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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2009:モーツァルトと仲間たち
【314】菊池洋子,井上道義指揮桐朋アカデミー・オーケストラ
2009/05/04 15:30- 石川県立音楽堂コンサートホール
1)モーツァルト/交響曲第1番変ホ長調K.16
2)モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番ニ短調,K.466
3)(アンコール)倉知竜也/モーツァルト・ファンファーレ(オーケストラ版)
●演奏
井上道義指揮桐朋アカデミー・オーケストラ
菊池洋子(ピアノ*2)
Review by 管理人hs

  • 1995年富山市に開校したオーケストラ奏者育成のための教育機関,桐朋オーケストラ・アカデミーの学生たちによる演奏。少々,意外だが,金沢で公演を行うのは今回が初めてのような気がする。
  • 指揮者の井上道義さん,ソリストの菊池洋子さんも桐朋学園の出身なので,この公演にはぴったりと言える。それにしても井上道義さんは,今回,6回目の登場ということで,本当によく働かれました。

■交響曲第1番変ホ長調K.16
  • 桐朋アカデミー・オーケストラの今回の編成は,OEKとほぼ同じだったが,少々パンチ力,というかずうずうしさのようなものが不足していると感じた。
  • 前日のハイドンの交響曲の時と同様,楽章間に井上さんのトークがアドリブ的に入った。「この曲は,モーツァルトが8歳の時の作品です。8歳の人はいるかな?きっと君にもできるよ」といったやり取りがあったり,第2楽章に最後の交響曲「ジュピター」音型が埋め込まれている不思議さ(モーツァルト自身,最初と最後を意識していたのかと思うと,本当にミステリアスです)を説明。マイクなしでサラリと語っていたので全然音楽の邪魔にならなかった。

■ピアノ協奏曲第20番ニ短調,K.466
  • 菊池さんは,鮮やかな赤系統の衣装で登場。オープニング・コンサートに登場した,地元の中学生ピアニスト,中林理力君が着ていたアマデウスの衣装を思わせる色合い。
  • 桐朋アカデミー・オーケストラの音色は,やはりモーツァルトを演奏し慣れているOEKに比べるとどこかぎこちなさを感じた。演奏の技術的には巧いのだと思うが,響きの密度も少々薄い気がした。ロマン派の大編成の管弦楽曲よりもモーツァルトの演奏の方がこういった面で難しさがあるのかもしれない。
  • 菊池さんのピアノは,大変堂々としており,曖昧さのない輝きを感じさせるような王道を行く演奏。昨年のラ・フォル・ジュルネ金沢での小山実稚恵さんによる「皇帝」の演奏を思い出した。
  • その一方,第2楽章などの弱音では透き通るようなタッチを聞かせてくれた。この楽章も,それほど遅いテンポではなく,推進力を感じさせてくれた。装飾音も入れており,中間部をはじめ,色合いの変化も多彩。
  • 第3楽章は,暗さよりも若々しいエネルギーの発散やノリの良さを感じた。輝きのあるコーダでは,若いオーケストラのエネルギーが放出されるのを感じた。
  • カデンツァは,恐らく,菊池さんが残しているこの曲のCD録音同様,ご自身の作によるものだと思われる。

■備考
  • 演奏後,アンコールとして,すっかりおなじみとなった「モーツァルト・ファンファーレ」が演奏された。途中から井上さんの合図とともに,手拍子に変わり,大いに盛り上がった。
  • 桐朋アカデミーの学生にとっては,大変貴重な経験となったと思う。ラ・フォル・ジュルネ金沢に限らず,これからも連携を強めていって欲しい。

(2009/05/11)