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エキコン金沢スペシャル:ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭2009開催決定記念&鉄道の日記念
2008/10/13 JR金沢駅東口コンコース
1)渡辺俊幸/NHK大河ドラマ「利家とまつ」〜メイン・テーマ「颯流」
2)ベートーヴェン/交響曲第6番ヘ長調op.68「田園」〜第1楽章
3)シュトウス,ヨハン&ヨーゼフ/ピチカート・ポルカ
4)アンダーソン/プリンク,プレンク,プランク
5)アンダーソン/ワルツィング・キャット
6)吉俣良/NHK大河ドラマ「篤姫」〜テーマ
7)鉄道唱歌
8)谷村新司/いい日旅立ち
9)KANAZAWA Station 110(金沢駅開業110周年記念楽曲)
10)モリコーネ/映画「ニュー・シネマ・パラダイス」の音楽
11)モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
12)(アンコール)シュトラウス,ヨハンI世/ラデツキー行進曲
●演奏
鈴木織衛指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサート・マスター:松井直)
Review by 管理人hs  
↑公演の立看板です。
「ラ・フォル・ジュルネ金沢2009開催決定&鉄道の日記念」と題してJR金沢駅東口コンコースで行われたエキコン金沢スペシャルに出かけてきました。この日は,ラ・フォル・ジュルネ金沢(LFJK)並みに午前中からずっと演奏会を行っていたのですが,私は,その最終ステージの鈴木織衛さん指揮のオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の公演だけを聞いてきました。

実は,先月のエキコンにもOEKは登場していたのですが,その時は,弦楽メンバーのみの出演でした。今回は,管楽器,打楽器も含むフル編成(弦楽器は少し少なかったかもしれません)ということで,JR金沢駅コンコースはオーケストラの響きに包まれました。今回のお客さんの中には,日頃,コンサートホールに足を運ぶことのない人も大勢含まれていたと思いますが,「生演奏はやはりすごい」と実感したことと思います。何も知らずに通りかかった観光客や通行者もびっくりしたことでしょう。

今回は,鈴木さんのとても分かりやすく流暢なトークとともに,お馴染みの作品が12曲演奏されました。最初に「利家とまつ」のテーマが演奏されました。この曲は,今年の金沢市祭「百万石まつり」のクライマックスに金沢城公園で朗々と流されて,祭のエンディングを大いに盛り上げてくれましたが,もはや「金沢市民ならば,誰でも知っている曲」という感じになりつつあります。今回はOEKのフル編成での演奏ということで,1曲目から一気に会場の雰囲気が盛り上がりました。

続いて,先日の定期公演でキタエンコさん指揮で聞いたばかりの,ベートーヴェンの「田園」交響曲の第1楽章が演奏されました。「田舎に着いた時の愉快な気分」という標題の付いている楽章ですが,それをもじるように「金沢に着いたばかりのお客さんに喜んでもらおう」という意図による選曲でした。

シュトラウス兄弟の共作によるピチカート・ポルカに続いて,ルロイ・アンダーソン曲が2曲演奏されました。この辺の曲は,OEKが軽めの演奏会でよく演奏している曲ですが,特にアンダーソンの2曲は”見た目”的にも楽しめました。

プリンク,プレンク,プランクでは,チェロとコントラバス奏者がエンドピンを軸にクルリと回す”技”を見せてくれました。「テンポが速かったので,回り切れない人もいましたねぇ」という鈴木さんのコメントも大受けでした。

ワルツィング・キャットの方は,最後にOEKの奏者たちによるワンワンという掛け声が入る楽しい演奏でした。この曲の途中,「ヒュ〜」という感じでおもちゃの笛の音が入るのですが,この演奏は打楽器の渡邉さんが担当されていました。この辺のユーモア感覚も最高でした。

その後,今年のNHK大河ドラマ「篤姫」のテーマが演奏されました。今年いちばんのヒット作ということで,一段と大きな拍手が沸きました。9月にOEKの定期公演のアンコールで井上道義さん指揮で聞いた時よりは,テンポがやや速目で,「ちょっと違う?」という気もしたのですが,コントラバスの音がよりはっきりと聞こえ,また違った面白さがありました。「利家とまつ」にしてもそうですが,大河ドラマのテーマ曲は,2分30秒ほどの短時間に聞き所が満載されていますので,こういう場所で素早くお客さんにアピールするには最適だと思いました。

