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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2012:ロシアの祭典
2012年5月5日(金・祝)
本公演3日目

Review by 管理人hs  
ラ・フォル・ジュルネ金沢(LFJK)2012最終日は,同志社交響楽団,京都市交響楽団,そして,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の3つのオーケストラが登場しました。私は,この3団体の演奏を中心に鑑賞しましたので,「今日は一日オーケストラの日」とった感じになりました。この日は,天気の方も回復し,演奏されたオーケストラ曲も,チャイコフスキー、ムソルグスキー、ストラヴィンスキーなどのおなじみの名曲が並び,さらに小曽根真さんも登場しましたので,音楽祭のエンディングに相応しい一日となりました。クロージングコンサートでは,チャイコフスキーの「派手なあの曲」が演奏され,お客さんとOEKが一体となった,LFJKならではの暖かな盛り上がりもありました。



【311】9:30〜 石川県立音楽堂コンサートホール
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調op.64
●演奏
現田茂夫指揮同志社交響楽団


朝9:30からの演奏ということで(疲れがたまっていたこともあり)、行こうかどうか少々迷ったのですが、ここ数年、他県の大学オーケストラによる公演をずっと聞いてきましたので、聞きに行くことにしました。それとやはり、チャイコフスキーの5番を聞かないわけにはいかないですね。

同志社交響楽団は、同志社大学、同志社女子大学を中心としたメンバーからなる、非常に伝統のある団体です。今回の演奏も非常に安定感のある演奏を聞かせてくれました。現田さんのテンポ設定も落ち着きのあるもので、オーケストラをしっかりとゴージャスに鳴らしてくれまあした。弦楽器のしなやかな響き、トゥッティの部分の引き締まった響きなど申し分のない響きを作っていました。各楽器のソロではちょっと気になる部分はありましたが、「ノープロブレム」だったと思います。

楽章の区切り方ですが、第1楽章と第2楽章、第3楽章と第4楽章をそれぞれ連続的に演奏していました。そのことによって、曲のスケール感がさらに増していたように感じました。第4楽章は特に堂々とした演奏で、力感たっぷりのティンパニを核に見事なクライマックスを築いていました。この部分では、現田さんは、あまり振り過ぎず、音楽を滑らかに流していましたが、最後の最後の部分では、今度は非常にエネルギッシュに棒を振り、メリハリのある音楽を作っていました。見事な手綱さばきでした。



【312】11:15〜 石川県立音楽堂コンサートホール
ボロディン/交響詩「中央アジアの草原にて」
プロコフィエフ/交響曲第1番ニ長調 op.25「古典」
ストラヴィンスキー/組曲「火の鳥」(1919年版)
●演奏
大友直人指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:サイモン・ブレンディス)


続いては、大友直人さん指揮のOEKです。大友さんがOEKを指揮するのは、久しぶりのことです。相変わらず、大きく包み込むような余裕のある指揮ぶりで、微笑みがこぼれるような幸福感を感じさせてくれました。

最初に演奏された「中央アジアの草原にて」は、隊商が近づいてきて遠ざかる様子を描いたおなじみの描写音楽ですが、実演で聞く機会は少ないですね。管楽器奏者たちのソロを交えつつ、穏やかな一日の時間の流れを感じさせてくれるような演奏でした。

次の古典交響曲は、OEKが何度も何度も演奏してきた曲ですが、「ロシア音楽」特集ならば、演奏しないわけにはいかない作品だと思います。大友さんの指揮だと、冷たく、どぎつい感じにはなりません。どこか、温かいウィットを感じさせてくれるような演奏で、安心して聞くことができました。この曲はフルートが大活躍しますが、岡本さんがいつもどおり爽やかな音を聞かせてくれました。

最後に演奏された「火の鳥」は、OEKが演奏するのは、今回が初めてだと思います。実は、この公演は、この曲を目当てに聞きに来ました。室内オーケストラが演奏する場合、編成的にどうかな?と思ったのですが、今回、コントラバスを4人に増強していたこともあり、迫力に不足する部分はありませんでした。静から動への切り替えが鮮やかで、トゥッティのジャン(この曲の中には何回かポイントとなる「ジャン」がありますね)という響きがしっかり引き締まっていたり、OEKらしさのある「火の鳥」になっていました。

この曲を生で聞く機会のも久しぶりなのですが、オーケストレーションがとても面白いと思いました。冒頭の低音の響きには、コントラバスとバスドラムが合わさっているのが分かったり、「見て分かる」部分がいろいろありました。弦楽器のフラジオレット、加納さんのオーボエの美しさ、「子守歌」の部分での柳浦さんのファゴットの味わい深さ、「魔王カスチェイの踊り」でのシロフォンやトロンボーンの生き生きした演奏...しっかりと曲の面白さを味わうことができました。

