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ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭2008:ベートーヴェンと仲間たち
【114】ジャン=フランソワ・エッセール/ポワトゥ=シャラント管弦楽団
2008/05/03 19:00- 石川県立音楽堂コンサートホール
ベートーヴェン/ピアノ,ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲ハ長調,op.56
●演奏
ジャン=フランソワ・エッセール(指揮,ピアノ)ポワトゥ=シャラント管弦楽団,ドミトリ・マフチン(ヴァイオリン),アレクサンドル・クニャーゼフ(チェロ) 
Review by 管理人hs    
さて,いよいよ1日目の最終公演にたどり着きました。日中の公演では,満席の公演が続きましたが,さすがに夜7時からの公演ということで,この公演では空席が少しありました(ただし,補助席を出していました。)。

登場したのは,ポワトゥ=シャラント管弦楽団で,指揮とピアノがジャン=フランソワ・エッセールさん,ヴァイオリンがドミトリ・マフチンさん,チェロがアレクサンドル・クニャーゼフさんでした。このポワトゥ=シャラント管弦楽団は,ラ・フォル・ジュルネの常連ですが,常設の団体ではなく,さまざまの音楽院で教鞭を取っている人たちが集まって,フランス西部を中心に活躍している団体とのことです。

この日の編成は,ほぼオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と同じでしたが,ヴィオラ,チェロ,コントラバスなどの低弦の数が少し大目でした。弦楽器の配置は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが下手側に並ぶ通常の配置でした。

今回演奏された三重協奏曲ですが,私自身,生で聞くのは今回で2回目です。1回目は,OEKとギドン・クレーメルさんが初共演するはずだった公演で,クレーメルさんがキャンセルとなり,急遽代役としてマイケル・ダウスさんが登場したという印象的なものでした。

この曲は,「駄作」とまで言う人がいる曲で,演奏される機会の少ない曲ですが,今回の演奏は,”音楽祭初日のトリ”に演奏されるのにぴったりの豪華さのある演奏になっていました。演奏機会が少ないのは,単にソリストを3人揃えるのが大変だというだけのことで,「傑作の森」中の1曲だと確信しました。

今回は,比較的出番の少ないピアノ・パートを指揮者のエッセールさんが兼ねていましたので,ピアノがステージ奥に向かって置かれていました。エッセールさんが通常の指揮者の位置に座り,その前にヴァイオリンとチェロが並んでいましたので,一見,二重協奏曲風に見えました。これは,この曲のコンセプトにはよく合っているように思えました。

第1楽章の序奏はかなりゆったりとしたテンポで始まりました。オーケストラの音色には開放的な気分があり,スケール感たっぷりのお膳立てがされました。続いて出てきた独奏者による演奏は,いずれもエネルギーに満ちたものでした。

ヴァイオリンのマフチンさんは,先ほど邦楽ホールでヴァイオリン・ソナタを聞いたばかりでしたが,相変わらずしっかりとした音を聞かせてくれました。チェロのクニャーゼフさんを聞くのは今回が初めてですが,こちらも負けずにうねるような歌を力強く聞かせてくれました。展開部に入りさらに,豪華さを増し,どんどん重厚さを増していきました。

第2楽章は,2つの独奏弦楽器の歌が聞きものですが,特にクニャーゼフさん耽美的なソロが素晴らしいと思いました。ラフマニノフの曲のムードに近い?と思わせるような熱い歌でした。第3楽章はポロネーズ風の楽章で,各ソロが前へ前へと競い合うように,張り切ったソロを聞かせてくれました。非常に爽快感がありました。

コーダでは,テンポを一気に速め,三者三様のスリリングな名人芸を聞かせてくれました。LFJKの一日目を締めくくるに相応しい豪華さと祝祭的な気分の残る演奏となりました。

私を含め,ここまでハシゴにハシゴを重ねていたお客さんは,ここぞとばかりに「OEKもイザイ弦楽四重奏団もケフェレックさんもベックさんもベレゾフスキーさんも金沢市立工業の皆さんも...一日分全部まとめて」という感じの盛大な拍手を送っていました。この日は,各公演間にほとんど休憩時間がなかったので,ほとんど8時間ぶっ通しで演奏を聴いたことになります。「自分で自分を褒めてあげたい」と言いたいところですが...冷静に考えると,まさに"Folle Journee"だったとあきれている次第です。(2008/05/17)

コンサートホール
ワルトシュタイン



コンサートホールのホワイエに忘れられていたLFJKのマーク入りの風船。多分,子供向けイベント用の風船だと思います。

こういうのが一つ,ポツンと残っていると,”熱い一日”の終わりを実感します。俳句でも読みたくなりました。