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ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭2008:ベートーヴェンと仲間たち
【123】イザイ弦楽四重奏団
2008/05/03 18:00- 石川県立音楽堂邦楽ホール
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第7番へ長調,op.59-1「ラズモフスキー第1番」
●演奏
イザイ弦楽四重奏団(ギョーム・ストル,リュック=マリー・アグエラ(ヴァイオリン),ミゲル・ダ・シルヴァ(ヴィオラ),ヨハン・マルコヴィッチ(チェロ))
Review by 管理人hs    
この日のラ・フォル・ジュルネ金沢(LFJK)のプログラムは,1時間ごとにコンサートホールと邦楽ホールを行き来する形で公演が並んでいました。紙の上では,「重なる時間はない。1公演45分なので,15分余裕があれば,全部ハシゴできる」と読んだのですが,実行するとなると非常にタイトだと分かりました。ただし,このタイトさにも慣れてきたのも事実です。「ここまで来たら,意地でも全公演制覇しよう」という,テーマパークのアトラクション巡り的な感覚になってきました。

さて,再度邦楽ホールに移動し,今度はイザイ弦楽四重奏団の演奏で,ラズモフスキー第1番を聞いてきました。同じホールでラズモフスキー第2番を聞いたのが同じ日だ,というのが嘘のようです。

この弦楽四重奏団を聞くのは初めてのことでしたが,冒頭の大らかな気分から,「さすが常設の団体」と思わせる,音色の統一感がありました。4人合わせて1人の演奏を聞くような有機的な統一感を感じさせてくれました。

何よりも透明で明るい音色が魅力的でした。音楽が非常に滑らかに流れ,随所にセンス良さを感じさせるニュアンスの変化がありました。それがわざとらしくなく,こなれているのが素晴らしいところです。メロディを担当することの多い第1ヴァイオリンとチェロ以外の,内声部のリズムの良さも印象的でした。

第2楽章のスケルツォは,偏執狂的な執拗さを強調したような音楽でした。緻密な音の組み合わせが見事で,非常に知的な感じのする演奏でした。こうい演奏をずっと聞いていると弦楽四重奏の世界にはまっていまいそうだな,と感じました。

第3楽章は,とても長い楽章で,透き通るような意味深な音楽が延々と続きました。しかし,基本的に明快な演奏で,暑苦しいところはありませんでした。続く,第4楽章は,第1楽章の冒頭同様に,軽やかなチェロの演奏で始まりました。その他の楽器の音も軽やかで,音が重なっても濁ることのない清澄さのある演奏でした。

ベートーヴェン的なちょっと不器用なユーモアも含め,熱くなリ過ぎずに曲のスケールの大きさを伝えてくれる演奏でした。イザイ弦楽四重奏団は,LFJK期間中,アートホールでの公演を含め,あと2公演行いました。本当はそれらも聞きたかったのですが,残念ながら聞くことができませんでした。ラ・フォル・ジュルネの常連さんということで,また是非,金沢で再会したい弦楽四重奏団です。(2008/05/17)