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ランチタイムコンサート:オーボエV
2010/04/21 石川県立音楽堂コンサートホール
パウニング/3つのカルトブチュート
パウニング/桜
パウニング/四重奏
プッチーニ(井元透馬編曲)/蝶々夫人ファンタジー
6つのコンセール
プレトリウス/「テレプシコーレ」舞曲集より
(アンコール)アンダーゾン/ワルツィング・キャット
●演奏
オーボエVのメンバー(加納律子,佛田明希子,高山郁子),菱谷沙千子

Review by めの・もっそさん  

オーボエVというのは、加納さんがかつて留学しておられたドイツのカールスルーエ音楽大学の同窓生、もしくは後輩の方で結成したオーボエ・アンサンブルだそうです。そのうち1名(徳山奈美さん)は、もともとスケジュールの関係で出演不可能でしたので、今回は4名でリサイタルという運びになったのそうですが、なんと、今度は吉井瑞穂さんが、例のアイスランド火山噴火の影響で帰国できず、急きょ菱谷沙千子さんという、同じくカールスルーエ音大の後輩で、加納さんのお弟子さんに当たる方に参加していただいたとのことでした。

このように直前までいろいろなことがあったようですが、そんなことは一切感じさせない、非常によく息の合った素敵なアンサンブルでした。まるでタイムスリップして異次元で過ごしたような、不思議で心地ちのよい1時間を過ごせました。

4名のメンバーは皆さんそれぞれに個性的豊かで、お話も菱谷さん以外の3名からそれぞれいただいたのですが、特に加納さんはしっかりとわかりやすいお話のしかたで、この方は本当に心も強く、頭も明晰なんだなと感じました。オーボエ奏者=理性派という先入観があるもので・・・

それにしてもオーボエ4本(途中イングリッシュホルンも入れて)というのは、やはり雅で凛とした雰囲気になりましたね。新しい作品を演じて、過去にベクトルが向いているような響きが少し儚い感じで胸を打ちました。とはいえ、機能的には今風も表現できる、実に表現の幅の大きい楽器だと思います。歴史に生き残っただけのことはありますね。

 最後のアンコール曲(加納さんは「小さなプレゼント」とおっしゃっていましたが)は、有名なワルツィング・キャットでしたが、オーボエの音はたしかに猫の鳴き声に近いものがあるなーと感心しました。おちゃめな猫というより高貴ですました猫に感じでしたので、ペルシャ猫をイメージしました。いきなり加納さんが「犬の鳴きまね」をなさって、それがあまりにお上手だったので驚きました。

*演奏された曲を書いておきます。
  1. グラハム・パウニング「3つのカルトブチュート」
  2. グラハム・パウニング「桜」・・・オーボエVのための作品
  3. グラハム・パウニング「四重奏」・・・4本のイングリッシュホルンのための作品
  4. プッチーニ「蝶々夫人ファンタジー」・・・編曲の井元透馬さんは加納さんと高校(芸高)の同窓だそうです。
  5. 「6つのコンセール」・・・グルースリーヴスなど有名な小品を古楽風につなげた作品集。
  6. ミヒャエル・プレトリウス「テレプシコーレ」舞曲集より・・・ルネサンス時期の作曲家で、小さな舞曲を次々披露していただきました。個人的にこの演奏がオーボエにふさわしく、一番愉しめました。
  7. (アンコール)ルロイ・サンダーゾン「ワルツィング・キャット」
 (2010/04/22)