OEKfan > 演奏会レビュー
兼六園周辺文化の森:ミュージアムコンサート 哀愁のギター:夜のライトアップとともに
2008/10/04 石川四高記念文化交流館
1)ブローウェル/特徴的舞曲
2)武満徹/ギターのための12の歌〜ヘイ・ジュード,ミッシェル,イエスタデイ
3)ヴィラ=ローボス/ショーロス第1番
4)グラナドス/スペイン舞曲第5番
5)トローバ/ソナチネ
6)(アンコール)タレガ/アルハンブラの思い出
●演奏
太田真佐代(ギター)

Review by 管理人hs  
ミュージアムウィークの看板と近代文学館の看板です。
もう一つ,「石川四高記念館」の看板も掛かっています。
建物の玄関が会場でした。
玄関前に椅子が並べられました。
終演後です。
公演パンフとチラシ
昼過ぎに石川県立美術館で行われたピアノ・リサイタルを聞いてきたばかりですが,夜は同じ「ミュージアム・コンサート」の一環として行われた太田真佐代さんのギター・リサイタルに出かけてきました。こちらも約45分,無料の公演でしたが,石川四高記念文化交流館(石川近代文学館)前という,ちょっと意表を突くような場所で行われたこともあり,大変印象的な公演となりました。

今回の会場の石川四高記念文化交流館は,従来は,石川近代文学館と呼ばれていましたが,今年,金沢大学の前身の第四高等学校を前面に出す形で,この名称に変更されました。この日は,夕方6時からの開演ということで,徐々に暗闇が濃くなり,赤レンガ造りの建物の雰囲気がどんどん怪しげになり,異次元空間に入っていくような雰囲気になりました。

その中で,太田真佐代さんのギター独奏が行われました。「野外でのアコースティックギターの演奏というのはどうかな?」と聞く前は少し不安に思っていたのですが,PAで音声をうまく拡大しており,繊細さと同時に迫力を感じました。生でギター・ソロ演奏を聞くのは,初めてのようなものだったのですが,大変聞き応えがありました。演奏が始まると,どんどんお客さんの数が増えていきましたが,ギターという楽器の,そして,太田さんの演奏の持つ表現力の広さの証明だったと思います。

今回演奏されたのはスペイン及びラテン系の曲と武満さんの編曲によるビートルズということで,ギター音楽のエッセンスを楽しむには最適のプログラムだったと思います。最初,格好良いリズムに乗ってブローウェルの特徴的舞曲が始まったのですが...すぐ四高記念文化交流館のすぐ向かい側にある教会の鐘が鳴り始めました。野外での演奏ならではのハプニングでしたが,やけに長かったですねぇ。夜の6時開始の演奏会だったので,鐘が鳴ることが分かっていれば,その後に演奏会を開始すればよかったのですが,6時を微妙に回ってから鳴っていたところが曲者でした。しかし,これに負けず,キレの良い演奏を楽しむことができました。

続いて,武満さんの編曲によるビートルズの作品が3曲演奏されました。編曲モノがオリジナルに勝つことはほとんどありませんが,この武満さんによるギター独奏版は,非常に心に染みます。ビートルズの原曲とは,全く別の世界でありながら,武満さん自身がビートルズの音楽を愛していたことが分かるような編曲だと思います。ギター演奏の場合,弦を押さえる時のノイズがどうしても入るのですが,それがまた良い味を出していました。

この後はラテン系の曲が続きました。この日,太田さんは,赤と黒の衣装でしたが,この辺を意識してのものだったと思います。ライトアップされた中で熱くギターを演奏する姿は,ビジュアル的にも大変魅力的でした。

ヴィラ=ロボスのショーロス第1番は,ちょっとピアソラの音楽を思わせるような粋な感じがありました。太田さんが演奏前に語っていたように,リズムも格好良かったのですが,たっぷりと響く低音の迫力も印象的でした。曲の途中で一瞬,弾きなおす場面がありましたが,そのことも含め,非常に骨のあるギターだと思いました。

グラナドスのスペイン舞曲第5番は,ギター名曲集などによく収録されている有名な作品です。この曲も大変たっぷりとした演奏でした。CDだとついついBGM的に聞き流してしまうのですが,実演で聞くと「こんなに聞き応えがあるのか」と改めてライブの良さを実感しました。繊細なハーモニクスからたっぷりとして低音まで,ダイナミックレンジの幅が広く,非常に濃い演奏でした。その分,流れが悪い部分もありましたが,ラテン音楽的な熱さがひんやりとした空気に心地よく溶け合うような快適な気分に浸ることができました。

最後は,トローバという作曲家の急−緩−急の3楽章から成るソナチネが演奏されました。聞いているうちに,この曲の第1楽章だけは聞いたことのあることを思い出しました。ラテン的な気分のある心地よい曲でしたが,レトロな建物のすぐ傍で聞いたこともあり,第2楽章などは,セレナードを聞くようでした。最後の力強い和音も印象的でした。

アンコールでは,ギター音楽でいちばん有名な曲の一つである,「アルハンブラの思い出」が演奏されました。非常にゆっくりとしたテンポで演奏されており,思わず息を詰めて聞いてしまいました。練習曲風の作品なのですが,一体どうやったらこのような幻想的な音楽が指先から出てくるのだろう,と思わせるようなミステリアスな雰囲気がありました。

今回の演奏会は,金沢市中心部に大きく広がる公園の雰囲気とぴったりマッチしていました。遠くの雑踏の音を消すように,ギターの音が夜の空気に広がっていく様を味わうのは,最高の癒しでした。野外演奏の贅沢さを味わうことのできた演奏会でした。

