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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2009:モーツァルトと仲間たち
【343】名古屋少年少女合唱団
2009/05/04 12:45- 石川県立音楽堂交流ホール
1)倉知竜也/モーツァルト・ファンファーレ(合唱版)
2)モーツァルト/ミサ・プレヴィスニ長調 K.194
3)(アンコール)モーツァルト/歌劇「魔笛」〜パパパの二重唱
4)(アンコール)メンケン/映画「リトル・マーメイド」〜アンダー・ザ・シー
●演奏
水谷俊二指揮名古屋少年少女合唱団, ピアノ伴奏者名不明
Review by 管理人hs

ラ・フォル・ジュルネ金沢では,空いた時間を利用して,有料公演以外の公演をいろいろと見て回りました。本当に沢山のイベントが同時に行われていることがわかり,改めてすごい音楽祭だと感激しました。そういった数多くの無料公演の中で特に活躍が目立ったのが,名古屋少年少女合唱団でした。JR金沢駅,イベント広場,ホテル日航...ちょっとその辺を通りかかってみると,この合唱団の声が聞こえてくるという感じでした。

最終日は,交流ホールで30分ほどの公演があるということで,聞きに行ってきました。前日までの公演(ちょっと眺めただけですが)の雰囲気から,非常に実力のある団体だということは分かっていたのですが,じっくりと聞いてみて,色々な点で本当にすごい合唱団だと実感しました。

このステージでは,音楽祭のテーマである,「モーツァルト」にちなみ,すっかりお馴染みとなった,モーツァルト・ファンファーレ(合唱版)に続き,モーツァルトの初期の宗教曲,ミサ・プレヴィスニ長調 K.194の全曲が歌われました(オリジナルは管弦楽の伴奏ですが,ここではピアノ伴奏でした)。

まず素晴らしかったのが,この合唱団の指揮者の水谷俊二さんの解説でした。今回は,数曲ごとに簡単な解説を入れながら歌われたのですが,ちょっとした「ミサ曲入門」になっており,大変分かりやすいものでした。宗教曲について,一言で「愛と希望と信仰」を歌ったものという説明されていたのもなるほどと思いました。

さらにすごかったのが,ミサ曲の各曲ごとに,ちがった編成や意図で歌われていた点です。演奏前に,「今回はポリフォニーを意識して,歯車のようになって,元気に歌います」と水谷さんは,語っていましたが,別の言い方をすると,その他の歌い方もできる,ということになります。この合唱団の歌唱の幅広さに対する自信のようにも思えました。

最初のモーツァルト・ファンファーレから,その正確で温かみのある歌は,安定感が抜群で,安心して合唱の世界に浸ることができたのですが,ミサ曲が始まると,各曲ごとにフォーメーションが変えており,そのアイデアの豊富さに感心しました。

第1曲のキリエでは,ラ・フォル・ジュルネ特有の八角形のステージをうまく活用して,フレーズごとに合唱団はいろいろな方角を見て歌っていました。全員が一斉に動くのではなく,部分部分で少しずつ動いていくので,文字通り歯車のような感じでした。その動きには,どこかユーモアや品の良さがあり,聞くだけではなく視覚的にも楽しませてくれました。第2曲のグローリアでは,ソロが入りました。その味のある歌もお見事でした。

その後,水谷さんの簡単な解説が入った後,第3曲のクレドになりました。ここではボーイ・ソプラノ5〜6名がソリストとして登場しました。80名ほどの合唱部分と小編成のアンサンブルを取り混ぜた構成になっていたのも良かったと思いました。その後,サンクトゥス,ベネディクトゥスと続きましたが,全く退屈することはありませんでした。

最後のアニュスデイは,「イエスの慈悲を下さいと訴える歌」で,ここでもソロの歌と合唱とが組み合わさっていました。これは全曲を通じてですが,歌っている時の子供たち(高校生ぐらいの方もいらっしゃいましたが)表情が本当に素晴らしいと思いました。

ここまでの歌ですっかり満足したのですが,さらにこの後がありました。アンコールの1曲目として,歌劇「魔笛」の中のパパゲーノとパパゲーナの二重唱が歌われました。二重唱を合唱で歌ったものですが,これは見ものでした。合唱団員のそれぞれがペアを作ってパパゲーノまたはパパゲーナになり,顔を見合わせながら歌うという光景は壮観でした。「パッパッパッ...」というユーモラスな歌の魅力が数倍にもアップしていました。

ここまでの歌を聞いて,「この合唱団は歌いながらパフォーマンスもできる」ということがよく分かったのですが,アンコールの2曲目では,その本領が発揮されていました。ディズニー映画「リトル・マーメイド」の中の「アンダー・ザ・シー」が歌われたのですが(恐らく,この合唱団の十八番だと思います),かなり複雑な手の動作が付いた振り付けを付いており,「このままディスニー・ランドで歌っても絶対受ける」などと思ってしまいました。

全曲を通じて,子供たちの声の澄んだハーモニーが素晴らしかったのですが,それに加え,自信に満ちたプロと言っても良いような表情(特に中学生,高校生ぐらいの団員の表情)が印象的でした。この交流ホールのステージには30分の時間制限が一応あるのですが,その時間をぴったり使い切ってしまうという姿勢にも感服しました。

PS.私が座っていた座席のすぐ近くに,よく見るとルネ・マルタンさんが座っていました。途中で退席されたのですが,このステージには,感服したのではないかと思います。

PS.その他,交流ホールで行われた公演や,駅周辺で数多く行われた無料公演についてはほとんど聞くことはできなかったのですが,マリンバの公演,吹奏楽の公演など,どれも非常に充実した内容だったようです。「聞ききれないぐらい」ということが非常に贅沢だということを実感しました。

PS.この合唱団の歌ですが,次のようなサイトから音楽配信することで聞くこともできます。有料ですが,一部分を視聴することもできます。
http://mysound.jp/artist/detail/aSXSS/
(2009/05/16)



名古屋少年少女合唱団
のステージから
別におっかけ(?)をしていたわけではないのですが,名古屋少年少女合唱団とは期間中,いろいろな場所で出会いました。写真でご紹介しましょう。

*

5月3日15:30〜ホテル日航金沢1階ロビー・チャペルで行っていた公演


5月3日17:30〜イベント広場で行っていた公演


翌日見てみると..「.好評につき再演」の張り紙が出ていました。


5月4日の交流ホールでの公演です。明るい青の制服が今回のラ・フォル・ジュルネ金沢の「ウィンクするモーツァルト」のポスターの雰囲気とぴったりでした。