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金沢大学フィルハーモニー管弦楽団第37回サマーコンサート
2012年6月23日(土) 18:30〜 石川県立音楽堂コンサートホール
1)ドヴォルザーク/スラヴ舞曲〜1,6,10,8番
2)ドヴォルザーク/交響曲第6番ニ長調,op.60
3)(アンコール)ドヴォルザーク/ユーモレスク
阿部慧聖*1;橋爪赳之*2,3指揮金沢大学フィルハーモニー管弦楽団
Review by 管理人hs  

毎年6月は,地元のアマチュア・オーケストラの演奏会シーズンです。この日も創設40年記念の金沢交響楽団の演奏会と金沢大学フィルの演奏会がダブってしまい,どちかに行こうか迷ったのですが,ドヴォルザークの交響曲第6番という実演では滅多に演奏されない曲を果敢に取り上げた,金沢大学フィルのサマーコンサートに行くことにしました。

この日は,前半もドヴォルザークのスラヴ舞曲の抜粋でしたので,オール・ドヴォルザーク・プログラムということになります。サマーコンサートでは,いつも学生指揮者が指揮をするのですが,どの曲も”鳴り”が良く,しかも,びしっと引き締まっていました。この日の会場は,石川県立音楽堂コンサートホールということで,特に気持ちの良いオーケストラのサウンドを楽しむことができました。

前半のスラヴ舞曲集は,抜粋された4曲の選曲と配列が良く,ちょっとした交響曲を聞くような感覚で楽しむことができました。ただし,全般にやや堅い印象はありました。どの曲もテンポ感がきっちりとし過ぎていて,曲の流れが悪い気がしました。テンポの遅い曲だと,その辺がちょっと垢ぬけていない感じに思えました。スラヴ舞曲は,もともと田舎風の舞曲なので,その点ではイメージに合っているのですが,自然に流動感するような感じ(井上道義さん指揮による滑らかな演奏のイメージなどを思い浮かべてしまいました)が欲しいと思いました。

とはいえ,第1番での弦楽器の高音がキリキリと鳴るような感じとか,第8番でのドーンと音が飛び込んでくるような感じとか,若い人たちの演奏らしい表現も楽しむことができました。

後半のドヴォルザークの交響曲第6番は,生演奏で聞くのは初めてでした。恐らく,金沢で演奏されるのは今回が初めてではないかと思います(きちんと調べていないのですが)。以前は,ドヴォルザークの交響曲と言えば,「新世界から」というのが定番でしたが,あまりにも演奏され過ぎているので,第8番,第7番と遡り(第8番ももうすっかり定番曲ですね),第6番まで来たというところでしょうか。

曲目解説などによると,ブラームスの交響曲の影響を受けた作品と書かれており,どこか折衷的なところはありましたが,曲の作りは堂々としており,交響曲らしい交響曲だと思いました。ただし,「ちょっと長いかな」と感じてしまいました。

曲が始まると「おお,何かブラームスの交響曲第2番に気分が似ているな」という気分で牧歌的な気分になったのですが(どちらもニ長調で,3拍子ですね),段々と長さを感じてしまいました。これは,やはり曲の問題(聞きなれていないだけ?)なのかもしれませんが,演奏の方も,前半同様,ちょっとまじめ過ぎるかな,という気がしました。この辺は,マイナーな曲を取り上げる難しさなのかもしれません。

第2楽章もまじめな感じでしたが,素朴な曲想に合っていると思いました。第3楽章以降は,かなり華やかな感じになります。音楽にも勢いがあり,両楽章ともコーダは充実していました。特に第4楽章の最後の部分は,オーケストラが特によく鳴っており,輝きのある響きを楽しむことができました。

全曲を通じて聞いてみると,特に第1楽章と第4楽章の最初の方などは,ブラームスの交響曲第2番に雰囲気が似ており,比較をしてみると,「やはりブラームスの2番の方が一枚上手かなぁ」ということになってしまいそうです。ただし,日頃聞くことのできない曲を聞かせてくれたことには大きな意義があったと思います。ブラームスと比較できること自体に面白みを感じました。今回の選曲については,オーケストラの中でも賛否両論はあったと思いますが,オーケストラ音楽のファンとしては,大いに歓迎したいと思います。

アンコールでは,お馴染みのユーモレスクが演奏されました。曲が始まった途端,ホッとした感じになり,会場全体も,脱力した雰囲気になりました。ただし...個人的には,もう少し「懐かしさ」を感じたかったところです。どちらかというとテンションの低い演奏と感じられたのがちょっと残念でした。

今回の公演パンフレットの裏面には,1月の定期演奏会の情報が早くも掲載されていましたが(小松長生さん指揮です),この公演に向け,さらに演奏を磨いていって欲しいと思います。次回は何の曲を演奏してくれるのかも楽しみです。 (2012/06/27)

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音楽堂前の立看板


18:30の開演直前ですが,夏至の時期なので,なかなか日が沈みません。