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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2011:ウィーンのシューベルト
2011/05/01 本多の森ホール

Review by 管理人hs  
ラ・フォル・ジュルネ金沢(LFJK)2011 3日目も金沢市市街地でのイベントが充実していました。ただし,前日,さんざん動きまわって体力的に消耗していたので(本公演用に体力を温存する必要もあるので),この日は「吹奏楽の日」の午後の部に集中しました。

実は,出かける前までは,半分まで「吹奏楽の日」に参加し,途中から石川県文教会館で行われる「ピアノの日」に移動しようと思っていたのですが,あまりにも面白かったので,移動するのは止め,13:30〜16:00まで(休憩なし)吹奏楽に浸ることにしました。

このイベントは,もともとは昨年同様,しいのき迎賓館裏の石の広場で行われる予定だったのですが,今回は,天候不良のため(雨というより風が強かったですね),本多の森ホールでの開催に変更になりました。ちなみに,LFJKの公演が本多の森ホールで行われるのは,今回が初めてということになります。

ただし,ホールでの演奏に変更になったことは,ある面では,良かったと思います。イベントを盛り上げるためにチラシ等に載せる「絵」としては,昨年のような「晴天の下の吹奏楽」の方が良いのですが,ホール内の方で行う方がイベントとしての盛り上がりは大きくなる気がしました。盛り上がりの前提となるのは,お客さんの数ですが,結構たくさんのお客さんが入っていました。1000人以上は入っていたと思います。

今回登場したのは,登場順に,小松市立高校吹奏楽部,石川県警察音楽隊,小松明峰高校吹奏楽部,百萬石ウィンドオーケストラ,陸上自衛隊中央音楽隊でした。各バンドが約30分ずつ,それぞれトークを入れながら演奏するというもので,それぞれのキャラをしっかり楽しめました。



街なかコンサート:吹奏楽の日(午後の部) 13:30〜 本多の森ホール

I.小松市立高校吹奏楽部
三國浩平/ウィーン・ファンファーレ
となりのトトロメドレー
小椋桂/愛燦燦
村井邦彦/翼をください
シュトラウス,J.I/ラデツキー行進曲
ジンギスカン
●演奏
木村有孝指揮小松市立高等学校吹奏楽部

進行役の女性アナウンサーが,いきなり「金沢市立高校の皆さんです」と紹介してしまい,「ガクッ」となったのですが,すぐにステージに戻ってきて「申し訳ありません...」と訂正を入れていました。そのことでかえって印象が強くなった気がします。

最初に演奏されたLFJK公式ファンファーレの「ウィーン・ファンファーレ」の作曲者の三國浩平さんは,小松市立高校の出身とのことです。今回,会場にいらっしゃっており,演奏後にスピーチをされました。自分の曲を後輩が演奏するというのは大変嬉しかったのではないかと思います。

「愛燦燦」でサックスやトランペットのソロが入ったり,「翼をください」では合唱が入ったりしましたが,こういう多彩な構成は,最近の高校生バンドではすっかり定番のようですね。ラデツキー行進曲に続き,ジンギスカンがアンコール的に演奏され,気持ち良く締めてくれました。
小松市立高校OBの三國さんがステージに登場しました。 「翼をください」のステージ



II.石川県警察音楽隊
シュランメル/行進曲「ウィーンはいつもウィーン」
中村八大/上を向いて歩こう
シュトラウス,J.I/ラデツキー行進曲
槙原敬之/世界に一つだけの花
●演奏
石川県警察音楽隊


高校生バンドに比べると編成は小さく,指揮者を含めても28人編成とのことでした。また,県警音楽隊の皆さんは,男性隊員はすべて警察官とのことで,なかなか全員集まっての練習ができないのが悩みとのことです。

今回は,おなじみの曲を軽快に聞かせてくれました。

衣装は,男性隊員が明るい青,女性隊員がピンクのミニスカートということで,どこか「ゴレンジャー(古くてすみません)」という雰囲気でした。こういう明快な分かりやすさは,子供たちには喜ばれるのではないかと思います。

このユニフォームは目立ちますね。



III.石川県立小松明峰高等学校吹奏楽部
真島俊夫/Welcome
シュランメル/行進曲「ウィーンはいつもウィーン」
中村八大/上を向いて歩こう
リトル・マーメイド・メドレー
小さな世界
和泉宏隆(真島俊夫編曲)/宝島
「シェリーに口づけ」などのメドレー
●演奏
斉藤忠直指揮石川県立小松明峰高等学校吹奏楽部


小松明峰高校のステージは,すっかり演奏し慣れている,華やかなものでした。オープニングのWelcomeからパフォーマンス全開の楽しいステージでした。演奏された曲は,他の団体とダブっていましたが(特に「ウィーンはいつもウィーン」は,コンクールの課題曲のように何回も出てきました),それぞれに個性があったので,退屈することはありませんでした。

明峰の演奏は,過去のLFJKでも聞いてきましたが,ホールの中でじっくり聞くと,演奏と振付が一体となった「音楽の楽しませ方」が熟練の域(?)に達していることが良く分かりました。お得意の「小さな世界」「宝島」など,部員を総動員してのステージで,鮮やかに締めてくれました。

ちなみに,小松明峰高校ですが,5月28日と29日に2日連続で定期演奏会を行うとのことです。それぞれ,小松市公会堂と石川県立音楽堂コンサートホールで行うということで,これもまたすごいことだと思います。

1曲目から派手なステージでした。 お馴染みの「宝島」もいつもながら楽しいステージでした。
最後の曲では,1年生部員が客席に散らばり,あの手,この手で盛り上げてくれました。



