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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2009:モーツァルトと仲間たち
【224】ポール・メイエ,工藤重典,モディリアーニ弦楽四重奏団
2009/05/03 16:15- 石川県立音楽堂邦楽ホール
1)モーツァルト/フルート四重奏曲第2番ト長調,K.285a
2)モーツァルト/クラリネット五重奏曲イ長調,K.581「シュタードラー」
●演奏
工藤重典(フルート*1),ポール・メイエ(クラリネット*2)
モディリアーニ弦楽四重奏団(フィリップ・ベルナール*2,ロイック・リョー(ヴァイオリン),ローラン・マルフェング(ヴィオラ),フランソワ・キエフェル(チェロ))

Review by 管理人hs

  • 直前のコンサートホールでの公演では,指揮者だったメイエさんが,この公演では,クラリネット奏者として登場。
  • 邦楽ホールで行われた公演の中では,恐らくもっともよく人が入っていたのがこの公演だったと思う。補助席も出ていた。
  • お客さんの人気や八面六臂の活躍ぶりからして,「今回のLFJKのMVPはポール・メイエさん」という感じ。東京会場のテーマであるバッハには,クラリネットの入る曲はないので,その分,金沢公演で大活躍ということになったのかもしれない。

■フルート四重奏曲第2番ト長調,K.285a
  • フルート四重奏曲では,第1番が有名だが,それに比べると軽く短い曲で,2楽章構成。
  • 工藤さんのフルートは,非常に豊かな響きで曲全体を包み込むような包容力があった。第2楽章の演奏もしなやか。

■クラリネット五重奏曲イ長調,K.581「シュタードラー」
  • まず,モディリアーニ弦楽四重奏団の透明な弦で開始。前日での印象どおり,緻密で薄い響きがとても気持ちよい。
  • メイエさんのクラリネットも前日の協奏曲同様,朗々として明るい。弦楽器の音との相性も抜群。全体的にテンポは中庸で小細工の少ないストレートで自然な演奏
  • 第2楽章は,傷が全く無い,ただただ美しい,美の極致のような演奏。第3楽章のメヌエットも,すっきり始まったが,中間部でもの凄い弱音があり,陰影の深さを感じさせてくれた。
  • 第4楽章は,快適なテンポの変奏曲。多彩で鮮やかな展開が見事。テンポの変化も鮮やか。
  • 最後の方で,一旦テンポを落とした後,一気に締めるのがこの曲の聞き所の一つだが,非常に爽快だった。
  • モディリアーニ弦楽四重奏団とメイエさんが一体となった,明るい響きで一貫した演奏だったが,その明るさと鮮やかにコントラストを付けるような弱音の効果が特に素晴らしかった。唐突ではなく,柔らかく変化するので,グラデーションのように感じられた。
  • 緻密なのに神経質過ぎず,堅苦しいところは皆無だが絶妙さを感じさせる演奏ということで,今回の室内楽の演奏会の中でも屈指の名演

■備考
  • クラリネット五重奏曲の演奏前,なぜかメイエさんの座席が足りなかったり,譜面台の場所が間違っていたりしていましたが,メイエさんは,それを逆手に取って,会場の空気をさらりと和ませてくれました。こういうマナーを見ても,「さすがメイエさん!」と実感しました。

(2009/05/09)