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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2009:モーツァルトと仲間たち
【223】アンドレイ・コロベイニコフ,ウエールズ弦楽三重奏団
2009/05/03 14:15- 石川県立音楽堂邦楽ホール
1)モーツァルト/ピアノ・ソナタ第15番ハ長調,K.545
2)モーツァルト/ピアノ四重奏曲第2番変ホ長調,K.493
●演奏
アンドレイ・コロベイニコフ(ピアノ)
ウエールズ弦楽三重奏団(崎谷直人(ヴァイオリン),原裕子(ヴィオラ),富岡廉太郎(チェロ))*2

Review by 管理人hs

  • ほぼ満席。本公演の1日目は「今年は昨年のような驚異的な混雑ではないな。少し寂しいかも」といったことを思ったりしていたが,この辺りから「これぐらいの余裕(当日,思い付いて行っても何とか入れるかな)の方が良い」と確信し始めた。金沢の場合,やはり,東京のような”都会的な混雑”は,相応しくないですね。
  • 前半は,昨年のLFJKにも登場したアンドレイ・コロベイニコフさんの独奏,後半は,日本の若手弦楽器奏者によるウェールズ弦楽三重奏団との共演。

■ピアノ・ソナタ第15番ハ長調,K.545
  • コロベイニコフさんのピアノの凄さを実感。まだ20代前半の若い人だが,1年前のベートーヴェンの「ハンマークラヴィーア」ソナタ以降,さらに成長していることを実感。
  • ソナチネ・アルバムに収録されている,おなじみの可愛らしい曲から,凄味を感じさせてくれた。
  • 第1楽章から「速い」「軽い」「柔らかい」で一貫。通常は少しダイナミックに演奏することが多い中間部でも音量の変化をほとんど付けず,全曲を均質の音量で弾き通していた。そのことが全く単調に感じられず,むしろ快適な小宇宙のような世界を作っていた。汚い音が全くなく,磨き上げられた,プロのタッチという気がした。
  • 第2楽章も同様に均質な美しい世界。繰り返しをしっかりと行っていたので,平穏さが永遠に続くような雰囲気。ここまで一貫すると,穏やかさを越して,凄みを感じた。第3楽章は,キレの良い弾むテンポ。これもまた見事だった。

■ピアノ四重奏曲第2番変ホ長調,K.493
  • ウェールズ弦楽三重奏団は,石川県が毎年夏に行っているいしかわミュージックアカデミー(IMA)の受講生として参加していた弦楽四重奏団の中の3人からなる団体。
  • 昨年夏のIMAライジングスターコンサートでウェールズ弦楽四重奏団の演奏を聞いた時は,全員が男性奏者だったが,今回はヴィオラ奏者が女性に変更になっていた。
  • 全体的におだやかで大らかな演奏。公演リーフレットに書かれていたとおり「ピアノ協奏曲的」に響くところもあった。
  • ただし,弦楽パートの方は音のバランスはとても良いものの,どこか控えめな感じ。この日聞いた,トリオ・ショーソンの演奏の楽しげな雰囲気と比べると,ちょっと消極的に見えてしまった。
  • コロベイニコフさんの方は前向きで粒立ちの良い音を滑らかに聞かせる。
  • 第2楽章は,内省的で各楽器のハモリ具合が絶妙。第3楽章は軽快でバランス良く,しかも立派さもあるのだが...ちょっと面白みが不足する演奏という感じ。技術的な面よりも,プレゼンテーション的な面で外国の奏者を参考にすべき部分があるような気がした。

■備考
  • 3日目には,富山県の桐朋アカデミーも登場したが,LFJKと教育機関や講習会との連携を持たせるという観点は今後も継続して欲しいと思う。

(2009/05/09)