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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2009:モーツァルトと仲間たち
【312】仲道郁代,井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢
2009/05/04 12:00- 石川県立音楽堂コンサートホール
1)モーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲
2)モーツァルト/ピアノ協奏曲第21番ハ長調,K.467
●演奏
井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサート・ミストレス:アビゲイル・ヤング)
Review by 管理人hs

  • 井上/OEKによる,期間通算5回目の公演。毎日2公演ずつ行われているが,毎回ソリストが違うのが楽しい。会場は,今回も満席
  • 仲道さんは,2006年秋に行われたシューベルト・フェスティバル(LFJKの前身のようなイベントですね)の時に金沢で公演を行ったが,その時はOEKと共演を行わなかったので(室内楽公演はありましたが),共演するのは久しぶり(多分,1998年の定期公演に登場して以来)。
  • 弦楽器の配置は,LFJK2009を通じて,第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを左右に分ける対向配置だった。コントラバスは上手側。

■歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲
  • 拍手が鳴り終わるか終わらないかのうちに,ティンパニの激しい乱打とともに開始。この辺の格好良さは井上さんならでは。
  • しなやかな弦を中心としたスピード感溢れる演奏。
  • エンディングは演奏会用のコーダが付け加えられたもの(このコーダについては,どれが一般的なのか分からないのですが,あまり聞きなれないものでした)。

■ピアノ協奏曲第21番ハ長調,K.467
(第1楽章)
  • 第1楽章冒頭から低弦がしっかり効いており,熱が篭もった堂々たる演奏。全体に小気味良い行進曲となっており,品の良いお祭り気分を演出。
  • 仲道さんのピアノとOEKは一体感があり,自然な音の流れに乗った演奏。第2主題などでちょっと翳りを見せるあたりのちょっとした揺らぎも魅力的。
  • カデンツァは誰のものが不明だが,ベートーヴェンを思い出させるような,ロマンティクな味を持ったもの。

(第2楽章)
  • まず,透明な弦楽器の演奏が素晴らしい。儚げな雰囲気が,お祭りの終盤の気分とマッチ。
  • 仲道さんのピアノを含め,最適のテンポで淡々と美音が続く。永遠に続いて欲しい時間。
  • 先日の「題名のない音楽会」の中で井上道義さんは,バッハの管弦楽組曲第2番の中のポロネーズについて「時間の進み方が見えるような曲」という面白い表現をされていたが,この楽章についても時間の流れが見えるような浮遊感を感じた。

(第3楽章)
  • 日本を代表するスターピアニストである仲道さんの華やかな雰囲気をしっかりと感じさせてくれる演奏。
  • ちょっと速すぎるかなと思わせるほどのテンポ設定で,装飾的な軽さが特徴。

■備考
  • 私の座席は,2階のバルコニー席が邪魔になり,ステージがほとんど見えなかった。自分自身で選ぶことはまずない席だが,「こういう席もまるのだ」ということが分かった。今回のLFJKの座席はランダムに割り振られていたが,結果として毎回似たような,「悪くない席」になっていた。この公演だけは不運だったとしか言いようがない。
  • 場合によってはクレームの元になりかねないので,「当日席」として残しておいた方が良いのではないかと思った。

(2009/05/11)