今回の公演は,「鉄道の日」イブに行われたのですが,それにちなんで,3曲続けて鉄道関連の曲が演奏されました。最初の鉄道唱歌は,元気の良い行進曲風でしたが,「何かいつも聞いているのと違うな?」というアレンジでした。金沢駅開業110周年記念で作られた「KANAZAWA Station 110」は,先月に続いて演奏されました。私自身,日頃,金沢駅に行くことはないので聞いたことはないのですが,構内でOEKの演奏したものが流されているということですので,金沢駅に行かれた方は是非耳を澄まして聞いてみてください。

3曲目の「いい日旅立ち」も先月に続いての演奏でした。この曲は,「鉄道の日」には抜かすことのできない曲でしょう。先月の弦楽合奏版と違い,今回はイントロのメロディをトランペットが「チャランラーン,チャチャララララ...」と哀愁たっぷりに演奏していました。この「いかにも歌謡曲だなぁ」というムードが最高でした。その後,オーボエや弦楽器が主旋律を演奏していましたが,思わずOEKをカラオケにして歌いたくなってしまいました(鉄道関連の歌謡曲では,「あずさ2号」など聞いてみたいのですが...全く金沢に関係ないので,期待薄でしょうか)。

その後,お待ちかねのルネ・マルタンさんが登場し,来年のラ・フォル・ジュルネに向けて,「ひとこと」語られました。さらに,飛び入りで石川県立音楽堂洋楽監督の作曲家の池辺晋一郎さんも登場し,豪華メンバーが一同に揃いました。今回,ルネ・マルタンさんは,LFJK2009の準備のために金沢に来られたのですが,このエキコンの盛況を見て,気分を良くされたのではないかと思います。

ちなみに池辺さんの方は,相変わらずダジャレを連発されていました。「ところでラ・フォル・ジュルネの発祥の地はナントというところでしょうか?」「ナントです」というのは,イマイチ受けませんでしたが,「金沢のウナギ...ならぬドジョウだと,来年のモーツァルトも大成功でしょう」というのは,受けていました。

マルタンさんは「コンチェルトを全部やります。レクイエムもやります」と語っていたのですが(通訳の方がそう訳していました),モーツァルトにはありとあらゆる協奏曲がありますので,大変,華やかな公演になりそうです。全ピアノ協奏曲の演奏はないとは思いますが,大勢のソリストの演奏を聞くことができそうです。

マルタンさんが退場した後,再度,演奏に戻り,映画「ニュー・シネマ・パラダイス」の音楽が演奏されました。こうやって聞くと,先ほど聞いた「KANAZAWA Station 110」と似た雰囲気のあるアレンジだな,と思いました。演奏会の最後は,モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲が演奏されました。文字通り,LFJK2009に向けての景気の良い序曲となっていました。

演奏後,金沢駅から指揮者の鈴木さんに花束贈呈があった後,アンコールとして,ラデツキー行進曲が演奏されました。鈴木さんは,客席の方を向いて,大変にこやかに手拍子をコントロールされていましたが,その通り,「誰もがハッピー」という気分でお開きとなりました。会場には,黄色地に赤文字でモーツァルトの肖像入りのポスターが既に貼られていましたが,いよいよLFJK2009の準備も始まっなぁ,ということをアピールするイベントとなりました。

PS.ちなみにこの日は,OEK以外にも,次のような公演が行われました。
  • 10:00〜10:45 石川県箏曲連盟による琴の競演・合奏
  • 12:00〜12:45 金沢市立兼六中学吹奏楽部
  • 14:00〜14:45 金沢市立兼六中学吹奏楽部
OEKの演奏の方は,16:15〜17:00の予定でしたが,トークが入ったこともあり,かなり終了時間が遅くなっていました。

今回のステージの様子です。定期公演やアジア音楽祭などのポスターが掲示されていました。

当然,モーツァルトのポスターも目立ちました。お隣にいるのは,テッピーという鉄道にちなんだキャラクターです。
数局のテレビカメラも来ていました。
ステージを横から見たところです。今回は,打楽器もかなり活躍していました。

舞台背面の衝立の裏が楽屋のような感じになっていました。 もてなしドームには,この秋のイベントの垂れ幕が並んでいました。
(2008/10/14)