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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2009:モーツァルトと仲間たち
【311】富山県立高岡商業高校吹奏楽部
2009/05/04 9:45- 石川県立音楽堂コンサートホール
1)倉知竜也/モーツァルト・ファンファーレ(吹奏楽版)
2)スミス/フェスティヴァル・ヴァリエーションズ
3)バーンズ/アリオーソとプレスト
4)池辺晋一郎/アマデウスのピアノがきこえる
●演奏
神田賢ニ*1,2;池辺晋一郎*3指富山県立高岡商業高校吹奏楽部
黒瀬恵(オルガン*4)
司会:池辺晋一郎
Review by 管理人hs

  • LFJK2009最終日の午前中は,家族で吹奏楽の公演を聞いた。
  • 3日間とも,コンサートホールでの”朝一”の公演は全日本吹奏楽コンクールなどで優秀な成績を収めた高校の吹奏楽部の公演。これらだけは,入場料1000円(高校生以下は500円)で「ゼロ歳以上入場可」となっている。この方式はとても良いと思う。
  • 5月2日は東海大学付属高輪台高校,5月3日は天理高校吹奏楽部が登場し,この日は北陸地方の吹奏学部の代表として富山県立高岡商業高校吹奏楽部が登場。どの高校もそうだと思うが,高岡商業の場合,特に女子部員の姿が多かった。
  • 他の2校は,会場に展示されていた公演写真などを見ると,お揃いのブレザーを着て,派手なパフォーマンスを見せるような曲も含んでいたようだが,この日の公演には,ポップス系の曲は入っておらず,比較的シリアスな内容。生徒たちも普通の制服で演奏していた。
  • 司会は,池辺晋一郎さん。「普通の演奏会では,考えられないような時間帯(朝の9:45)の演奏会にこれだけ大勢の方が入ることがまずすごい」とコメントした後,いつもどおりいろいろな薀蓄を交えながらの楽しい進行ぶりを見せてくれた。

■倉知竜也/モーツァルト・ファンファーレ(吹奏楽版)
  • 今年のLFJKでは,エリアイベントなどでの無料公演の最初に短いモーツァルト・メドレーを演奏するのが慣例になっているようで,今回も吹奏楽版の「モーツァルト・ファンファーレ」が演奏された。

■スミス/フェスティヴァル・ヴァリエーションズ
  • 冒頭のホルンのフレーズは「ホルン奏者を困らせるために難しくした」ということだが,見事に決めてくれました。多彩な表情を持った,アメリカ的な曲。
  • 管楽器のみの演奏の持つ,温かみのある響きとエネルギーに満ちた迫力をじっくり味わうことができた。

■バーンズ/アリオーソとプレスト
  • この曲は,アリオーソとプレストというタイトルだが,実質はサクソフォーン協奏曲で,原博巳さんがサクソフォン独奏として登場。
  • 原さんは,1996年の日本管打楽器コンクールで第1位の受賞者で,その後,国内外のオーケストラと共演したり,ソロ・室内楽等で活躍しているサクソフォーン奏者。
  • 初めて聞く曲だったが,前曲同様,大きく盛り上がる,演奏効果の上がる曲だった。

■池辺晋一郎/アマデウスのピアノがきこえる
  • ここまでは,神田賢二先生が指揮をしたが,この曲については,作曲者の池辺さん自身が指揮をした。高校生たちにとっては,大変思い出深い公演になったことだろう。
  • 曲は,1983年にNHKホールからの依頼で作曲されたもの。副題は「モーツァルトのピアノ・ソナタ集による2群の吹奏楽とオルガンのためのコンポジション」ということで,パイプオルガンと2群の吹奏楽という形がオリジナルだが,今回は,1つの吹奏楽団用に直した版で演奏された。
  • 曲はモーツァルトのピアノ・ソナタの中の主題を散りばめたメドレーのような形を取っている。ピアノ・ソナタ第17番の第1楽章のファンファーレ的な第1主題で曲は始まるが(「汽車,汽車,シュッポ,シュッポ...」のようなメロディですね),この主題が,その後も何回も再現されており,全体をまとめていた。
  • 最後の方には,トルコ行進曲のメロディなども出てきて,楽しく盛り上がるが,しっかり引き締まった構成感があるのは,やはり池辺さんならではだと思う。
  • オルガンは,おなじみの黒瀬恵さんが担当。オルガンと吹奏楽は,池辺さんのトークによると「発音原理に共通するものがある」ということで,とても良い取り合わせだった(ちなみに和楽器の笙やハーモニカなども同じ原理。笙のことを"Mouth Organ"と言うそうですが,今度は"笙と吹奏楽のための...”という作品を期待したいと思います)。朝から音楽堂のオルガンを聞けてラッキー,という公演だった。

(2009/05/11)







はっきりと見えませんが,パイプオルガンの蓋(?)が開いています。