OEKfan > 演奏会レビュー
兼六園周辺文化の森:ミュージアムコンサート 英国の響き:ブリティッシュスタイルバンドの夕べ
2008/10/05 石川四高記念文化交流館
1)リチャード/ジャガー
2)伝承曲(ハイムズ編曲)/アメージング・グレイス
3)アレス/ハッピー・トロンボーン
4)マーキュリー/ボヘミアン・ラプソディ
5)レノン&マッカートニー/ヘイ・ジュード
6)(アンコール)フリードマン/ロック・アラウンド・ザ・クロック
●演奏
山川茂指揮ラフィネ・ブラスバンド

Review by 管理人hs  
開演直前になって雨が降ってきたので,開演前はどこで演奏するか結構バタバタしていました。主催者側の準備不足だったと思います。

傘を指しながら聞いている人も大勢いました。

このところ,金沢では絶好の行楽日和が続いていましたが,この日は午後から天気が急に悪くなってしまいました。その中,前日に続いて,石川四高記念文化交流館前で「ミュージアム・コンサート」の一環の演奏会が行われました。今回登場したのは,ラフィネブラスバンド(RBB)の皆さんでした。

ブラスバンドと吹奏楽とは,よく混同されるのですが,ブラスバンドの方は純粋に金管楽器のみによる編成です(打楽器は入りますが)。石川県内では,このRBBのみが,”ブラスバンド”とのことです。

実は,以前,一度RBBの演奏会を聞きに行ったことがあるのですが,その時,「ええ感じやなぁ(変な関西弁で失礼しました。この日の指揮者の山川さんの関西弁に釣られてしまいました)」と思った記憶があります。同族楽器のみによるオルガン的な響きを楽しみに,今回,聞きに行くことにしました。

前述のとおり,昨日の好天から予想もつかないほどの雨になったのが,想定外でしたが,それでも,その響きの美しさは十分に実感できました。「ブラスバンド=大音量」という印象があったのですが,かなりの至近距離で聞いたにも関わらず,全くうるさい感じはしませんでした。

今回,RBBの皆さんは無理やり屋根のある場所に押し込められるように座っており演奏し辛かったと思うのですが,もしかしたら,そのことがかえって楽団全体としての音の統一感を高めていた部分もあったかもしれません。合奏部分では,文字通り一つの楽器のような音を楽しむことができました。そういえば,映画「ブラス!」でも結構狭いスペースで演奏していた気がします。ブラスバンドというのは,そういうスタイルとも言えそうです。

それと,「さすが金管楽器,雨には強い!」と妙なところで見直してしまいました。弦楽器主体のオーケストラの場合,今回のような天候だと,野外での演奏は無理だったと思います。

演奏された曲は,最初にジャガーという行進曲が演奏された後,ブラスの音色美を聞かせるアメージング・グレイスが演奏されました。この曲は,外国では葬式で演奏されたりしますが,そのことを彷彿とさせる賛美歌的な雰囲気のある演奏でした。ハッピー・トロンボーンは,以前にも一度聞いたことがあるような気がしますが,トロンボーン3本が鼻歌まじりに楽しく歌うような軽快な曲です。

続くボヘミアン・ラプソディは,この日のプログラム中,いちばん楽しみにしていたものです。クイーンは英国のロック・グループということで,ブラスバンドの盛んな英国と共通点があります。私自身,ロックの”定義”は,よく知らないのですが,この曲などは相当型破りな”ロック”だと思います。形式的には,曲のタイトルどおりラプソディとしか言いようのない曲だと思います(とは言え,「東京ラプソディ」はやはり歌謡曲ですが...)。そういう意味で,以前から,そのままクラシック音楽として演奏しても,面白い作品だと思っていたのですが,聞いてみて,そのとおりだと思いました。いろいろな雰囲気の曲のパッチワークなのですが,その唐突な変化が大変面白い曲です。そして,ブラスで演奏すると,ブラスの曲になってしまうところも面白いと思いました。

映画「ブラス!」に出てくるブラスバンドの演奏を聞いていると,メロディを担当する楽器のビブラートが独特の色合いを持っているのを感じるのですが,今回のRBBの皆さんの演奏にも,それと似た空気があり聞いていて嬉しくなりました。

最後は,予定を変更してビートルズのヘイ・ジュードが演奏されました。こちらも英国にちなんでの選曲ということになります。アンコールは,ロック・アラウンド・ザ・クロックが演奏されました。

最後の方の曲は,どれも手拍子を入れたいところだったのですが...残念ながら傘を差しながらだと,そういうわけにも行きません。演奏後もすぐに拍手をして上げたかったのですが,どうしても傘を持っているとタイミングが遅くなってしまいました。このことだけが残念でした。

演歌歌手が歌えば何でも演歌になるように,正真正銘のブラスバンドが演奏する曲には,一つのスタイルがあるように感じました。明るく楽しいけれどもうるさくないスタイルというのは,何物にも変えられない魅力だと感じました。RBBは,12月7日に津幡で定期演奏会を行う,ということですので,この魅力に浸りたい方は是非お出かけになってみて下さい。(2008/10/06)