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第4回石川県学生オーケストラ&オーケストラ・アンサンブル金沢合同公演
2007/02/28 石川県立音楽堂コンサートホール
1)ビゼー/歌劇「カルメン」第1組曲
2)外山雄三/管弦楽のためのディヴェルティメント
3)シベリウス/交響曲第2番ニ長調,op.43
●演奏
藤岡幸夫指揮石川県学生オーケストラ(1,3);オーケストラ・アンサンブル金沢(2,3))
Review by 管理人hs  

この日は,石川県内の大学オーケストラの選抜メンバーとオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の合同コンサートに出かけてきました。OEKはつい最近,雅楽・声明との共演を行ったばかりですが,本当にいろいろな団体と共演を行っています。

この合同演奏会も今年で4回目になりますが,若い人たちを中心とした大編成で大交響曲を演奏するのを見るのは良いものです。特に今回メインで演奏されたシベリウスの交響曲第2番は,最終楽章で丁度冬から春に移り変わるような感じで大きく盛り上がりますので,季節の雰囲気にもぴったりでした。文字通り青春の音楽を聞かせてくれました。

今回の学生オーケストラは,金沢大学フィルハーモニー管弦楽団,金沢工業大学室内管弦楽団,北陸大学室内管弦楽団という3団体の選抜メンバーでしたが(その他の大学の方も一部含まれていたようですが),大半は金沢大学フィルハーモニー管弦楽団のメンバーでした。OEKと合わせると,100名を超える大人数ということで,練習のスケジュール調整だけでも大変だったのではないかと思います。

前半は,学生オーケストラとOEKがそれぞれ単独で演奏をしました。最初に学生オーケストラのみでビゼーの「カルメン」第1組曲が演奏されたのですが,この曲順がちょっと変わっていました。「カルメン」といえば,有名な前奏曲から始まるのが普通ですが,今回は,「カルメン」の中の”運命のテーマ”とも言うべき,第1幕の直前に演奏される不吉な音楽から始まりました。これには,ちょっと意表を突かれました。その後は,通常の組曲どおり演奏されましたが,今回のようにいちばん華やかな前奏曲で締めるというのも良いアイデアかもしれません。

藤岡幸夫さん指揮の学生オーケストラの演奏は,とても密度の高い音で充実した音楽を聞かせてくれました。フルート独奏の入る第3幕への間奏曲をはじめ,管楽器も大変しっかりとした音を聞かせてくれました。ただし,全般に慎重で,ちょっと腰が重いかなという気もしました。前奏曲などはもう少し荒れ狂っても良いかなと思いました。

続いて,OEKの演奏で,外山雄三作曲ディヴェルティメントが演奏されました。この曲は,岩城さん指揮OEKで何度も何度も演奏されてきた曲で,OEKの十八番と言っても良い曲です。打楽器も2名入りますので,OEKのフルメンバーで演奏できる曲です。同じ外山雄三さん作曲による有名な「ラプソディ」と似た構成で,大変親しみやすい作品となっています。

OEKの演奏は,手慣れたもので,第1楽章冒頭の堂々たるホルンの響き,第1楽章と第2楽章の最後に出てくる,岡本さんのフルートによるピーッという音をはじめ,貫禄を感じさせてくれる演奏でした。ただし,岩城さんが指揮した演奏に比べると泥臭さが足りないかなという印象を持ちました。特に第3楽章は,CD録音になっているものと比べるとどこかスマート過ぎるかなと思いました。

後半のシベリウスは,合同演奏ということで,コンサートホールのステージが満員になりました。弦楽器の人数も大変多かったのですが,今回は特に管楽器の人数が多く,4〜5管編成という感じでした。ステージの後ろ半分は”ほとんど吹奏楽団”で,まさに壮観でした。

私自身,この曲を音楽堂で聞くのは初めてなのですが,冒頭の音から大編成のメリットを生かした,たっぷりとした響きを楽しむことができました。特に弦楽器の深い響きが印象的でした。管楽器には,OEKのメンバーも加わっていましたが,こちらはアシスタント的な役割に徹しており,フォルテになる部分だけに参加していた感じでした。

第1楽章は,このようにたっぷりとした演奏でしたが,第2楽章はさらに重みがありました。この辺は,「カルメン」の時同様,ちょっと慎重過ぎるかなという気もしました。反対に第3楽章は,非常に生き生きとした演奏で,学生たちは,藤岡さんの妥協のない速いテンポ設定によく頑張って付いていっていました。

第4楽章は雲が晴れたように爽快な音楽になります。上述のとおり,若い奏者たちが力を合わせて演奏するのに最適の曲だと思いました。特に最後列の金管楽器群の突き抜けるような響きがシベリウスのこの作品のムードにぴったりでした。クライマックスでどんどん大きく盛り上がる音を聞きながら,若い人たちの潜在能力の高さのようなものを感じました。

藤岡幸夫さんの指揮ぶりも大変若々しく,学生の演奏とともに,とてもすがすがしい気分を味わうことのできた演奏会でした。

PS.2月は,フィンランド放送交響楽団による「タピオラ」から始まり,この日の交響曲第2番で終わりました。そういえば,今年はシベリウスの没後50年のメモリアル・イヤーだったんだな,ということを思い出しました

PS2.この日は,金沢大学金管八重奏団によるプレ・コンサートもありました。(2007/03/02)