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石川県ピアノ協会第12回若い芽のコンサート
2011年4月10日(日) 14:30〜 石川県文教会館ホール
1)ショパン/スケルツォ第1番ロ短調Op.20
2)シューベルト/ピアノ・ソナタ第13番イ長調,D.644,op.120〜第1,3楽章
3)バッハ,J.S.(ブゾーニ編曲)/シャコンヌ BWV1004
4)ラフマニノフ/楽興の時 Op.16 〜第3番,第4番
5)シューベルト/ピアノ・ソナタ第19番ハ短調 D958
●演奏
阿部慧聖*1 ,寺西由佳*2, 小池晃代*3, 澤田愛美*4, 山田ゆかり*5(ピアノ)
Review by 管理人hs  

ご存知のとおり,今年のラ・フォル・ジュルネ金沢のテーマの作曲家はシューベルトです。そのピアノ・ソナタ第19番が全曲演奏されるということで,この曲を目当てに,石川県ピアノ協会の若い芽のコンサートを聞いてきました。

私自身,この「若い芽のコンサート」を聞くのは初めてのことです。今回登場したのは5人のピアニストでしたが,その最後に,「ゲスト」として登場した山田ゆかりさんが,シューベルトのピアノ・ソナタ第19番を演奏しました。山田さんも十分に若手ですが,最初に登場した4人が「若い芽」ということになります。

今回の「若い芽」の4人がどういう基準で選ばれたのかはよく分からなかったのですが,いずれも大学で音楽を専攻している学生,または卒業生でした。

最初に登場した阿部慧聖さんは,今回の出演者の中の唯一の男性でした。大学に在籍中の方ということで今回の登場した5人の中では最年少でしたが,非常に長身の方ということもあり演奏全体に力がありました。冒頭部分の集中力に満ちた音をはじめ,非常にクリアな音を聞かせてくれました。曲全体の表情や流れがやや硬いかなという気はしましたが,聞いていて気持ちがスカッとするような演奏でした。ショパンのスケルツォ第1番を聞くと,「ショパン・イヤー」だった昨年のラ・フォル・ジュルネ金沢を思い出しますが,1年経つのは速いものだと実感しました。

次の寺西由佳さんの演奏した曲は,シューベルトのソナタということで,今年のラ・フォル・ジュルネ金沢のテーマを先取りする形になります。先にピアノ・ソナタ第19番のことを書きましたが,この第13番のソナタも大好きな曲です。実演では意外に演奏されない曲ですが,あまりにもメロディが美しいので,聞いていてせつなくなるような曲です。今回はそのうちの第1楽章,第3楽章が演奏されました。演奏の方は,とても素直な感じでしたが,やや表情がノッペリとしており,その点で,少々物足りなさを感じました。この曲については,ちょっとためらうようなデリカシーのようなものが欲しいと思いました。

続いてブゾーニ編曲によるバッハのシャコンヌが演奏されました。この編曲版も一度実演で聞いてみたかったものです。オリジナルは無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番の中の長大な1つの楽章ですが,ピアノで聞くとまた違った味があります小池晃代さんの演奏は,いかにもバッハの音楽らしい渋く落ち着いたムードで始まりました。ただし,次第にブゾーニ的な華麗で複雑な展開が優勢になってくると,やはり一筋縄では行かない感じでした。ヴァイオリン独奏版も難曲ですが,それに負けないぐらいの難曲だなぁと思わせる演奏でした。

続いて澤田愛美さんの演奏で,ラフマニノフの「楽興の時」の中の2つの曲が演奏されました。まず演奏された第3番は「アンダンテ・カンタービレ」,続いて演奏された第4番は「プレスト」ということで,緩急の対比を付けたドラマを感じることができました。個人的な印象ですが,ここまでの4人の中では,音・表現ともにいちばん良く練られていたと思います。非常に聞き応えのある演奏でした。ラフマニノフらしい,ロシア的な,鬱々とした感じも出ており,上質の音楽をしっかりと楽しませてくれました。