IV.百萬石ウィンドオーケストラ
シュランメル/行進曲「ウィーンはいつもウィーン」
フチーク/フローレンティナー行進曲
ジャパニーズグラフィティY.日本レコード大賞,青春の70年代
会いたかった
●演奏
油野絢一郎指揮百萬石ウィンドオーケストラ


社会人バンドの代表として,百萬石ウィンドオーケストラが登場しました。ここでも「課題曲」の「ウィーンはいつもウィーン」で始まりました。「フローレンティナ行進曲」は,昨年のLFJKで金沢市立工業高校吹奏楽部が演奏していたのを思い出しました。重量感のある社会人らしい(?)演奏で,いい曲だなと思いました。

このバンドのメンバーは,10代から50代と幅広く,そのことが選曲にも反映していました。年代的に「ジャパニーズグラフィティY.日本レコード大賞,青春の70年代」が,私にはピッタリでした。最近では,歌謡曲という言葉自体あまり聞かなくなりましたが,この70年代は歌謡曲の黄金時代でしたね。UFO,魅せられて,シクラメンのかほり,襟裳岬...と聞いて,懐かしくなったお客さんも多かったと思います。UFOの最初の部分で,最後列のメンバーが,控えめに「UFO↑(手を上に)」とやっていたのが最高でした。

最後は,AKB48の「会いたかった」で締められましたが,これも運動会で頑張るお父さんみたくて最高でした。それにしても,この「会いたかった」は近年特に大人気ですね。吹奏楽の演奏会に行くたびに聞いている気がします。
指揮者の油野さん。この日は,なぜか袖口が気になっていました。



V.陸上自衛隊中央音楽隊
スーザ/美中の美
シュトラウス,J.II/ポルカ「雷鳴と電光」
アンダーソン/トランペット吹きの休日
アンダーソン/クラリネット・キャンディ
アンダーソン/ホームストレッチ
エルナンデス/エル・クンバンチェロ
●演奏
武田晃指揮陸上自衛隊中央音楽隊

陸上自衛隊中央音楽隊の演奏は,前日に聞いたばかりだったのですが,昨日とは全く違う選曲で,気持ちの良いマーチやアップテンポの曲を中心とした楽しい演奏を聞かせてくれました。今回登場した吹奏楽バンドはどれも水準は高かったのですが,やはり陸上自衛隊中央音楽隊の演奏には,常にリズムにしっかりとした芯と腰が据わった安心感がありました。各パートごとの音のまとまりも素晴らしいと思いました。

このステージでは,女性メンバーが進行を担当されていました。「雷鳴と電光」については,「ころころと変わる金沢の天候のよう」と見事なコメントを付けていました。

「トランペット吹きの休日」は,トランペット奏者3名がステージ前方に出てきての演奏となりました。音がきっちり揃っており,ほれぼれとする爽快さでした(この曲を聞くといつも,「トランペット吹きは休日でもトランペットを吹くんだなぁ」と感心してしまいます。)。平然と演奏しているのが実に格好良いところです。

「クラリネット・キャンディ」という曲は,初めて聞いた曲だったのですが,調べてみるとこれも「トランペット吹き...」同様にルロイ・アンダーソンの曲でした。クラリネットパートの見事な技の連続で,盛大な拍手を受けていました。

「ホームストレッチ」は,つい最近,石川県ジュニア・オーケストラの演奏で聞いたことがありますが,これもアンダーソンらしい楽しい曲です。陸上自衛隊中央音楽隊の皆さんの仕事として,「競馬場でのファンファーレの演奏」というのがあるとのことですが,ゴール前での疾走を思わせる楽しい演奏でした。

最後にエル・クンバンチェロが演奏されたのですが,ここで素晴らしいコラボがありました。途中,パーカッションなどがアドリブなどを入れる部分で,出番の終わった小松明峰高校吹奏楽部の生徒が,ステージの袖から沸いて出てきて,超強力な盛り上げ隊となりました。明峰の吹奏楽部員は控えの1年生も含めると100名もいるとのことで(この数字もすごい),会場はすごいことになりました。

昨日とは違い,この日は上着なしでした。 「トランペット吹きの休日」の演奏 最後の得るクンバンチェロでは,小松明峰高校の生徒も加わり,大盛り上がり。

本多の森ホールは,クラシック音楽の演奏会には向かないのですが,こういうパフォーマンスを行う場合,ワンフロアなので好都合です。一気に客席の通路が明峰のトレーナーを着た生徒たちに占拠されました。この演出は,演奏直前に決まった,ほとんどアドリブのようなアイデアだったそうですが,大成功でした。陸上自衛隊の人たちも大変楽しげ演奏していました。


吹奏楽を野外で演奏するか,屋内で演奏するかは一長一短ですが,今回の「吹奏楽の日」公演に参加して,文字通り,「祭典」になっていたのがとても良かったと思います。この連休付近は,県内の高校の吹奏楽部の定期演奏会も集中している「吹奏楽シーズン」なのですが,冬の間に技と芸(?)を磨き,「吹奏楽の日」で一気に発散というのが,石川県の新たな伝統になっても面白いかも,と実感しました。

PS. 今回の「吹奏楽の日」ですが,午前中も行われており,次の団体が登場しました。

  • 金沢桜丘高校吹奏楽部
  • 金沢市消防音楽隊吹奏楽部
  • NOTOマーチングバンド
  • 小松高校吹奏楽部
  • 金沢市立工業高校吹奏楽部

高校生バンドの方は,昨年の北陸吹奏楽コンクールでの金賞受賞候ばかりですね。午後同様の楽しい演奏の連続だったのではないかと思います。

# この日は,写真撮影をしている方も多かったので,私の方も撮影してしまいました。公開に問題があればご連絡ください。
(2011/05/08)





ホール入口の立看板


本多の森ホールの入口


ホール内の様子。