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石川フィルハーモニー交響楽団第26回定期演奏会
2009/04/11 金沢市文化ホール
1)スメタナ/連作交響詩「わが祖国」〜「高い城」「モルダウ」「シャルカ」
2)チャイコフスキー/交響曲第4番ヘ短調,op.36
3)(アンコール)チャイコフスキー/バレエ組曲「くるみ割り人形」〜トレパック
●演奏
花本康二指揮石川フィルハーモニー交響楽団

Review by 管理人hs  
夜桜見物の人で溢れる市街地を抜けて,金沢市文化ホールで行われた石川フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会に出かけてきました。毎年,この時期の恒例の演奏会ですが,毎回,取り上げられる曲目が楽しみです。今年はスメタナの連作交響詩「わが祖国」の前半3曲とチャイコフスキーの交響曲第4番というスラブ系の曲の組み合わせによる堂々たるプログラミングでした。

スメタナの方は,今年の秋に石川フィルは,全6曲を演奏するということで,その予告編的な演奏ということになります。第1曲の「高い城」は,ハープの独奏で始まります。この部分は,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)との共演でもお馴染みのハープ奏者上田智子さんが担当しており,「さすが!」という演奏を聞かせてくれました。雄大な連作交響詩の導入に相応しいスケールの大きさ感じさせる豊かな演奏でした。その後,オーケストラが入ってくると,ちょっと管楽器の音のバランスが悪いかな,と感じてしまいました。金沢市文化ホールでオーケストラ演奏を聞く機会は少ないのですが,聞く側からしても,このやや乾いた響きになじむのにちょっと時間が掛かった気がします。そのこともあり,イントロ部分に比べるとちょっとスケールが小さくなった気がしましたが,次第にクライマックスに向けてまとまりが良くなってきました。

2曲目は,有名な「モルダウ(ヴルタヴァ)」です。こちらの方は,とても変化に富んだ演奏でした。冒頭のフルート2本の絡み合いからスリリングで,これから何が始まるのだろうという勢いを感じました。合唱曲などにもなっている有名なメロディは,大変すっきりしており,爽やかさを感じさせてくれましたが,その流れの中に時折,大きなテンポの揺れを入れていたのが特徴でした。快適な流れの中に時折大波が押し寄せてくるような流動感を感じました。その後の部分も軽快なポルカ風,幻想的な月明かりのシーン..などがしっかりと描き分けられ,最後は「チャン,チャン」と決めてくれました。

3曲目の「シャルカ」は,暗い情熱を感じさせてくれるまとまりの良い演奏でした。最初の部分から荒々しさはあるのですが,それがしっかりコントロールされていました。曲の最後の部分のスピード感もとても格好良いものでした。

後半のチャイコフスキーの交響曲第4番を実演で聞くのは,昨年OEKが群馬交響楽団と合同演奏を行った時以来のことです。その時も感じたのですが,この曲は,フル編成オーケストラを聞く楽しみを色々な角度から楽しませてくれる名曲ですね。石川フィルの演奏を聞いて,まずこのことを再認識しました。

冒頭でホルンのユニゾンとその後に続くトランペットなどによって「運命の動機」が演奏されますが,イメージどおりの勇壮さと鋭さのある演奏でした。曲全体の枠組みをしっかり呈示していました。その後,弱音の部分になるとちょっと不安定さも感じましたが,第2主題にあたるティンパニの上にヴァイオリンがワルツ風のメロディを演奏する部分などは,細かく弱音のレベルが描き分けられており印象的でした。この部分は個人的に大好きな箇所なのですが,指揮者の花本さんの「こだわりの弱音」という感じでした。展開部以降も冒頭の金管のモチーフが繰り返し出てくるのですが,そのたびに凄みを増しており,曲を引き締めていました。コーダの部分にも堂々たる風格がありました。

第2楽章は静かな楽章ということで,全体的に音程の悪さを感じる部分もありましたが,沈滞するムードはなく,すっきりとした叙情性を感じさせてくれました。随所に出てくる木管楽器のソロやアンサンブルもとても良かったと思います。第3楽章は弦楽合奏のピツィカートで始まりますが,大変じっくりと聞かせてくれました。途中に出てくる木管楽器の演奏もたっぷりと聞かせてくれました。金管楽器の方はもう少しデリケートさが欲しい気もしましたが,配布された曲目解説を見ると,この部分について「陽気なばか騒ぎや,はやり歌を突然思い出すのです」と書いてあったので,そのイメージどおりだったといえます。

最終楽章は,最初の一音からたっぷりとした重いパンチ力を持った演奏でした。花本さんの指揮ぶりも誠実さと情熱をしっかりと感じさせてくれるもので,オーケストラ全体がそれにしっかりと応えていました。この楽章でも途中,「こだわりの弱音」が登場し,冒頭部分の迫力と好対照を作っていました。これは全曲を通じてなのですが,随所に出てくるオーボエのソロが特に良かったと思いました。

コーダに入る部分で,ホルンがひっそりと,しかし,喜ばしい動機を出し始め,木管楽器と絡みながら段々と盛り上がってくる箇所は何度聞いてもワクワクしますが,この辺からの最後の音にかけてのエネルギーの開放感も大変聞き応えがありました。そんなにテンポを煽ることなく,しっかりとしたオーケストラのサウンドを聞かせてくれました。全曲を通じて,ソリスティックな部分も充実しており,とても完成度の高い演奏だったと思います。その後,花束の贈呈などがあった後,チャイコフスキーの「くるみ割り人形」の中のトレパックが楽しげに演奏されて,お開きとなりました。

石川フィルは,今年の秋のビエンナーレ秋の芸術祭で,「わが祖国」全曲を演奏するということですが,この全曲は石川県内では滅多に聞けないと思います(全曲演奏は,県内初演かもしれません。)。数年前には,マーラーの「復活」を演奏をしましたが,今回の公演にも大いに期待したいと思います。 (2009/04/12)



この日は,演奏会に行く前に花見をしました。兼六園〜石川門〜金沢城公園〜大手堀...と写真を撮影しているうちに,開演前15分になってしまいました。せっかくなので写真でご紹介しましょう。

2009年兼六園周辺花見写真集
兼六園下バス停付近からスタート
真弓坂 石川門は逆光になりました。

    再度石川門です。 

  
  兼六園は無料開放ということで 賑わっていました。

花より団子
おなじみの徽軫(ことじ)灯篭 卯辰山方面の景色

桜をアップで撮影
石川橋から兼六園下方面を撮影 石川門方面に向かいました

広坂方面を眺めました
沈床園では... やはり宴会をやっていました

石川門をくぐりました
五十間長屋と三の丸広場 金沢城公園内の内堀です

実は,この辺がいちばんきれい?
新丸広場方面 内堀を別角度から撮影

案内図です
二の丸広場 本当にいろいろな石垣があります

橋爪門続櫓
石川門はさらに人が増加? 大手門付近

大手堀
尾山神社。その後,文化ホールへ 終演後です。今度は夜桜見物

石川門ですが...
あまりよく写っていません。

関連写真集
会場の金沢市文化ホールです。


入口のポスターです。