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石川フィルハーモニー交響楽団第29回定期演奏会
2012/04/14 金沢市文化ホール

1)ベートーヴェン/レオノーレ序曲第3番ハ長調 op.72
2)ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第3番ハ短調 op.37
3)ドヴォルザーク/交響曲第8番ト長調 op.88
4)(アンコール)ドヴォルザーク/弦楽セレナード～第１楽章
●演奏
花本康二指揮石川フィルハーモニー交響楽団
松田薫子(ピアノ*2

Review by 管理人ｈｓ

毎年，４月上旬の週末には石川フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会が行われます。時期的に，金沢市の桜の開花時期と重なることが多く，今年も「花見がてら」聞きに行ってきました。

今回のプログラムは，前半がベートーヴェンの作品２曲，後半がドヴォルザークの交響曲第８番というものでした。ベートーヴェンの方は，さすがにOEKの演奏に比べると，どうしても完成度や洗練味に不足するのを感じてしまったのですが（これはホールの違いも大きいと思います），後半のドヴォルザークの方は，金管楽器が爽快に鳴る，明快な演奏で，曲の良さがストレートに伝わってきました。

最初に演奏されたレオノーレ序曲第3番は，もったいぶらない感じで始まったのですが，やや慎重な演奏に感じました。弦楽器が速い動きを聞かせた後，最後の盛り上がりに突入していく辺りは鮮やかでしたが，全体にやや燃焼度不足に思えました。舞台裏で演奏するトランペットは，１回目と２回目で演奏位置が変わっており，ライブならではの面白さを実感できました。フルートのソロも鮮やかでした。

前半２曲目のピアノ協奏曲第３番は，松田薫子さんが独奏ピアノでした。松田さんのピアノは，よくまとまっていましたが，音自体が軽く，「らしくない」と感じてしまいました。第２楽章では，オーケストラと一体になって素朴な暖かみを感じさせてくれましたが，メロディがシンプルなだけに，譜面をなぞっているのが分かるような感じで，こなれていない印象を受けました。終楽章は，ピアノとオーケストラを合わせるのが大変そうな部分がありました。こういったスリリングな部分を通り抜けて，最後は爽快に締めてくれました。

後半はドヴォルザークの交響曲第８番は，前半に比べると，自信たっぷりの演奏で，聞きごたえがありました。今回の指揮は花本康二さんでしたが，実は，私自身，花本さん指揮でこの曲を聞くのは２回目のことです。調べてみると，花本さんは，1983年の金沢大学フィルのサマーコンサートでこの曲を指揮されています。さすがに演奏内容までは覚えていませんが，実演でこの曲を聞いたのはこの時が最初でしたので，この演奏を聞きに行ったことはしっかり覚えています。少し前のことだと思っていたのに，いつの間にか30年近く前...というのが恐ろしいのですが，この日の演奏を聞きながら，「原点」に返ったような懐かしさを感じました。

その時も良い演奏だなと思った記憶はあるのですが，今回も立派な演奏でした。第1楽章冒頭，すっきりとスムーズに始まった後，意欲が見えるようなキビキビとしたムードで曲が進んで行きました。木管楽器もとても良かったと思います。第2楽章もフルート，クラリネットをはじめ各楽器のバランスが良く，表情豊かに進んで行きました。途中，トランペットが爽快に盛り上げてくれたのも印象的でした，

第3楽章は，スラブ舞曲風のメロディが魅力的ですが，さすがにこういう部分をセンス良く聞かせるのは難しいですね。中間部はヴァイオリンの音が沸き上がってくるような感じがあり，曲想の変化を楽しむことができました。

第４楽章はトランペットの元気の良いファンファーレに続いて，スピード感のある変奏を聞かせてくれました。チェロによる主題の呈示部から深刻ぶったところがなく，推進力を感じました。途中長いソロのあるフルートは，もう少し音量があっても良いかなと思いましたが，とても鮮やかに聞かせてくれました。コーダも充実していました。金管楽器が元気良すぎという気もしましたが，明快かつ爽快に全曲を締めてくれました。

アンコールでは，ドヴォルザークの弦楽セレナードの中の最初の楽章（この曲は最終楽章もほぼ同じなのでどちらか分からないのですが）がしっとりと演奏されました。癒しの気分たっぷりの暖かい演奏でした。演奏会後は，その気分を残したまま，夜桜を眺めながら帰りました。

今回の演奏会では，今後演奏して欲しい曲についてのアンケート用紙が含まれていました。ついつい無責任に（？）大規模な曲を書いてしまいたくなりますが，来年はどういう曲が演奏されるのでしょうか？桜と共に，このことも楽しみの一つです。

終演後は夜桜見物


石川門と桜	もう少し近くから。私のカメラだと奇麗に写せませんでした。

(2012/04/21)