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井上道義&オーケストラ・アンサンブル金沢 金沢21世紀美術館シリーズ music@rt 第5回 Baltic Passion
2007/11/18 金沢21世紀美術館レクチャーホール横
14:00-/15:00-/16:00-  ※14:00-のみに参加。別の回では,演奏曲目・曲順が違っていたようです。
グリーグ/弦楽四重奏曲ト短調〜第3楽章
ヴァスクス/弦楽四重奏曲第2番「夏の歌」から
グラス/弦楽四重奏曲第2番:サミュエル・ベケットの「伴侶」による
グリーグ/セレナーデ
ピアソラ/リベルタンゴ
●演奏
ラサ・ヴォジリウーテ,ヴォーン・ヒューズ(ヴァイオリン),ダニイル・グリシン(ヴィオラ),マルタ・スドラバ(チェロ)

Review by 管理人hs  
チラシやプログラムの文字もワインレッドでした。

この辺りの無料スペースでコンサートが行われました。

今回はこのようなテーブル類が出ていました。

ボジョレー・ヌーボーを一杯500円で販売していました。

演奏直前の様子です。最初はワインを飲んでいるお客さんの方を向いて演奏していましが,最後の2曲だけ向きを変更して,こちらの方を向いて演奏してくれました。


金沢21世紀美術館で定期的に行われている「井上道義オーケストラ・アンサンンブル金沢(OEK)金沢21世紀美術館シリーズmusic@rt」の第5回が行われたので出かけてきました。今回の公演には”Baltic Passion"というサブタイトルが付けられていましたが,その名のとおり,クレメラータ・バルティカのメンバー3人+OEKメンバー1人という編成でした。”OEK金沢21世紀美術館シリーズ”という名前からすると,ずれてくる感じですが,このところクレメラータ・バルティカのメンバーは,ほとんど毎回のようにOEKの演奏に参加していますので,間違いというわけでもありません。今回のような企画も面白いと思いました。

演奏は,美術館の有料ゾーンではなく,入口付近の無料ゾーンで行われました。14:00,15:00,16:00の3回行われたのですが,私はそのうちの最初の回に参加しました。今回の公演のもう一つの目玉はワインだったのですが,この一体にテーブルが幾つか置かれ,ボジョレー・ヌーボーを飲みながら音楽も楽しめるようになっていました(1杯500円でした)。私は車で来ていたので残念ながら飲めませんでしたが,日曜日の午後,美術館で赤ワインを飲みながら,北欧の音楽を楽しむというのは,なかなか贅沢なことです。

演奏された曲は,サブタイトルどおり,バルト海沿岸の作曲家と北欧のグリーグ(今年は没後100年ということでよく演奏されますね)の曲が中心に演奏されました。その他,アメリカのフィリップ・グラスの音楽も演奏されましたが,似た雰囲気の曲でしたので,全く違和感はなく,ちょっとひんやりとした感触を持った音楽を30分ほど楽しむことができました。

最初に演奏されたグリーグの弦楽四重奏曲ですが,曲の内容よりも,演奏の迫力に圧倒されました。今回は本当に間近で聞いたのですが,何と言うか,弦楽四重奏というのは,音が組み合わさって立体的な彫刻を作るようなものだな,と感じました。それだけ迫力のある演奏でした。

続くヴァスクスの作品は,作曲者の名前自体を聞くのが初めてでしたが,非常に楽しめました。ヴァスクスは1946年ラトヴィア生まれの作曲家で, エストニア出身のペルトより少し後の世代の作曲家です。この21世紀美術館のシリーズでは,ペルトの「フラトレス」を聞いたことがありますが”聞きやすい現代音楽”という点で共通する雰囲気がありました。

曲の最初では,ノイズなのか音楽か分からないような軋みのある音が続いた後,次第に音が盛り上がり,いわゆるクラシック音楽風になっていきます。そして,最後の方は,バーバーのアダージョを思わせるような荘厳が雰囲気になります。美術館で聞くにはぴったりの作品です。

続くグラスの作品も似たタイプの作品でしたが,こちらは「ミニマル音楽」ということで,同じような音型がひたすら続きます。その中から独特の心地よさが出てきます。グラスについては,ヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」という小説を基に作られた「めぐりあう時間たち(The Hours)」という映画の音楽担当として知っているのですが,この作品のタイトルどおり,時の動きを感じさせるような曲でした。いくつかの部分(楽章?)から成っていましたが,そのたびに時間の進み方が変わるような感じで,退屈しない作品でした。

最後は,アンコールのような感じで,グリーグのセレナーデという気持ちの良い作品とお馴染みのピアソラのリベルタンゴが演奏されました。リベルタンゴについては,ちょっと系統が違う曲という気もしましたが,マルタ・スドラバさんのチェロの燐とした感じが大変印象的でした。

このシリーズも5回目ですが,音楽と美術を組み合わせたオリジナルCDとかDVDのような企画も考えられると思います。これまで聞いてきた作品では,ペルトのフラトレス,一柳慧さんのインタースペース,そして今回のグラス,ヴァスクスといった曲が特に21世紀美術館の雰囲気に合っていたと思います。

というわけで,今回のOEK×21世紀美術館コラボレーション・シリーズを形として残すような企画にも期待したいと思います。
(2007/11/18)









展覧会関連写真集


秋の21世紀美術館。夏の間,美術館を覆っていた朝顔も取り払われていました。


コレクション展をやっていましたが,それ以外の展示室は,丁度展示入れ替え中でした。


レアンドロのプールは相変わらず賑わっていましたが,この日は気温が低かったのでかなり寒そうに見えます。


無料ゾーンの展示です。白い紐が沢山ぶら下がっているだけの部屋です。一種の迷路のような展示でした。



ポスターやチラシを置いてあるコーナー。美術関係以外にも音楽関係のチラシもおいてありますので(無料情報誌「ぶらあぼ」も置いてあります),見逃せないコーナーです。


今回のリーフレットです。