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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2009:モーツァルトと仲間たち
【116】戸田弥生,ジェラール・コセ,オーケストラ・アンサンブル金沢
2009/05/02 20:00- 石川県立音楽堂コンサートホール
1)モーツァルト/協奏交響曲変ホ長調K.364
2)モーツァルト/交響曲第35番ニ長調K.385「ハフナー」
●演奏
戸田弥生(ヴァイオリン*1),ジェラール・コセ(ヴィオラ*2)
井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサート・ミストレス:アビゲイル・ヤング)
Review by 管理人hs

  • 本公演初日のコンサートホール最終公演ということで,前回のメイエさんが登場した時よりは,お客さんの数は少なくなったが,井上さん指揮のOEKの公演の会場では,特に熱さを感じさせる。ホスト役としての,井上さんとOEKのへの期待の大きさを実感
  • ソリストとして登場したヴィオラのジェラール・コセさんは,この日2回目の登場。
  • ヴァイオリンの戸田弥生さんは,福井県出身ということで,LFJKのプレイベントで,福井でOEKと共演を行っている。OEKとの共演も何回か行っています。

■協奏交響曲変ホ長調K.364
  • 第1楽章冒頭から井上さんは元気。オーケストラのクレッシェンドの付け方がダイナミックで,音量のグラデーションを実感させてくれる。
  • 2人のソリストが入ってくると,多彩な表情が出てくるが,この2人の息が本当にぴったり。大きなルバートの部分も「口裏を合わせるように」ぴったりと統一されている。
  • 音色面でも統一感がある。お二人とも単なる美音というよりは,落ち着きを感じさせる湿気と色気があるような音。
  • 日本国内をはじめとして,若手女性ヴァイオリニストが次々登場しているが,特に戸田さんのヴァイオリンからは大人のヴァイオリニストとしての落ち着きを感じた。どちらかというとヴィオラ的な感性のあるヴァイオリンだと思う。そういう意味で,コセさんのヴィオラとの相性が良いのも当然かもしれない。
  • ハモリ方は特に第2楽章で印象的。聞いているうちに「おしどり夫婦」という感じに思えてきた。この楽章の短調のメロディ自体,聞き様によっては,ちょっと演歌っぽいところがあるので(日本人の琴線に触れるという感じ),2つの楽器が交互にメロディを歌っていく様子は,大物演歌歌手の二重唱のように通じるなぁと実感(変な例えで失礼しました)。
  • 前楽章から一転して長調に切り替わる第3楽章ですが,単純に明るくならない。静かな対話のドラマを感じさせる演奏。非常に発想が飛躍するのですが,「お父さん,しあわせになれてよかったですね」「うん,本当によかったぁ」と熱海の海岸あたりで笠智衆と東山千栄子夫婦がしみじみと会話するといったストーリーを勝手に考えてしまいました。
  • お客さんの拍手も盛大で,何回も何回もカーテンコールあり。

■交響曲第35番ニ長調K.385「ハフナー」
  • 岩城さん時代はもちろん,井上さん指揮でも数回聞いているOEK十八番の交響曲
  • この演奏でのティンパニは,昨年のLFJKにも参加されていた菅原淳さんでした。正面奥に座っていたので,遠くから見ると指揮者の井上さんと頭の辺りがシンクロ(?)。お二人が真正面から向き合っている構図がとても面白かった
  • 冒頭から余裕たっぷりの演奏。弦楽器,管楽器ともしっかりと音の美しさを堪能させてくれる。第2楽章も最適のテンポ感で安心して身をまかせられる。「今日も一日ご苦労さん」とOEKから言われているよう。第3楽章の脱力した感じの優雅さが美しいかったのですが,井上さんもちょっとお疲れ気味かなという感じも。
  • 第4楽章も大暴れする感じではなく,基本的にすっきりした音楽の流れを作りながら,時々いたずらっこのように逸脱する面白さのある演奏。終盤部でノックをする動作が入るのはいつもの井上さんならでは(この動作をやるかな?と思って見ていたらやはりやってくれました)
  • この曲は本当によく演奏されているので,細部の違いも耳につくのですが,第2楽章の細かい音の動きが,先日の定期公演で演奏された「軍隊」の時と同じような感じで通常聞くのと少々違っていました。この辺の秘密について聞いてみたいものです。

■備考
  • この公演も114に続いて,テレビ収録を行っていました。恐らく,そのうち北陸朝日放送辺りで放送されるのではないかと思います。
  • 一日目が無事終わりました。お疲れ様でした。

(2009/05/06)