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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2010:ショパン,ジェネラシオン1810
La Folle Journee de Kanazawa : CHOPIN et la generation 1810
ハノーファー国際コンクール入賞者たち
2010/05/01 北國新聞赤羽ホール
1)ショパン(サラサーテ編曲)/ノクターン変ホ長調op.9-2
2)シマノフスキ/パガニーニの3つのカプリスop.40〜第24番
3)シューマン/3つのロマンスop.94
4)シューマン/ヴァイオリン・ソナタ第1番イ短調op.105
●演奏
ソレンヌ・パイダシ*1,2,クララ=ユミ・カン*3,三浦文彰*4(ヴァイオリン)
松井晃子(ピアノ)
Review by 管理人hs  

夜は赤羽ホールで行われた「ハノーファー国際コンクールの入賞者たち」を聴いてきました。最難関と言われているこのヴァイオリンの国際コンクールに,昨年入賞した,三浦文彰(優勝),クララ=ユミ・カン(2位),ソレンヌ・パイダシ(入賞)の3人の若手ヴァイオリニストが次々登場し,三者三様の素晴らしい演奏を聞かせてくれました。この3人がどういう経緯でラ・フォル・ジュルネ金沢に参加することになったのか不明ですが,クララ=ユミ・カンさんは,昨年いしかわミュージックアカデミー(IMA)に参加し,IMA賞を受賞されていますので,そのつながりがあったのかもしれません。

まず,最初にフランスのソレンヌ・パイダシさんが登場しました(違うチラシには,ペダッシと書いてありました。Paidassiというのが原綴です。どちらが一般的なのか分かりませんが,配布されたリーフレットどおりパイダシと記します)。パイダシさんの演奏からは,どこか「古き良き時代のヨーロッパ」の残り香が伝わって来るようでした。これは演奏された曲がサラサーテ編曲によるショパンのノクターンだったことにもよるのですが,常に微笑みをたたえたような暖かみを持っていました。繊細なヴィブラートがかかった音には上品な甘さがあり,リラックスした気分に誘ってくれました。最後の方のトリルも絶品でした。

パイダシさんは,コンクールでは入賞にとどまったのですが,その演奏の魅力は,コンクールでの尺度では計りきれないのだと思います。ヴァイオリンを高く持ち上げて演奏する姿も優雅で,聴衆にアピールする「聞かせる演奏」のできる,スター性のある奏者だと思いました。

もう1曲シマノフスキの作品が演奏されました。こちらは,パガニーニのカプリースをヴァイオリンとピアノ用に編曲したもので,お馴染みの第24番の主題を使った変奏曲のような形になっていました(プログラムには,「3つのカプリス」と書かれてましたが,そのうちの1曲だけだった気がします)。非常に安定したテクニックで難曲を鮮やかに聞かせてくれましたが,1曲目のショパン同様,メカニカルな冷たさはなく,伸びやかさを感じさせてくれました。

次に登場した韓国系ドイツ人のクララ=ユミ・カンさんは,昨年のいしかわミュージック・アカデミー(IMA)でIMA音楽賞を受賞し,その勢いのままハノーファーのコンクールに出場し,見事2位を受賞された方です。昨年のIMAの受講生発表会の演奏もたまたま聴いており,その時から「上手すぎる生徒」という印象は持っていたのですが,コンクールに入賞して,さらに自信を身につけてこられて気がします。

ステージに入ってきたときから,堂々とした落ち着きが感じられました。クララ=ユミさんは,黒髪に黒いドレスでしたので,最初に登場したパイダシさんの金髪と白い肌と外見的にも好対照でした。「のだめ」的に言うと「黒王女」と「白王女」の競演という趣きがありました。

演奏も対照的で,心憎いほど落ち着いた完成された美しさのある演奏でした。第2楽章での暗い情感もしっかりとコントロールされており,惚れ惚れとするほど傷のない演奏を聞かせてくれました。ただし,シューマンの曲といえば,ドロドロ,ウツウツとした暗さが魅力でもあり,とっつきにくさでもあります。そういう部分がすっきり処理されていた分,ちょっとソツがなさ過ぎるかな,と贅沢なことを思ったりもしてしまいました。

最後に登場した,三浦文彰さんは,このコンクールに16歳で優勝し,ニュース等でも話題になった注目のヴァイオリニストです。今回生で演奏を聴いてみて,まず,ヴァイオリンの音自体に迫力があるのが素晴らしいと思いました。楽器が大変よく鳴っており,一見地味なシューマンのヴァイオリン・ソナタを,全く退屈させることなく聞かせてくれました。

第2楽章はさらに地味な楽章ですが,ここでもスケールの大きさを感じさせてくれました。第3楽章は,力とエネルギーに溢れ,若い奏者ならではのシューマンを聞かせてくれました。三浦さんとOEKは,来年4月の金聖響さん指揮の定期公演で,共演することになっています。不思議な吸引力を持った魅力的な演奏を再度楽しませてくれるのではないか,と今から期待しています。

この演奏会ですが,期待の若手ばかり3人が登場するガラ・コンサート風の内容でしたので,進行役を1人入れ,インタビューなどを交えても面白かった気がします。大変充実した内容だったのにも関わらず,やけにあっさりと終わってしまったのが少々寂しい気がしました。少なくとも,終演後,三浦さんだけではなく,3人とも再度登場してもらいたい気がしました。

この3人は,LFJK本祭などにも登場する予定と思いますが,どなたも聞き逃せない奏者です。名前を見かけたら是非,お聞きになってください。



開演まで時間があったので,金沢21世紀美術館に寄ってきました。
ヤン・ファーブル×舟越桂展のポスター 21世紀美術館のゴールデンウィーク企画のポスターです。 野外にも店がいくつか出店していました。
ここにもショパンがいました。21美と音楽堂をつなぐレンタル自転車もありました。 展覧会の入口 ガラスの文字が床に映っていたのが面白かったので撮影
こちらは日本語表記
(2010/05/03)

演奏会場の光景


↑赤羽ホール外観


↑おなじみのロゴ


↑入口のポスター


↑翌日のショパンの日と吹奏楽の日のポスター


↑金沢城の櫓の復元のキャンペーン用の模型が飾ってありました。


↑終演後。すっかり暗くなっていました。


↑近くのLawsonに貼ってあった電光掲示板