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石川フィルハーモニー交響楽団第27回定期演奏会
2010/04/10 金沢市文化ホール
サン=サーンス/歌劇「サムソンとデリラ」〜バレエ音楽「バッカナール」
サン=サーンス/アルジェリア組曲op60
ベートーヴェン/交響曲第6番ヘ長調 op68「田園」
(アンコール)ブラームス/ハンガリー舞曲第6番
●演奏
花本康二指揮石川フィルハーモニー交響楽団
Review by 管理人hs  

この時期恒例の石川フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聞いてきました。市内各所の満開の桜を眺めながら,会場の金沢市文化ホールに向かったのですが,毎年,この演奏会は,桜の満開の時期と重なることが多いので,1年が立つのは速いものだと実感した次第です。

今回は,前半,5月中旬から始る「フランス芸術週間」にちなんで,サン=サーンスの曲が2曲演奏された後,後半にベートーヴェンの「田園」交響曲が演奏されました。後半が「田園」というのは,アマチュア・オーケストラの演奏会としては,意外に珍しいのではないかと思います。

最初に演奏された,バッカナールは,最近では女子フィギュア・スケートの音楽として使われることの多い作品です。冒頭の印象的なオーボエ・ソロはゆったりと演奏されており,非常にエキゾティックでした。続く金管楽器は,「おやっ」という感じだったのですが,ホールの響きがデッドな分,特に打楽器の音が妙に生々しく聞こえ,明快さのある演奏になっていました。

次に演奏された「アルジェリア」組曲は,比較的演奏される機会の少ない作品です。私自身,今回初めて聞いたのですが,いかにも19世紀のフランスのオーケストラ曲という感じの,風景が目に浮かぶような親しみやすい作品でした。4曲からなる組曲ということで,アルジェリア旅行記念に絵はがきを4枚買って帰り,それを後から振り返って眺めているような旅情が漂っていました。

やはりこのホールだと,各楽器のソロになると,ちょっと粗が目立ってしまう部分はあったのですが,特に弦楽器の音がさらりと爽やかで地中海の気分がよく出ていると思いました。4曲の中では,最後の行進曲のシンプルで明快な演奏が印象的でした。颯爽とした金管楽器を中心にとてもまとまりの良い演奏だったと思います。

後半の「田園」交響曲は,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の演奏では,何度も聞いたことはありますが,アマチュア・オーケストラの演奏で聞くのは,今回が初めてのことでした。前半のサン=サーンスよりも編成が小さく,しかも最終楽章が静かに終わるので,ある意味冒険的な選曲でしたが,しっかりとまとまった,充実した演奏だったと思います。OEKの演奏に比べると,多少デコボコした感じはありましたが,途中に出て来る,管楽器のソロなどもしっかりと決まっており,管楽器のための協奏曲的な面白さも出ていました。

今回の演奏は,全曲を通じてじっくりとしたテンポ設定でした。コントラバスが8人もいたのも効果的で,第1楽章冒頭など爽やかなヴァイオリンの響きと好対照を成すような,スケールの大きな響きを作っていました。。

第2楽章も穏やかな演奏で,文字通り「小川のほとり」の気分がありました。楽章最後の木管楽器のソロが絡み合う部分では,特にフルートが良いと思いました。第3楽章は,田舎の楽隊風ということで,ここではオーボエが良い味を出していました。その他の楽器の演奏も含め,全体的に演奏の起伏が大き過ぎず,鮮やか過ぎない演奏で,良い意味で「リアルに田舎風」の演奏になっていたと思いました。

第4楽章の「嵐」の描写は,大変堂々としていました。ティンパニのキレの良い演奏と同時に,ここでもコントラバスの迫力が印象的でした。第5楽章ものどかな気分の漂う,ゆったりとした演奏でした。ここでは「牧歌」には欠かせないホルンの演奏が印象的でした。曲を締める,最後の最後の部分でのミュートのかかった音も見事でした。

後半が「田園」ということで,地味なことは地味でしたが,それでもしっかりとした聞き応えを感じさせてくれたのは立派でした。アンコールでは,ブラームスのハンガリー舞曲第6番が演奏されました。こちらの方もしっかりと演奏されていましたが,やや腰が重いかな,という感じでした。

石川フィルは,5月8日のフランス芸術週間のオープニング・イベントでサン=サーンスの曲ばかりを集めたプログラムを演奏します。今回の定期演奏会の前半で演奏した曲に加え,フランスの声楽家たちとともに,歌劇「サムソンとデリラ」のハイライトを演奏します。石川県で演奏される機会が少ない作品なので,こちらの方にも注目したいと思います。  (2010/04/14)



この日は,日中も花見をしたのですが,夕方,ホールに向かう途中にも花見をしました。演奏後は,市内各地のライトアップもみてきました。
兼六園下の交差点です。
金沢城公園のライトアップの立て看 大手堀付近の桜
金沢市文化ホール前の尾山神社もライトアップ
終演後の尾山神社です。 しいのき迎賓館方面にも向かってみました。
ガラス張りなので,中の人がよく見えます。 石垣のライトアップも見ごたえがありました。


関連写真集


公演のポスターです。


5月8日に行われるサン=サーンスの夕べのポスターも掲示されていました。