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ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭2008:ベートーヴェンと仲間たち
【221】高木綾子(Fl),クレール・デゼール(Pf)
2008/05/04 12:00- 石川県立音楽堂邦楽ホール
ベートーヴェン/フルートとピアノのためのセレナードニ長調,op.41
ベートーヴェン/フルートとピアノのためのソナタ変ロ長調(偽作)
●演奏
高木綾子(フルート),クレール・デゼール(ピアノ)
Review by 管理人hs    
高木綾子さんと言えば,OEKともCD録音を残している日本を代表するフルート奏者の一人です。ベートーヴェンにこういうフルート曲があったのか知らなかったのですが,たっぷりと楽しませてくれました。45分という時間は不思議なもので,時間的には通常の公演の半分ほどなのですが,演奏後の実感としては,通常の公演を全部聞いた後とあまり変わらないようなところがあります。この辺にラ・フォル・ジュルネの発想の面白さがあると思います。

最初のセレナードの方は,OP.25のフルート,ヴァイオリン,ヴィオラのための三重奏をフルートとピアノ用に編曲したものとのことです。全部で6楽章もあり,その面では,モーツァルトのセレナードと通じるような構成と言えます。

基本的には気楽に聞ける音楽ばかりで,高木さんのフルートのとても爽やかでまっすぐな音楽とマッチしていました。とてもバランスの良い安定した音楽でした。共演のクレール・デゼールさんは,フランスのピアニストで,ラ・フォル・ジュルネ金沢でもいくつかの室内楽や器楽曲の公演に出演されています。この方も,とても明るい雰囲気を持った女性でしたが,この方のピアノの持つ,リラックスしたムードが,高木さんのフルートをさらに盛り上げていた気がしました。熱演続きのラ・フォル・ジュルネの中で,このお二人による脱力感のある優しい音楽は,貴重なオアシスのようなものだったと思います。

6楽章構成の曲ということで,少々コマギレという感もありましたが,舞曲風の曲があったり,変奏曲があったり,短調に切り替わる曲があったり,と変化が付けられていました。最後の楽章では,一段華やかさが増し,上品に盛り上がって演奏が終わりました。

後半は,ベートーヴェンの作品だと思われていた偽作のフルート・ソナタが演奏されました。こちらは4楽章形式で,やはり気楽に楽しめる作品でした。偽作だけあって,いわゆるベートーヴェンらしい作品とは言えないと思いますが,こういう「ちょっとした作品」を休日のお昼時に楽しむというのもなかなか優雅なものだと実感しました(ただし,この日はこの後,「優雅さ」からどんどんかけ離れていくのですが...)

PS.この演奏会の直前までアートホールに居ました。邦楽ホールまでは移動に5分ぐらいかかりました。このアートホールとの間の移動が今回のLFJKのいちばんの問題点だったと思いますが,問題はないと思いました。恐らく,ホテル日航側の玄関から出て,信号を渡り,ANAホテル横(「せん」の向かい)を通り,邦楽ホール玄関に出るというのが最短だと思います。
(2008/05/03)


邦楽ホール
クロイツェル
邦楽ホールの隣の道路は,コンサートホール側が通行止めになっていたこともあり,通行量は少なめでした。

右の建物がANAホテルです。ホテル日航にある金沢市アートホール会場から邦楽ホールへ移動する場合は,この道を渡るのが近いと思います。