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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2009:モーツァルトと仲間たち
【232】トリオ・ショーソン
2009/05/03 12:15- 金沢市アートホール
モーツァルト/ピアノ三重奏曲第7番ト長調,K.564
ハイドン/ピアノ三重奏曲第5番ト短調,Hob.XV-1
(アンコール)曲名不明(バッハの曲か?)
●演奏
トリオ・ショーソン(フィリップ・タレク(ヴァイオリン),アントワーヌ・ランドウスキ(チェロ),ボリス・ド・ラロシュランベール(ピアノ))

Review by 管理人hs

  • フランスの若手奏者3人によるトリオ・ショーソンによる室内楽公演。曲目的には,今回の音楽祭の中でも特に地味だったかもしれない。そのせいもあるのか,小ホール公演にも関わらず,半分ぐらいは空席。
  • ただし,その分,かなりステージに近い場所で聞けたので,楽器の音がダイレクトに伝わって来る,迫力のある演奏を堪能できた。演奏時の表情がよくわかるのも大変面白かった。
  • トリオ・ショーソンのメンバーの演奏中の表情は,とても楽しげだった。どの楽器の音も伸びやかで,明るい曲想にぴったりの親しみやすいキャラクターの3人組ということで,ファンが増えたのではないかと感じた。

■モーツァルト/ピアノ三重奏曲第7番ト長調,K.564
  • モーツァルト最後のピアノ三重奏にも関わらず,自作かどうか疑われている作品ということで,晩年の作品の特有の意味深な雰囲気はなかった。その分,どの楽章の演奏も楽しげで,自在な音の動きや音色の輝きを楽しむことができた。
  • 第2楽章は楽器間で対話をするような面白さがあった。ひそひそ話から始まった後,いろいろな会話を親しい友人同士で展開していくような雰囲気。3楽章のシチリアーノ風のゆれのあるロンドも印象的。
  • 全曲を通じて,特にヴァイオリンとチェロのお二人が,「ハモルのが大好き」という感じで豊かな表情で情感豊かに演奏していたのがとても印象的だった。

■ハイドン/ピアノ三重奏曲第5番ト短調,Hob.XV-1
  • 後半は,モーツァルトではなく,ハイドンの曲だった。テーマが「モーツァルトと仲間たち」ということで選ばれた曲かもしれない。調性が前の曲の「仲間」のようなはト短調という点もモーツァルト的。曲自体もハイドンの曲の方が面白かったかもしれない。
  • 第1楽章はチェロなどが通奏低音風に聞こえ,バロック音楽的な感じがあった。現代性と典雅さがバランス良く合体したような演奏。
  • 第2楽章メヌエットは,楽器の音がピタリと揃っており,突き刺すような悲しみが印象的。
  • 第3楽章はプレスト。しかもト短調ということでモーツァルトの専売特許と思われているような「疾走する悲しみ」の気分を持った楽章。ただし,もっと野生的でハンガリー風といった感じがあるのがやはりハイドンらしい。

  • どちらの曲もマイナーな曲だったがとても楽しめた。特にハイドンの方はピアノ三重奏曲が40曲もあるということで,未発掘の宝庫といったところ。

■備考
  • 比較的,公演時間が短かったこともあり,アンコールが演奏された。ハイドンの最終楽章の元気の良さの続編のような無窮動風の曲。もしかしたら,東京会場のテーマのバッハに関する曲かもしれない。
(2009/05/09)