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ふだん着ティータイムコンサートVol.10
2007/06/24 金沢市民芸術村
■オープン・スペース
14:00〜 子供のためのコンサート

14:00〜 子供のためのコンサート
シュトラウス,J./ポルカ「狩」
オーケストラで動物の鳴き声や様子を聴いてみよう
アンダーソン/踊る子猫
ベートーヴェン/交響曲第6番ヘ長調op.68「田園」〜第2楽章の一部
リムスキー=コルサコフ/熊蜂の飛行
1分間指揮者コーナー
夏の思い出
上を向いて歩こう
●演奏
オーケストラ・アンサンブル金沢のメンバー(松井直(コンサート・マスター)),柳浦慎史(司会)

■ミュージック工房
【第1部 15:00〜】
1)メンデルスゾーン/弦楽四重奏曲op.44-2〜第1楽章
2)ブラームス/ピアノ三重奏曲op.8〜第1楽章
3)湯山昭/鬼あられ(木管四重奏版)
4)アーノルド/ディヴェルティメントから
5)千の風になって(木管三重奏版)
6)シュトラウス,R./ヴァイオリン・ソナタop.18〜第3楽章
●演奏
上島淳子(ヴァイオリン*1,2),原三千代(ヴァイオリン*1),古宮山由里(ヴィオラ*1),早川寛(チェロ*1),大澤明(チェロ*2),入澤恵理(ピアノ*2),岡本えり子(フルート*3,4),加納律子(オーボエ*3-5),渡邊聖子(ファゴット*3,5),木藤みき(クラリネット*3-5),山野祐子(ヴァイオリン*6),鶴見彩(ピアノ*6)

【第2部16:00〜】
1)パスクリ/「シチリア島の夕べの祈り」によるグラン・コンチェルト
2)ベートーヴェン/弦楽四重奏曲op.18-4〜第1楽章
3)ミヨー/ソナチネ〜第2,3楽章
4)シュトラウス,R.(ハーゼルエール編曲)/もう一人のティル・オイレンシュピーゲル
●演奏
加納律子(オーボエ*1),鶴見彩(ピアノ*1),竹中のりこ(ヴァイオリン*2),大隈容子(ヴァイオリン*2),石黒靖典(ヴィオラ*2),大澤明(チェロ*2),トロイ・グーキンズ(ヴァイオリン*3),古宮山由里(ヴィオラ*3),遠藤文江(クラリネット*4),渡邊聖子(ファゴット*4),山田篤(ホルン*4),坂本久仁雄(ヴァイオリン*4),今野淳(コントラバス*4)

【第3部17:00〜】※以下は未聴です。曲目が変更されている可能性もあります。
1)ヒンデミット/ヴィオラとチェロのための二重奏曲(1934)
2)テレマン/12の幻想曲〜第1曲ロ長調
3)サン=サーンス/白鳥
4)ショスタコーヴィチ/スケルツォ
5)ハイドン/ディヴェルティメント第1番
6)プロコフィエフ/五重奏曲
●演奏
古宮山由里(ヴィオラ*1,4),大澤明(チェロ*1,3,4),山野祐子(ヴァイオリン*2),入澤恵理(ピアノ*3,4),ヴォーン・ヒューズ(ヴァイオリン*5),早川寛(チェロ*5),加納律子(オーボエ*6),遠藤文江(クラリネット*6),坂本久仁雄(ヴァイオリン*6),
石黒靖典(ヴィオラ*6),今野淳(コントラバス*6)
Review by 管理人hs
演奏会のポスター

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)団員が行っている室内楽コンサート「ふだん着ティータイムコンサート」も今回で10回目となりました。金沢の方は梅雨に入ったばかりで,この日も,あいにくの雨となりましたが,例年どおり沢山のお客さんが金沢市民芸術村に来ていました。私の方は,この1週間,連日のように演奏会に足を運び,少々疲れ気味でしたので,今年は途中までしか聞いてこなかったのですが,例年通りの楽しいイベントとなりました。

演奏会の構成は,子供のためのコンサート+(室内楽コンサート×3)というもので,休憩時間を入れて約4時間というものです。昨年よりは,少し全体の時間は短くなったようですが,それでも演奏された皆さん,お世話をされた皆さんはお疲れだったと思います。

