OEKfan > 演奏会レビュー

LFJk2009 熱狂のレビュー・トップページ
ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2009:モーツァルトと仲間たち
【214】アンヌ・ケフェレック,井上道義,オーケストラ・アンサンブル金沢
2009/05/03 17:45- 石川県立音楽堂コンサートホール
1)モーツァルト/交響曲第27番ト長調,K.199
2)モーツァルト/ピアノ協奏曲第27番変ロ長調,K.595
3)(アンコール)曲目不明(多分,バッハの作品)
●演奏
井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートミストレス:アビゲイル・ヤング)*1-2,アンヌ・ケフェレック(ピアノ*2-3)
Review by 管理人hs

  • この日2回目のOEKの公演。ほぼ満席。井上道義さんの衣装は,前回のミサの時とは違い,いつもの燕尾服に。
  • 交響曲とピアノ協奏曲の27番を2つ組み合わせたプログラムというのは,ダジャレのようなお手軽さだが,そういうウィットもまた楽しい。

■交響曲第27番ト長調,K.199
  • OEKは,東京と名古屋でモーツァルトの交響曲の全曲をシリーズで演奏したことはあるが,金沢でこの曲を演奏するのは初めてかもしれない。
  • 第1楽章は,低弦の動きがクリアでホルンの強奏がアクセントになっていた。
  • 第2楽章は,セレナード風で,ひっそりとした空気感が独特の魅力。他の交響曲にない雰囲気を感じた。
  • 第3楽章も他の交響曲にない感じ。「ジュピター」に通じる,フーガを使っているということだが,ちょっととらえどころのない雰囲気。

■ピアノ協奏曲第27番変ロ長調,K.595
  • OEKは,この曲を過去,何回か演奏してきたが,その中でも屈指の名演だったと思う。
  • この曲には,あまりにも浮き世離れした美しさがあるので,私自身,大好きな曲にも関わらず,「もったいなくて(?)」あまりCDでは聞かないようにしてた曲だが,今回の演奏は,私がこの曲に対して持っているイメージどおりの理想的な演奏だった。
  • 第1楽章は,透明な弦楽器の音で開始。テンポは中庸で,穏やかな川がさらさらと流れていくよう。
  • その上に乗ってくるケフェレックさんのピアノもその気分にぴったり。乱暴な音が全くなく,穏やかで暖かで天国的な雰囲気が全曲に渡って持続。聞いているうちにこの世界から抜けたくない,という感覚に。
  • 第2楽章のモノローグも大変デリケート。大変ゆったりしたテンポで,しっとりと演奏されていたが,途中,アドリブ的なフレーズもさらりと入れ,必要最小限の華やかさも付け加えていた。この辺のセンスも抜群。
  • 第3楽章も,何にも束縛されていないような,自由さと自然さを感じさせてくれる音楽の世界を堪能。弱音主体なのだが,しっかりと音楽が伝わって来る。特に感動したのが,カデンツァの後の弦楽器の響き。最後に到達した,この部分の落ち着きのあるデリケートな美しさはを聞けただけで満足。
  • 終演後は,大変盛大な拍手が続き,バッハの曲と思われる深い響きをもったピアノ独奏曲がアンコールで演奏された。

(2009/05/09)