この日のプログラムは,次のようにシンメトリカルなものでした。
  1. ショパンの作品
  2. ショパンとリストのバラードの聞き比べ
  3. ショパンの作品(2曲)
  4. ショパンとリストのバラードの聞き比べ
  5. リストの作品
幻想即興曲,愛の夢といった超有名な作品とバラードやスケルツォといったやや規模の大きな作品がバランスよく並べられており,飽きずに楽しむことができました。時折,緊張感が不足するかな?おとなしいかな?という部分もありましたが,曲の姿を知るには全く不足はありませんでした。

この中では特に印象的だったのは,徳力清香さんによって演奏されたリストのバラード第2番でした。私自身,初めて聞く作品だったのですが,リストが派手な社交界から足を洗い(?),修道院に入ってから後の作品ということで,渋さと華やかさとが共存した,ちょっと神秘的な雰囲気のある曲でした。リストの作品を聞く機会は,金沢では意外に多くないのですが,やはり実演で聞くと演奏効果があがるなぁと感じました。

ノクターンop.48-1も初めて聞く曲でしたが,葬送行進曲のような雰囲気から始まって,次第にドラマティックに盛り上がる,ノクターンらしからぬ作品でした。ショパンのバラード第3番は,個人的な思い出で,聞いているうちにノスタルジックな気分になる作品です。リストのバラード第2番同様,「水に関連するバラード(ショパンの方は,水の精オンディーヌにインパイアされて書かれた曲,リストの方も海に関する作品とのことです)」ということで,曲の並びもよく考えられていました。

最後は,ナビゲータを努めていた大野由加さん自身のピアノ独奏で,ラ・カンパネラが演奏されました。今回も大野さんの解説は,2人の作曲家にまつわるいろいろなエピソードをふんだんに交えての素晴らしい内容でしたが,さらにその後に,この難曲の演奏を平然と行っており,すごいなぁと感心しました。その後,革命のエチュードがアンコールとして演奏され,さらにさらに感心しました。

この「ピアノの翼」シリーズには,国際的に有名なピアニストが登場するわけではないのですが,この日も大勢のお客さんが聞きに来ていました。昨年度から,2ケ月に一度ぐらいのペースで,大野さんの解説による「レクチャー・コンサート」が行われているのですが,その企画の良さとトークの充実感は,金沢のお客さんには,すっかり浸透しているのではないかと思います。安心して楽しめ,かつ,ためになる演奏会ということで,次回12月の「フランス印象派とロシアンピアニズム」にも大いに期待したいと思います。

PS.この日の前半は,なぜかステージ上の照明の調子が悪く,演奏中に突然ライトが暗くなったり,明るくなったりするという,これまで経験したことのないような状況になりました。演奏者の皆さんはこの中で,よく集中して演奏されていました。特に入澤さんの演奏した練習曲「エオリアンハープ」(私はこの曲を聞たびに「おうまの親子は...」と歌いたくなるのですが)の時は,アルペジオに合せて,照明が点滅しているようで,なかなかドラマティックな雰囲気になりました。演奏会後半は問題が解決したようで,落ち着いて楽しむことができました。

PS.大野さんのお話の中では,後半の最初に”余談”として紹介された映画「愛の調べ」に登場するクララ・シューマンとリストのエピソードがとても興味深いものでした。この映画は,クララ・シューマン,リスト,ブラームスなどの作曲家が登場する作品なのですが,その中でローベルト・シューマンの「献呈」という歌曲をリストが華麗なピアノに編曲し,クララの前で演奏してみせるシーンがあるのだそうです。この曲は,シューベルトの「アヴェ・マリア」をさり気なく聞かせて締めくくられるのですが,映画の中のリスト版だと,それをカットして賑々しく終わってしまいます。それを聞いてクララががっかりする,という内容だったと思います。実際のリスト版には,ちゃんと「アヴェ・マリア」が入っているそうなので,映画的な脚色なのかもしれませんが,なかなか面白い話です。

この作品は,著作権保護期間が過ぎた作品で,現在では500円ほどでDVDを購入できるそうです。機会があれば見てみたいと思います。今年は,シューマンの没後150年ですので,そういう意味でも今年見るのに相応しい作品と言えそうですね。(2006/10/25)



Review by 小人の踊りさん
今年度,石川県立音楽堂交流ホールでシリーズで行われている「ピアノの翼コンサート」の第4回に出かけてきました。当方、この「ピアノの翼コンサート」には第1回から足を運んでいるのですが、今回はこれまでで一番の大入りだったように思います。

今回のプログラムは・・・

(導入)ショパン ワルツ第9番「告別」大野さん
    ショパン 幻想即興曲      澤田さん

(比較その1 ノクターン)
    ショパン ノクターン第13番  澤田さん
    リスト  愛の夢 第3番    徳力さん

    ショパン エチュード op.25-1
         「エオリアンハープ」 入澤さん
    ショパン スケルツォ第3番  入澤さん

(比較その2 バラード)
    ショパン バラード第3番   澤田さん
    リスト  バラード第2番   徳力さん

    リスト  ラ・カンパネラ   大野さん
    ショパン エチュード op.10-12
「革命」      大野さん

と、メジャーな曲をズラリと揃えていました。これら曲の生演奏と平易で興味深い解説を2時間で楽しめて、しかもあの料金ですから、人が集まるのも当然でしょう。管理人さんの仰るとおり、企画の勝利であります。

個人的には、ショパンのスケルツォ第3番が聴きごたえがあって良かったです。この曲とリストのバラード第2番が今回のプログラムの中では“重量級”だったのですけど、ショパンとリストの男性的側面を強く感じることができたという意味でも大満足でした。
(逆に、愛の夢とかノクターンのような女性的な曲ばかりでは滅入ってしまいます。)
残念だったのは、リストの曲が少なかったことです。う〜ん、ショパンには勝てないのか??

9月5日に開催された第3回の感想を少し。
この回は「ドイツロマンを求めて」というテーマで、シューマン、ブラームス、シューベルトの楽曲が演奏されました。
このときの目玉は、なんと言ってもバリトンの安藤常光氏によるシューベルトの歌曲。「魔王」の迫力ある実演を聴いた感動は忘れられません!!!(2006/10/26)