最後のクライマックスの「ジャン」の音も力感があると同時に大変マイルドで心地よく感じました。



【313】13:00〜 石川県立音楽堂コンサートホール

チャイコフスキー/バレエ組曲「眠りの森の美女」〜ワルツ
チャイコフスキー/バレエ組曲「くるみ割り人形」〜行進曲,こうぺい糖の精の踊り,トレパック,あし笛の踊り,花のワルツ
チャイコフスキー/バレエ組曲「白鳥の湖」〜情景,アダージョ,フィナーレ
●演奏
大友直人指揮京都市交響楽団


引き続いて大友直人さんの指揮ですが、今度はオーケストラが京都市交響楽団に変わりました。以前、金沢歌劇座が金沢市観光会館だった時代に、OEKの定期公演に京都市交響楽団が登場したことがありましたが、金沢で公演を行うのはそれ以来のことかもしれませんね。

演奏された曲はチャイコフスキーの3大バレエセレクションでした。45分という制限時間があるので、聞いているうちに「これも聞きたい、あれも聞きたい」という感じになりましたが、それぐらいの方が良いのかもしれないですね。チャイコフスキーのオーケストラ音楽のエッセンスを楽しむことができました。

京都市交響楽団の演奏ですが、オーケストラの音にしっかりとした芯があり、大変聞きごたえがありました。全般にスピーディで滑らかな演奏が多かったのですが、浮ついた感じにはならず、オーケストラの響きの美しさを堪能させてくれました。

「くるみ割り人形」組曲の抜粋では、管楽器が活躍する曲が続きます。どの曲の演奏もとても鮮やかで、華やかさがありました。LFJKのガイドブックのプロフィール欄には「金管楽器には定評がある」と書いてありましたが、なるほどその通りだと思いました。

もちろん弦楽器も素晴らしく、「白鳥の湖」の「アダージョ」でのヴァイオリンやチェロのソロは、じっくりと聞かせてくれました。特に濃厚なロマンを感じさせるようなヴァイオリン・ソロは聞きごたえ十分でした。個人的には、この曲の中間部に出てくる「タタッタタタ、タタッタタタ...」というフルートの合いの手のリズムの繰り返しがなぜか大好きで、音を聞いているだけで、バレエの舞台を見たくなってしまいました。

最後の「フィナーレ」も大変よくオーケストラが鳴っていました。ホルンの勇壮な響きを中心に、充実のクライマックスを聞かせてくれました。抜粋で聞くと、「いきなりクライマックス」という感じではありますが、それでもジワーと感動がわき上がってくるのは、チャイコフスキーの音楽の素晴らしさ、そして、大友さん指揮京響の演奏の素晴らしさだと思いました。



【314】14:45〜 石川県立音楽堂コンサートホール

1)チャイコフスキー/弦楽セレナード ハ長調 op.48
2)ショスタコーヴィチ/ピアノ協奏曲第1番ハ短調 op.35
●演奏
井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:サイモン・ブレンディス),ロマン・ルルー(トランペット)*2,小曽根真(ピアノ)*2


この時間帯になると、音楽堂の入口付近は大変な人だかりになっていました。リハーサルが遅くなったこともありますが、昨日、天候が悪かった分、最終日の午後に人が一気に集中していたのかもしれません。
開場前です。コンサートホール下は,もの凄いことになっていました。

この井上/OEKによる公演が、音楽祭全体の中で最も多くのお客さんを集めていたのではないかと思います。LFJK名物の「ステージキャスト席」も登場し(今回のステージキャスト席は特に演奏者に近かったので迫力満点だったと思います)、お祭りムード最高潮という感じになっていました。
ステージキャスト席です。

チャイコフスキーの弦楽セレナードは、井上さんとOEKが一体になったような見事な演奏でした。OEKは、井上さんの流れるような指揮の動作にピタリと合った、流麗な演奏を聞かせてくれました。中間の静かな楽章でも、繊細でどこか艶やかな表情をもった演奏をしっかりと聞かせてくれました。最終楽章の躍動感あふれる演奏を聞きながら、井上さんは精神的にも体力的にも本当に若いなぁ改めて思いました。

第1楽章が終わった後、盛大な拍手が入ったのはご愛嬌といったところでしたが、井上さんもお客さんも大満足の演奏だったと思います。

後半に演奏された、ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番も、OEKが頻繁に演奏している曲です。今回は井上さんと意気投合しているジャズ・ピアニストの小曽根真さんとの共演ということで、いつもにも増してノリの良い演奏になっていました。第1楽章から大変激しく、速い演奏でした。

