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井上道義&オーケストラ・アンサンブル金沢 金沢21世紀美術館シリーズ
第2回 Sunday Picnic with Wind
2007/05/27 金沢21世紀美術館 
14:00- レクチャーホール裏休憩スペース
1)リゲティ/6つのバガテルから
2)ベリオ/作品番号獣盤から2曲
3)アーノルド/3つのシャンティーズから

15:00- 金沢市役所側休憩スペース
演奏曲目不明

16:00- 本多通り口側野外広場
1)アゲイ/イージー・ダンスから2曲
2)リゲティ/6つのバガテルから2曲
3)ベリオ/作品番号獣盤から3曲
●演奏
岡本えり子(フルート),加納律子(オーボエ),木藤みき(クラリネット),渡邉聖子(ファゴット),金星眞(ホルン)
Review by 管理人hs  
↑今回のリーフレット

↑金沢21世紀美術館の平面図です。「まるびぃ」という愛称はこの形から付けられています

4月末から"music@art"として新たにはじまった「井上道義&オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)金沢21世紀美術館シリーズ」の第2回公演に出かけてきました。今回は,"Sunday Picnic with Wind"というサブタイトルどおり,日曜の午後に管楽アンサンブルをピクニック気分で楽しもうという趣向でした。ただし,シリーズ名として井上さんのお名前は出ていたもののご本人は出演されていませんでした。シリーズの監修といった位置づけになるのだと思います。

今回は,コンサートといっても椅子がおいてあるわけではなく,3回行われた各公演の長さも15分から20分ほどの長さでしたので,じっくり楽しむというよりは,通りかかったついでに立ち止まって聞くという感じの内容となっていました。もちろん入場無料です。最初の2回は館内で行われたのですが,16:00から行われた第3回目の公演は,野外で行うということで,OEKのメンバーにとっても冒険的な試みになりました。

演奏された曲は,ベリオ,リゲティといった20世紀の作曲家の曲ばかりでしたが,この美術館の中で聞くと全く違和感なく響くのが面白いところです。館内の休憩スペースで行われた公演では,各楽器の音が大変音がくっきりと聞こえ,迫力を感じました。私自身,演奏を聴きながらどのように音が響くのか館内をあちこち歩き回ってみたのですが,遠くから音が漏れ聞こえてくるというのも良いものでした。この演奏会が行われることを知らなかった人は「どこからか音が聞こえるな」と不思議な気分になったと思います。

今回のチラシには,14:00からと16:00からの2回の公演予定が書いてありましたが,実際には15:00からも公演が行われました。私は,15:00の公演はパスし,その間久しぶりに柿木畠・香林坊方面に買い物に出かけ,帰る途中に再度美術館に戻り,16:00からの公演を聞きました。この美術館は無料ゾーンが多く,公園のような雰囲気がありますので,このように気軽に出たり入ったりすることができます。非常に斬新な雰囲気がありながら,近隣の街との一体感があるというのがこの美術館の魅力の一つだと思います。

16:00からの公演は野外での演奏でした。私自身,OEKメンバーの演奏を野外で聞くのは初めてのことで,大変新鮮でした。ただし,管楽器による演奏だったとはいえ,さすがに5人だけの室内楽編成だとちょっと音量が不足する感じでした。ベリオの作品番号獣番には,奏者による語りも入るのですが,野外だとかなり聞きづらいところもありました。外で演奏するとなると,選曲にはもう一工夫必要が必要だったかもしれません。それとやはり”日差し対策”が問題となります。この日は芝生の上に座って聞くにはちょうど気候でしたが,お客さんの方にもひさしやパラソルのようなものが欲しいかなと思いました。

とはいえ,芝生の上でOEKの演奏を聴くというのは得がたい経験でした。金沢21世紀美術館は,交通量の多い,本多通りに面している割にはそれほど騒音もありませんでしたので,是非また野外での演奏に挑戦してもらいたいと思います。

それにしてもこの美術館は,絵になる美術館です。自由な気分の演奏会に相応しい雰囲気を持った場所だと改めて思いました。美術にしても音楽にしても,ここに来たアーティストの多くはその創造力を掻き立てられるのではないかと思います。以下,近隣の街の写真とともに,”絵になる美術館”の雰囲気を紹介しましょう。