PS.公演のパンフレットと一緒に,「クラシックギターを始めてみませんか」という太田真佐代さんのギター教室のチラシが入っていました。今回の演奏を聞いて,(私自身も含め)心動かされた方も居たと思います。
(2008/10/06)



石川四高文化交流館写真集(10月4日)
改装された石川四高文化交流館付近の写真です。開演までの時間を利用して無料ゾーンのみ見て回りました。
看板です。石川県立歴史博物館と兄弟のような建物です。
この建物の前には,椅子が並べれられていました。 この辺は,中央公園と一体になっているのですが,また別のイベントをこちらでは行っていました。ダンスのコンテストのようでした。
建物の裏側には,エレベータが付けられています。
建物の前面には,いろいろなオブジェが飾られていました。その隣にあるのは,井上靖の「流星」の碑です。
四高生3人組の像の隣にも,オブジェがありました。 正面玄関前が演奏会場でした。
建物の中です。この長い廊下の雰囲気意が旧制高等学校の雰囲気を伝えています。

廊下の窓から中央公園の方を見たものです。
今回,リニューアルされた四高関係の展示です。部屋の雰囲気が大変明るくなっていました。 四高の先生(多分)の銅像です。この辺にも何やら細工がしてあるようでした。
演奏会が始まる頃にはすっかり暗くなっていました。


「月見光路」写真集(10月4日)
演奏の後は,すっかり暗くなっていたのですが,広坂通り一帯は,「月見光路」というイベントで,そこら中が灯篭風のあかりでライトアップされていました。夜桜見物風の華やかさと甘美さがあり,大変見ごたえがありました。21世紀美術館の方でも,金沢全体を展示会場にするような面白いプロジェクトを行っているし,柿木畠でも別のイベントをやっているし,金沢という街も面白い街になってきたなぁ,と実感しています。やっぱり,21世紀美術館の存在が,各方面に刺激を与えているような気がします。

以下,その写真を紹介しましょう。あまりに美しかったので,写真を撮りまくってしまいました。
日中に撮影した,広坂緑地付近です。この辺一帯が,夜になると一変していました。

こういう感じです。この写真以上に幻想的な雰囲気でした。これは,金沢の新しい名物に出来るのではないかと思いました(ただし,天候に左右されるのが難点ですが...) いろいろな形の正面が沢山飾られていました。 要所要所にこのような看板があります。キーワードが書かれているのですが,これをスタンプラリーの要領で集めていくと,粗品がもらえる...という趣向です。ついつい参加してしまいました。
日中はこういう雰囲気でしたが...
夜になるとこうなります。 これも日中の写真ですが...
こうなります。私のデジカメでは撮影仕切れない美しさでした。
この照明がいちばん豪華だったかもしれません。

これは,近代文学館の方だったと思います。 旧石川県庁の建物もライトアップされていました。 天然記念物の堂形のシイの木のシルエットと旧県庁です。 
この辺はススキのようなイメージ

広坂緑地の方でも,別途,ライブ演奏を行っていたようです。 臨時のカフェも出ていました。す。 子供が書いた絵の灯篭
こうやって写すと絵のようです。

ライトアップされた石川四高記念交流館です。 看板が透明なのでとても幻想的です。 こちらは金沢市役所前の看板です。「金沢はこの秋も熱狂する」とのことです。
日中の21世紀美術館です。

こちらもこのように変貌していました。 美術館のカフェです。ピンクの風船が浮かんでいたので,何かと思ったら... 結婚式をやっていました。
21世紀美術館の壁面に映っていた映像作品です。金沢の映像だったようです。

夜の展示室です。昼間とは全く違った表情を見せています。 21世紀美術館向かい石浦神社です。こちらにもオブジェがあり,ライトアップされていました。 さらに,屋台が出ていました。


その頃,柿木畠商店街では(10月4日)
この日は,町中で並行していろいなイベントを行っていました。柿木畠商店街でも祭りをやっていました。写真は,演奏会前と演奏会後の2回に分けて撮影したものです。
店の前にあった看板です。OEKのヴァイオリンの上島さんとヴィオラの石黒さんが,「流し」で登場します,と書いてありました。

柿木畠ののぼりです。 柿木畠の協会の前がステージになっており,あれこれイベントを行っていました。 「秋晴れや...」と書いてありますが,この日は本当に良い気候でした。
ホテルACTYの出店です。

金沢名物ハントンライスがあったので買って夕食としました。その後,太田さんのギターを聞いてきました。
以下は,演奏会後,月見小路見物のついでに撮影した写真です。ジャズ喫茶「もっきりや」です。 イベントのポスターです。
    
こちらは「いたる」です。いつ行っても賑わっているお店です。
丁度,この店で,OEKのお二人が”流し”をやっていたようです。 せせらぎの街 柿木畠      


金沢アートプラットフォーム2008も始まりました
金沢21世紀美術館主催の「金沢アートプラットフォーム」という企画もこの日始まりました。金沢市内のあちこちに”アート”を埋め込もうというもののようです。帰り道の光景も少し変わっていました。
ポスターです。
いつもは空き家だったと思います。 展示物の存在を示す印のようです。 これも空き家?不思議な白いエビフライのようなものがいつのまにか生えていました。

    
竪町商店街には,スーパーのレジ袋が宙に浮かんでいました。
少々意味不明ですが,これもアート?兼六園下交差点です。 その付近のビルで,関連イベントの準備を行っていました。