トランペットは、ロマン・ルルーさんでした。ルルーさんは、小曽根さんのすぐ隣、井上さんのすぐ前で演奏されていました。ブルース風になる第2楽章など、瑞々しい音を聞かせてくれました。第4楽章は特に大胆な演奏でした。ピアノとトランペットとオーケストラが追いかけっこをしているうちに収拾がつかなくなり、暴走してジャズ風になってしまうような楽しい演奏でした。途中、ガツンとピアノが不協和音を入れる部分もとても強烈でした。

これまで小曽根さんと井上/OEKは何曲か共演をしてきましたが、今回の演奏がいちばん面白かった気がします。この曲を初めて聞いた人は、はじめからこういう曲なんだ、と違和感なく楽しんだのではないかと思いました。それほど、ジャズ風のアドリブがしっくりと曲の流れに収まっていました。

         
        
小曽根さんのサイン会は何と屋外で行っていました。→



【343】15:00〜15:45 石川県立音楽堂交流ホール
歌おう!ロシア民謡(2)
●演奏
オーケストラ・アンサンブル金沢合唱団,いずみGBクラブ,もりのみやこ合唱団,白山山麓男性合唱団ners,石川県音楽文化協会特別合唱団,片町メンズクラブ


次の公演まで時間があったので、交流ホールに行ってみたところ、地元の合唱団が次々と登場して、ロシア民謡を歌う、というステージをやっていました。ちょうど、最後の片町メンズクラブのステージでしたが、こだわりの「赤い」譜面を持っての歌唱でした。こういうステージを見ていると、「一緒に歌ってみたくなるな」と思っていたら、司会の安藤常光さんが、「最後にみなさんご一緒に、カチューシャを歌いましょう」と呼びかけてくれました。

最近、「カチューシャ」と言えば、AKB48の「everyday、カチューシャ」ですが、今回のLFJKの場合は、 さすがに「りんごの花ほころび、川面にかすみたち」の方ですね。この文語調の歌詞が、歌っていて心地よく感じます。



【315】16:45〜 石川県立音楽堂コンサートホール

グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
ムソルグスキー(ラヴェル編曲)/組曲「展覧会の絵」
●演奏
井上道義指揮京都市交響楽団


この日、4回目のオーケストラ公演は、井上道義さん指揮の京都市交響楽団による「展覧会の絵」でした。この曲もLFJKには、外せない作品です。以前、井上さんは、京響の音楽監督でしたので、今回の「金沢での再会」は双方にとって感慨深いものがあったかもしれません。大友直人さん指揮の時同様、この公演でも京都市交響楽団の素晴らしさが光っていました。

最初に演奏された「ルスランとリュドミラ」序曲は、ムラヴィンスキーもびっくりというぐらいの超高速の演奏でした。井上さん指揮では、1年前の大震災直後に仙台フィルとOEKが合同演奏で行ったこの曲の演奏を思い出しますが、今回の演奏はお祭り気分にぴったりの元気のある演奏でした。

「展覧会の絵」では、冒頭のトランペットのソロにまず聞き惚れました。この音で、曲全体のトーンが決まったように、どの曲もスカッとした響きを聞かせてくれました。暗く粘着するような部分はなく、明るく気持ちの良い青空を思わせるような演奏となっていました。

トランペットの演奏では、「サミュエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」の部分に連符が続く難所がありますが、この部分も実に鮮やかに演奏していました。「ブイドロ」では、トロンボーン奏者の方が楽器を持ち替えて(ユーフォニウム?)主旋律を演奏されていましたが、これもとても良い音でした。その他、「古い城」のアルト・サックス、「殻をつけたひよこのバレエ」のフルートなど、どれも楽しませてくれました。

「バーバ・ヤガーの小屋」から「キエフの大門」にかけては、これらの管楽器の爽快なサウンドを中心として、クリアで率直な盛り上がりを聞かせてくれました。この演奏を聞きながら、京都市交響楽団さんには、LFJKの常連オーケストラになって欲しいものだと思いました。



【324】18:00〜 石川県立音楽堂邦楽ホール
スクリャービン最後のリサイタル
スクリャービン/前奏曲変ニ長調op.35-1
スクリャービン/前奏曲変ロ長調op.35-2
スクリャービン/4つの前奏曲op.37
スクリャービン/前奏曲ト長調op.39-3
スクリャービン/マズルカop.25-4
スクリャービン/練習曲変ロ短調op.8-7
スクリャービン/ワルツ変イ長調op.38
スクリャービン/ピアノソナタ第3番嬰ヘ短調op.23
スクリャービン/ニュアンスop.56-3
スクリャービン/やつれの舞曲op.51-4
スクリャービン/前奏曲op.74-4
スクリャービン/前奏曲op.74-2
スクリャービン/2つの舞曲op.73
スクリャービン/不思議op.63-2
スクリャービン/ピアノソナタ第4番嬰ヘ長調op.30
(アンコール)ドビッシー/ベルガマスク組曲〜月の光
●演奏
ジャン=クロード・ペヌティエ(ピアノ)