市内の小中学生が美術館の周りに朝顔を植えるイベントを行っていました。西日対策にも丁度良いかもしれません。 演奏会の案内板です。 3回目の公演の様子です。です。
21世紀美術館の目玉の一つのレアンドロのプールです。 演奏前に金星さんが,曲名の書かれたプレートを持ってお客さんに見せて回っていました。 3回目の公演の様子です。背後にあるのはレストランです。
この写真ではよく分かりませんが,水の中に人が入っているように見えます。 芝生の上では,優雅にワインを飲んでいる方がいました。イギリスのグラインドボーン音楽祭のような雰囲気です。

3回目の公演の前の様子です。
21世紀美術館の平面図を手書きで書いてみました。水色の有料ゾーンのまわりが全部無料というのが大変ユニークです。ガラス張りで中が見えると,何となく入ってみたくなるものです。
 

レストランではたまたま結婚式(の披露宴?)をやっていました。以前にも見かけたことがありますので,結構よく行われているようです。

第1回公演の様子をガラスの外から眺めてみました。

散歩から戻ってきたら,丁度第2回公演が終わったところでした。


第1回公演の様子です。偶然通りかかった人もかないらっしゃったようです。

こちらも第1回公演の様子です。やはりこの丸みを帯びたガラスというのが非常に良い雰囲気を出してます。

演奏中は曲目を示すプレートが譜面台に置かれていました。ベリオ:作品番号獣番 ねことねこ と書かれています。


建物の周りの芝生の中にあるラッパ型のオブジェです。別のところにある同様のラッパと会話ができます。


この広々とした雰囲気も最高です。この日は穏やかな天気で大変気持ちの良い日でした。

右側が本多通りです。道路から一段低いところに美術館はあります。

この日行われていたグレイソン・ペリー展の看板です。


市役所側のベンチです。ただのベンチなのですが,どこも絵になります。

第2回公演が行われたあたりです。面白い形のベンチが置かれています。

丸い美術館を朝顔で覆い尽くすという壮大なプロジェクなのですが,この幾何学的な模様も何ともアーティスティックです。


美術館の片隅に何故か茶室があります。これもまた金沢らしいところです。

美術館の目玉の一つのタレルの部屋です。しばらくこの部屋でぼーっとしていたのですが,入ってくる人たちの反応を見ているだけで楽しめました。「わっ涼しい」「上,開いとるんかいね(ちょっと心配)」記念撮影する人...いろいろでした。


タレルの部屋の下の方です。この部屋でも一度,OEKの室内楽公演をやってほしいですね。有料の公演でも聴いてみたいと思います。

市役所口の方では,まるびぃアイスというのを売っていました。
この日は暑かったこともあり,アイスクリームの売れ行きは好調だったようです。 私も買ってきました。21という焼印のある,アイスモナカという感じでした。このアイスクリームは金沢港付近の大野の醤油を使った醤油アイスクリームです。何故かキャラメル味になるのが不思議なところです。

ちなみにこのアイスの下にある本は,最近発売されたばかりの蓑豊(前館長)著「超・美術館革命:金沢21世紀美術館の挑戦」(角川oneテーマ21)という本です。入場料代わりに柿木畠のうつのみや書店で購入したものです。OEKや音楽堂の運営にも参考になる本だと思います。

(2007/05/29)

柿木畠写真集
この日は,演奏が3回行われ,私はそのうちの1回目と3回目を聞きました。その間,美術館の外に出て,久しぶりに柿木畠付近を歩いてみました。

柿木畠というのは,21世紀美術館から香林坊に向かう辺りの商業地区です。私は,この辺りの雰囲気が好きなので,写真を交えて風景をご紹介しましょう。

↑金沢の街中には用水が沢山流れています。これが街に潤いを与えてくれています。


↑美術館のオープン後,柿木畠は美術館と一体化した街づくりを行っています。


↑しばらく歩くとうつのみや書店のビル(右手)が見えてきます。ここで安い本を1冊買いました。


↑この付近は広場のようになっており(”広見”と呼ばれています),自動車社会になるまでは,コミュニティの中心でした。


↑用水をさらにたどっていくと...


↑香林坊109が見えてきました。その後,私は片町のTower Recordsで買い物をしました。


↑柿木畠にある「もっきりや」というジャズ喫茶です。この店内でOEKメンバーによる演奏というのがあれば,是非聞きに行きたいと思います。


↑少し足を伸ばすと石川県知事公舎があります。


↑その向かいにOEKの以前の練習場が残っています。元プラネタリウムだった建物です。


↑その後,21世紀美術館に戻りました。左の建物が金沢市役所です。