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井上道義&オーケストラ・アンサンブル金沢 金沢21世紀美術館シリーズ
第3回 インタースペース Interspace
2007/07/01 金沢21世紀美術館 
14:00-/14:30-/15:00- 展示室14  ※15:00-の分のみに参加。
一柳慧/インタースペース〜第3楽章ら

16:00- 本多通り側無料ゾーン
ショスタコーヴィチ/弦楽四重奏曲第3番〜第3楽章
ラヴェル/弦楽四重奏曲〜第1楽章
バルトーク/弦楽四重奏曲第4番〜第4,5楽章
ラヴェル/弦楽四重奏曲〜第2楽章
●演奏
坂本久仁雄,藤原朋代(ヴァイオリン),古宮山由里(ヴィオラ),ルドヴィート・カンタ(チェロ)
Review by 管理人hs  
↑コンサートと展覧会のリーフレットです。

↑無料スペースでのコンサートが終わった後の光景です。

このように四角い形に並んでいました。

このガラス張りの部屋が控え室になっていたようです。

金沢21世紀美術館で,"music@art"と題して毎月行われている,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の室内楽シリーズの第3回目に出かけてきました。今回は第1回同様,弦楽四重奏による演奏で,展示室内で3回,無料ゾーンで1回の演奏が行われました。各回もそれほど,長い時間ではなく,お客さんも立って聞いている人がほとんどでした。音に釣られて立ち止まっていたというお客さんもかなりいたのではないかと思います。

今回は”インタースペース”というタイトルどおり,一柳慧さんの同名の弦楽四重奏曲の演奏がメインでした。14:00〜,14:30〜,15:00〜の3回,ゲルハルト・リヒターというドイツのアーティストの作品の展示されている展示室14の中でこの曲の一部が演奏されたのですが,この美術館の持つ”落ち着いた明るさ”にぴったりでした。それほど前衛的な感じはせず,ゆったりとした時間と空間を同時に感じさせてくれるような作品でした。

私は,15:00からの回に参加したのですが,真っ白の部屋の中にグレイのアクリルの板だけが飾ってある展示室の雰囲気は,非常におしゃれでした。このセッティングのまま,ミュージック・ビデオを作れば,さらに新しい芸術作品が生まれるのではないかと思いました。この回は作曲者の一柳さんもこの部屋の中で聞かれていましたが,コンポーザー・イン・レジデンスつながりで,是非,OEKと21世紀美術館とが一体となって”インタースペース映像版”というのに挑戦してほしいと思いました。

今回の弦楽四重奏のメンバーは,OEKの坂本さん,古宮山さん,カンタさんと数年前新人登竜門コンサートに出演された藤原朋代さんの4名でしたが,皆さん美術館の壁の色とマッチした,白っぽいシンプルでカジュアルな服装でしたので,そのままユニクロとかのCMにも使えそうな感じでした(余談ですが,藤原さんと古宮山さんは,まるで姉妹のように見えました。どことなく顔立ちが似ていらっしゃいると思います)。

その後,「コレクション展I」と「我が文明:グレイソン・ベリー展」と「うめめ:ここは石川県の部屋:梅佳代写真展(無料)」を見て,ミュージアムショップを眺めた後,16:00から無料ゾーンで行われた演奏の方を聞いてきました。前回の管楽合奏の時と同じ場所でしたが,非常に間近で演奏されますので,BGMという感じではなく,聞く方も集中できます。

演奏されたのは,ショスタコーヴィチ,バルトーク,ラヴェルといった20世紀の弦楽四重奏曲のハイライト集という感じでした。強烈な曲(ショスタコーヴィチとバルトーク)と叙情的な曲(ラヴェル)が交互に並べられており,30分ほどの時間ながら,聞き応えが残りました。

ラヴェルの曲は,文字通り「NHK日曜美術館」といった感じの上品なムードの作品じですが,バルトークやショスタコーヴィチの曲は対照的に非常に先鋭的な感じです。こうやって聞くと20世紀の弦楽四重奏曲というのは,大変幅広く,ジャズとロックといったジャンルとかなり近いものも多いのではないかという気がしました。バルトークでは,バッチン!という感じのバルトーク・ピツィカートも間近で見ることができまいたが,この音などは日本の琵琶なの音に近いと思います。

というわけで,21世紀美術館でOEKメンバーが西洋音楽以外を演奏するというのもありかな,と思いました。この美術館には,迷宮のようにまだまだ沢山の展示室がありますので,次はどの部屋で行われるか楽しみにしたいと思います。

このシリーズをきっかけに,私は,21世紀美術館の友の会にも入ったのですが,会員になれば,今回演奏の行われた有料ゾーンには自由に出入りできます。徐々にOEKと21世紀美術館の双方に相乗効果が出てきているのではないかと思います。演奏の合間には,この美術館の中でのんびりと過ごしたり,ちょっと香林坊の方まで足を伸ばしたりもできるので,休日の午後をゆっくり過ごすにはぴったりのイベントだと思います。
美術館の周りの朝顔も少し成長していまし(実は,この中に子供が植えたものも含まれています)。
レアンドロのプールは相変わらず大賑わいでした。 屋外では,いきいきプロジェクトin金沢関係の制作が行われているようでした。
演奏会のイメージ図です。

ゲルハルト・リヒターの「8枚のグレイ」の展示された部屋の中で行われました。

友の会の会費の掲示です。少し安くなったようです。
詳細はコチラ

(2007/07/02)

展覧会関連写真集

21世紀美術館では,いつも並行して展覧会が行われています。この3つ以外にも”貸館”の展覧会も行っていました。


現在のメインの展示が,所蔵コレクションの中からの展示である「コレクション展I」と「グレイソン・ペリー展」でした。この両者のポスターです。


展覧会名がガラスの上に書かれるのがこの美術館の特徴です。


無料スペースでも展示が行われていました。右側のミュージアム・ショップの向かい側で石川県出身の写真家の梅佳代さんの展覧会を行っていました。


最初の写真集「うめめ」で注目を集めている若手写真家です。この方にOEKの日常の写真でも撮ってもらうと面白いかもしれません。


もうひとつ無料スペースでは,いきいきプロジェクトin金沢という展示も行っていました。こちらの方は都市計画や建築の側面の強いものでしたが,黒板を使った展示がなかなか新鮮でした。