ただし,今回で10回目ともなると,全体の雰囲気は,とてもリラックスした感じで,OEKの皆さんのトークや進行も余裕たっぷりでした。

演奏会は,まず最初に「子供のためのコンサート」が行われました。ピストルの音で始まる,シュトラウスのポルカ「狩」で開演した後,例年通り,ファゴットの柳浦さんの司会の下,オーケストラを初めて聞くような方にも楽しめるようなプログラムが続きました。「1分間指揮者コーナー」「みんなで歌おう」といった”聴衆参加型企画”がいつもどおり和やかに行われたのに加え(今回は,ハンス・クナッパーツブッシュ(?)のような巨匠指揮者が続出しました。「チョー難しい」といった子供たちのリアクションも率直で楽しませてくれました。),「オーケストラで動物の鳴き声や様子を聴いてみよう」というコーナーがあったのが目新しい点でした。こういうコンサートでは,楽器紹介コーナーが定番ですが,”動物の声”という制限を入れることで,より楽しいものになっていました。

アンダーソンの「踊る子猫」では,ヴァイオリンによる猫だけではなく,団員の声による犬まで加わっていました。木管楽器の紹介コーナーでは,ベートーヴェンの「田園」の第2楽章を使っていたのも面白い試みでした。

その後,ミュージック工房に場所を移し,室内楽の演奏が行われましたが,今回は,ピアノが加わっていた点が大きな特徴でした。ピアノが加わることで,これまでこの演奏会で取り上げてこなかったようなレパートリーを聞くことができます。各独奏楽器のソナタ,ピアノ三重奏なども聞くことができるとなると,さらに聞き応えのある内容なるのではないかと思います。

室内楽公演の第1部では,メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲に続いて,ブラームスのピアノ三重奏曲が演奏されました。どちらも初めて聞く曲でしたが,とてもセンスの良い曲だと思いました。その後,この演奏会では,すっかりおなじみになりつつある,女性管楽器奏者4人(ビューティー・フォー!)によるリラックスして聞ける曲が演奏されました。第1部の最後は,先日,石川県立音楽堂交流ホールで行われた「もっとカンタービレ」でも演奏されたR.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタの第3楽章が,その時と同じコンビで演奏されました。山野さんのヴァイオリン,鶴見さんのピアノともども,これだけ近くで聞くと大変迫力がありました。曲全体にヒロイックな気分に満ちており,さすが「英雄の生涯」の作者の曲だと実感させてくれました。

第2部は,加納さんのオーボエで始まりました。パスクリというオーボエ界のパガニーニのような人による超絶技巧の作品を見事に演奏され,気分が一気に盛り上がりました。続いて,ベートーヴェンの弦楽四重奏曲op.18-4という短調の作品の第1楽章が演奏されました。7月からは,今回の演奏者4人中の3人+コンサート・マスターの松井さんによるベートーヴェンの弦楽四重奏全曲シリーズが金沢市アートホールで始まるのですが,それに期待を抱かせてくれるような演奏でした。ヴァイオリンのトロイさんとヴィオラの古宮山さんの二重奏によるミヨーの珍しい曲が演奏された後,第2部の最後にR.シュトラウスの「もう一人のティル・オイレンシュピーゲル」という曲が演奏されました。この曲は,通常は大管弦楽で演奏される「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」を5人編成で演奏しようという曲です。編成を小さくするだけでなく,曲の長さの方も短くなっていたのが面白いところでした。

演奏会は,その後,あと1時間ほど続いたのですが,上述のとおり少々疲れ気味だったこともあり,今回はここまでで退出しました。

OEKは,今年から音楽堂の交流ホールでの「もっとカンタービレ」という室内楽公演シリーズや金沢21世紀美術館での室内楽公演シリーズを始めましたので,金沢市内では,ますます室内楽を聞く機会が増えてきた感じです。どれも安価または無料というのが嬉しい点です。

室内楽公演のいちばんの良い点は,個々のOEKメンバーに対する親近感を増すことができる点です。これらの室内楽公演の後,フル編成のOEKを聞くというのは,OEKのコアなファンを増やしていくにはとても効果的なのではないかかと思います。というわけで,これからもOEKの室内楽公演には注目して行きたいと思います。(2006/06/26)

演奏会写真集
この日は雨でしたので,外に出ている人はいません。

OEK団員からのごあいさつの文章。
例年どおり,OEK団員や楽友会の方が飲み物をサービスされていました。
柳浦さんの司会で子供のためのコンサートが始まりました。
恒例のヴァイオリンとヴィオラの大きさ比べ
別の角度から撮影しました。大変立派な梁のある建物です。
ミュージック工房の様子です。
雨の中の芸術村です。