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L'estate Vacanza 夏〜バカンス:ヴィヴァルディの四季「夏」のソネットの情景より
music@rt season II vol.2
2008/07/27 金沢21世紀美術館内交流ゾーン
1)ヴィヴァルディ/協奏曲集「四季」から「夏」ト短調 op.8-2〜第1楽章
2)ギス=セルヴェ/英国国歌の主題による華麗で技巧的な変奏曲 op.38
3)ダカン/かっこう
4)ヴィヴァルディ/協奏曲集「四季」から「夏」ト短調 op.8-2〜第2楽章
5)ヴィヴァルディ/チェロ・ソナタト短調 RV.42
6)ヴィヴァルディ/トリオ・ソナタニ短調op.1-12「ラ・フォリア」
7)ヴィヴァルディ/協奏曲集「四季」から「夏」ト短調 op.8-2〜第3楽章
8)(アンコール)ヴィヴァルディ/協奏曲集「調和の霊感」〜第9番ニ長調 op.3-9〜第1楽章
●演奏
竹中のりこ(ヴァイオリン*1-2,3,6-8),大隈容子(ヴァイオリン*1,4,6-8),石黒靖典(ヴィオラ*1,4,7-8),大澤明(チェロ*1-2,4-8),黒瀬恵(チェンバロ1,3-8)

Review by 管理人hs  

演奏会のチラシとリーフレットです。「夏」のソネットをイメージさせてくれるようなデザインです。
オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のメンバーが金沢21世紀美術館内で室内楽を演奏するシリーズも2年目に入りましたが,今回はその2回目に出かけてきました(第1回は聞き逃してしまいました)。OEKは,7月30日にはフランスのラ・ロック・ダンテロンで演奏会を行っているはずなので,「皆さん,まだ金沢に居て大丈夫でしょうか?」という気もしましたが,お陰で夏らしい音楽の数々を楽しむことができました。

今回のプログラムは,ヴィヴァルディの「四季」の「夏」に焦点を当てたものでした。その3つの楽章を分解し,間にチェロの大澤さんのトークとバロック時代の音楽を挟み込むという内容でした。これまでこのmusic@rtシリーズでは,30分ほどの同一内容の公演を3回繰り返すパターンが多かったのですが,今回は約1時間の公演が1回でした。もともと出入り自由の無料公演ですが,この形の方がプログラム的に聞き応えがあるし,奏者の皆さんも演奏しやすいのではないかと思いました(「ラ・フォル・ジュルネ」並みの45分でも良いかもしれません)。

この日,金沢では昼過ぎから「集中豪雨」と言っても良い雨が降り,大雨警報が出ていたのですが,雰囲気としては,「夏」の第3楽章の強烈さとそっくりで,図らずもシンクロしていました。お客さんの方は夏休み期間中ということもあり,雨にも関わらず,大勢のお客さんが入っていました。床に座って聞いている家族連れも大勢おり,和やかな良い雰囲気がありました。21世紀美術館の集客力は相変わらずですが,このシリーズ自体もすっかり定着してきたのだと思います。

まず最初に「夏」の第1楽章が演奏されました。この日の編成は,弦楽四重奏+チェンバロという5人編成でしたが,間近で聞くと非常に迫力がありました。続いて,竹中さんのヴァイオリンと大澤さんのチェロの二重奏で,ギス=セルヴェという作曲家による少し珍しい変奏曲が演奏されました。この曲のタイトルに付いている形容詞が「華麗で技巧的」という不必要なぐらいにきらびやかなもので,字面を見ているだけでうれしくなりました。竹中さんと大澤さんの演奏の方もとても切れ味の良いものでした。

その後,チェンバロの黒瀬さんの独奏でダカンの「かっこう」が演奏されました。この日のプログラムには,「夏」に付けられたソネットが掲載されていたのですが,その第1楽章の部分に「かっこう」が出てきます。これを意識しての選曲だったのかもしれません。ただし,反響板の向きのせいか,チェンバロの音は,少々聞き取りにくいところがありました。今回,大澤さんのトークの方も,かなり聞きにくかったのですが,この辺はコンサートホール以外で演奏を行う難しさかもしれません。

続いて,「夏」の2楽章が演奏されました。大澤さんは「この2楽章だけ抜き出して演奏されることはまずありません」と話されていましたが,蚊や蝿と稲妻の擬音だけで出来ているような楽章なので確かにそのとおりです。[夏」に焦点を当てた公演ならではの企画といえます。

大澤さんの独奏によるヴィヴァルディのチェロ・ソナタト短調は,「夏」と同じ調性ということもあり,甘く気だるい感じがぴったりでした。その後に演奏された「ラ・フォリア」は,他の作曲家も同じモチーフで作っている,おなじみの変奏曲です。ヴァイオリンのお二人のとても澄んだ音色が印象的でした。

最後は,この日の豪雨を思い出させるような「夏」の3楽章が一気に演奏され,さらに,アンコールで,同じヴィヴァルディの「調和の霊感」の中の1つの楽章が演奏されて爽快に締められました。

意外にヴィヴァルディの音楽をまとめて聞く機会は少ないのですが,背景に鮮やかな緑の芝生が広がる「夏の21世紀美術館」の雰囲気には,ぴったり来る音楽だと実感しました。(2008/07/28)







21世紀美術館
写真集
大勢のお客さんが聞いていました。


反対側から見たものです。


演奏中,曲目がこのような形で掲示されています。


外から撮影したものです。


特製のカクテルも販売していました。


窓の向こうには金沢駅と結ぶマチバス(\100)が来ていました。