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金沢エキコン:金沢駅構内で聴く音楽会:祝・ラ・フォル・ジュルネ金沢2009開催決定記念
2008/09/27 JR金沢駅東口コンコース
1)モーツァルト/ディヴェルティメントニ長調K.136〜第1楽章
2)渡辺俊幸(編曲者不明)/NHK大河ドラマ「利家とまつ」〜メイン・テーマ「颯流(弦楽合奏版)」
4)武満徹/映画「他人の顔」〜ワルツ
3)チャイコフスキー/弦楽セレナードハ長調〜ワルツ
5)バッハ,J.S./管弦楽組曲第3番〜エア
6)谷村新司/いい日旅立ち
7)KANAZAWA Station 110(金沢駅開業110周年記念楽曲,初演)
●演奏
井上道義指揮*1-4,6-7オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサート・マスター:サイモン・ブレンディス)
Review by 管理人hs  
↑公演の立看板です。
もう一つ,別のタイプもありました。↓

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の本拠地,石川県立音楽堂はJR金沢駅のお隣ということで,「金沢エキコン」という「金沢駅構内で聴く音楽会」を定期的に行っています。過去,OEK自身が登場したことがあるかどうかは知らないのですが,今回は「ラ・フォル・ジュルネ金沢2009開催決定記念」ということで,井上道義さんとOEKが登場しました。OEKファンとしても,「一度は聞いておかねば」と思い,今回,「エキコン」に初めて出かけてきました。

OEKの方はさすがにフル編成ではなく,弦楽メンバーを半分ほどに減らしての編成でしたが(4−3−2−2−1ぐらいの人数だったと思います),それでもチャイコフスキーの弦楽セレナーデのワルツ,武満さんのワルツなどOEKのお得意の曲を含め,7曲も聞かせてくれました。タテ看によると,「祝・ラ・フォル・ジュルネ金沢2009」ということで,テーマであるモーツァルトの作品をもっと演奏するのかと思っていたのですが,モーツァルトは,最初に演奏したK.136のディヴェルティメントの第1楽章だけでした。この点は,ちょっと期待はずれでした。

今回の演奏会ですが,井上さんが登場するということもあって,かなり大勢のお客さんが集まっていました。私は比較的前の方に座っていたので全貌は分かりませんでしたが,JR金沢駅東口コンコースは黒山の人だかりになっていました。

開演は17:30だったのですが,井上さんが到着したのは本当にギリギリでした。旅行カバンを持ったままステージに駆け寄り,お客さんに一礼した後,パッとオーケストラの方を向いて,1曲目を指揮し始めました。こういう動作が似合うのは,日本の指揮者では,井上道義さんだけではないかと思います。故カルロス・クライバーを彷彿とさせる,スピード感のある登場の仕方でした。

モーツァルトに続いて,金沢ではお馴染みの「利家とまつ」のテーマ「颯流」が演奏されましたが,今回は,弦楽合奏版で演奏されましたが,この演奏はとても新鮮でした。「颯流」を弦楽合奏で演奏すると,紀行テーマ「永遠の愛」と似た感じになるのですが(今回はサイモン・ブレンディスさんのソロも入っていたので,ますますそういう感じでした),今回のアレンジでは,テンポアップする終結部も全部演奏していたので,正真正銘の「颯流」の弦楽合奏版となっていました。こういう編成で聞くと,バロック音楽のように聞こえるのが,とても面白いと思いました。

続いて,ミッキー&OEKお得意のワルツ2曲が演奏されました。井上さんの指揮ぶりを間近で初めて見たお客さんは,その美しさに魅了されたと思います。バッハのアリアが,指揮なしで演奏された後,JR(国鉄?)のかつての(今も?)イメージ・ソング曲「いい日旅立ち」と金沢駅開業創業110周年記念として公募によって作られた「KANAZAWA Station 110」が演奏されて,お開きとなりました。ちなみに「KANAZAWA Station 110」は,今回が初演とのことです。優しい雰囲気のある,大変聞きやすい作品でした。

今回のエキコンですが,演奏にも増して素晴らしいな,と思ったのは井上さんのトークでした。演奏同様大変スピーディで,曲間のすべてに気の利いたトークが入りました。指揮姿同様,お客さんをぐっと引き付ける力がありました。こういうイベント的な企画では,MCの力が大きいと実感しました。

今回のコンサートは,丁度30分で,半分,ラ・フォル・ジュルネ金沢の予告編のようなものでしたが,井上さんを間近で見て,そしてOEKを間近で聞いて,「来年5月には聞きに行くぞ!」と思った人が増えたと思います。やはりライブのPRには”実演”がいちばんですね。

PS,今回,井上さんは次のような面白い話をされていました。
  • クレーメルさんとは,今回,意気投合した。再来年,再度共演予定
  • 東京駅でもエキコンをやっていたが,あまりにも人が集まりすぎて,現在は行われていない。金沢駅ぐらいだと丁度良いのでは?#私も同感です。ちなみに東京駅のエキコンの最終回に登場したのが,OEKでした。その時の指揮は,故團伊玖磨さんでした。図らずも,バトンタッチされて,金沢で継続している形になっています。
  • 指揮なしでアリアが演奏された後,指揮者の意味について語られました。これぐらいの少人数だと指揮者なしでも演奏できるが,音楽については”民主主義”で方針を決めて演奏してもつまらなくなるケースが多い。その方針を独裁的に決められるのが指揮者である。#大変,分かりやすいお話でした。

PS.次回のエキコンですが,10月14日の鉄道記念日の一日前の10月13日(祝)に行われるそうです。朝から筝の演奏が行われるとのことでした。

開演前のJR金沢駅です。もてなしドーム側&鼓門から入りました。

JR金沢駅構内に入ると,「ラ・フォル・ジュルネ」の時と同じような雰囲気になっていました。その時の写真なども展示されていました。 エキコン用レッド・カーペットは,この公演にはぴったりですね。演奏以外にも多目的(爆笑ライブとか?)に使えそうです。 私はこの辺から聞いていました。今回は,完全に公共のスペースで演奏していましたので,演奏している姿をバシバシで撮影している人がかなりました。この辺もPRの一環にはなるのかもしれません。

演奏後のステージです。金沢駅創業110年とOEKのロゴが貼ってありました。

昨年の「ラ・フォル・ジュルネ」の最終公演の写真も貼ってありました。 JRの金沢駅です。夜になるとSF的な空間になります。
1時間ほどしか経っていないのですが,外はすっかり暗くなっていました。最初の写真と同じ場所です。
(2008/09/28)