その後,てっきり休憩が入るもの,とばかり思っていたのですが,そのまま引き続いて,ゲストの山田ゆかりさんの演奏が始まりました。ここまでで30分以上経過しており,その後,シューベルトの大曲が続きますので,本当はここで一息つきたいところでした。

山田さんの演奏した,シューベルトのピアノ・ソナタ第19番は,ハ短調ということで,どうしてもベートーヴェンのピアノ・ソナタを思い出してしまいます。山田さんの演奏からもその気分が伝わってきました。4つある楽章間のインターバルをほとんど取っていなかったこともあり,演奏全体の緊密感がしっかりと持続していました。

第1楽章は,力んだところはないのに,ガッチリとまとまった充実感がありました。シリアスだけれども,シューベルトの音楽らしい流れの良さもありました。第2楽章は,落ち着きのある深い音楽でした。息の深さをじっくりと聞かせてくれました。

第3楽章は,比較的明るい楽章なのですが,その中にほの暗さが漂っていました。しなやかな音の流れと相まって,大変魅力的な気分を作っていました。第4楽章は,延々と続くギャロップ風の楽章です。十分に弾んではいるけれども,浮ついた感じのない演奏で,他の楽章とのバランスがとても良いと思いました。

随所でシューベルトらしい歌の魅力を楽しませてくれながら,曲全体としては,ピリっと辛口といった気分が持続していました。本格的なソナタらしいまとまりの良さのある,一本筋の通った立派な演奏でした。

石川県ピアノ協会の「若い芽のコンサート」を聞くのは初めてでしたが,いろいろな方の演奏の聞き比べと同時に,シューベルトのソナタ全曲のような大曲をじっくり楽しめるのは良いと思いました。ただし,今回,お客さんの入りはやや悪かったですね。そのことも含め,演奏会全体に華やかさを感じさせてくれるような「演出」や「工夫」がもう少しあっても良いと思いました。 (2011/04/12)



金沢城周辺を散策
桜は満開ではありませんでしたが,絶好の散歩日和ということで,演奏会の前後,浅野川〜金沢城周辺を自転車で走り回ってみました。
梅の橋から浅野川を望む

浅野川右岸の桜

浅野川大橋から上流を望む

大手堀の桜

白鳥路。いつのまにか砂利道でなくなっていました。

兼六園下交差点付近から石川門を望む

石川橋の下から

沈床園から石川門を望む

ライトアップの看板
しいのき迎賓館横の緑地では,「乙女の金沢 春ららら市」というイベントをやっていました。
青空の下の古本市というのは良いですね。ついつい文庫本を2冊購入(200円) NYANCAFE-BOOKSさんの店頭。この袋は何となく良さげでした。.
あうん堂さん前では活字を1個100円で売っていました。

ついつい2つ購入。「演」と「書」です。

陶器類も売っていました。
しいのき迎賓館方面

辻口パテシエのお菓子。この方はいつも腕を組んでますね。

桜の形のシールをガラスに張っていました。
さくらめぐり というイベントだったようです。

金沢城の石垣方向のどこか上品な桜

金沢市役所前の桜

西外惣構堀付近の桜

この日は金沢市議会議員の選挙でした。

夕方です。沈床園には,花見の宴会を始めようとする学生グループが集まっていました。

こんなところにもラ・フォル・ジュルネ金沢

兼六園紺屋坂も花見モード

関連写真集


公演のポスター



久しぶりに石川県文教会館に行ったので,建物の写真も撮影してきました。


石川県ピアノ協会では,設立40年を記念して,今年から2年に1度,「いしかわ国際ピアノコンクール」を行うとのことです。その要綱があったので,もらってきました。

開催日程は,2011年8月28日と29日。石川県立音楽堂コンサートホールで行われます。

詳細は次のページをご覧ください。

http://piano-ishikawa.jp/outline_j.pdf