クロージングコンサートまで時間があったので、ジャン=クロード・ペヌティエさんによる「スクリャービン最後のリサイタル」を邦楽ホールで聞いてきました。この公演は、LFJKにしては例外的に、当初から演奏時間は1時間以上とアナウンスされていた公演です(ポゴレリッチさんの公演も1時間ほどありましたが...)。

演奏曲目はスクリャービンの作品ばかりでした。ショパン風の作品から始まった後、だんだんと神秘主義的な怪しげな雰囲気に変わっていくのですが、疲れがたまっていたこともあり、段々とどの曲も同じに聞こえてきてしまいました。やはり、ピアノの単独演奏で、休憩なしで(拍手も間に入りませんでした)1時間以上というのはしんどいですね、

この公演については、やはり単独の公演として、途中に休憩を入れて、文字通り「リサイタル」としてじっくりと聞いてみたかったな、と感じました。



【クロージングコンサート】19:00〜 石川県立音楽堂交流ホール
1)ボルガの舟歌
2)大きなショール
3)はるかな道(悲しき天使)
4)2人のダンス
5)ポーリュシカポーレ
6)ハチャトゥリアン/バレエ音楽「仮面舞踏会」〜ワルツ
7)チャイコフスキー/歌劇「オルレアンの乙女」〜森よ,さようなら
8)(アンコール)ビゼー/歌劇「カルメン」〜ハバネラ
9)チャイコフスキー/大序曲「1812年」
●演奏
カピタン・ロシア民族アンサンブル*1-5, オーケストラ・アンサンブル金沢合唱団*5
ミリヤーナ・ニコリッチ(メゾ・ソプラノ)*7-8
井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:サイモン・ブレンディス),金沢大学フィルハーモニー管弦楽団金管楽器奏者*6-9


いよいよ最後のコンサートまで来ました。このクロージングコンサートは、昨年は井上道義さんとOEKは出演しなかったのですが、やはり、LFJKの締めにはOEKが登場する方が盛り上がります。ステージを取り囲むように客席があるステージですので、”年に1度、OEKとファンが一体になれる場”としての「期待」が定着してきている気がします。井上さんは「ラ・フォル・ジュルネ金沢の特徴は何ですか?」と尋ねられたとき、「OEKがあることです」と答えていましたが、まさにそのとおりで、こういう地元オーケストラを”かぶりつき”で囲むエンディングのあるラ・フォル・ジュルネは、金沢だけだと思います。それと、この交流ホールだとお客さん側にも自然と一体感が作りやすく、何をするにしても盛り上がります。

クロージングコンサート準備中。交流ホールの壁がどんどん取り払われていきます。 開演前ですが,かなりのお客さんが既に入っていました。
和の座席はこの辺でした。
終演後

今年はメゾ・ソプラノのミリヤーナ・ニコリッチさんやカピタン・ロシア民族アンサンブルもゲストで登場し、「熱狂のお祭り」を楽しく振り返ることができました。

カピタン・ロシア民族アンサンブルのステージでは、音楽堂前で演奏していた曲と同じようなパフォーマンスが演奏された後、最後にOEK合唱団との共演になりました。こういう共演もお祭りならではだと思います。「はるかな道」として歌われた曲は、どこかで聞いたことがあるメロディだなぁと思いながら聞いていたのですが、昔、「悲しき天使」としてヒットした曲だと思い出しました。

続いて井上道義さんが「場つなぎ」で登場しました。今回のLFJKでは、OEKが短い時間で仕上げた、プロコフィエフのシンフォニエッタの演奏に「感動した」と語っていたのが印象的でした。この公演は聞き逃したので、是非、何かの機会で再演して欲しいものです。このところ、井上さんは、新聞に連載記事を書かれているせいもあるのか、発する言葉の一つ一つに味わいがあります。この時言われていた「今しかできないことをやろう」という言葉も、身にしみました。時間芸術に携わっている音楽家ならではの言葉だと思います。

OEKメンバーが入ってきて、最初に演奏されたのが、ハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」のワルツでした。この曲の前にも井上さんは何か味わい深いことを言われていたのですが...忘れてしまいました。とても重ーいワルツでした。ちなみに私の座っていた場所は、ホルンの後ろで、ワルツだと「ウンパッパッ」の「パッパッ」ばかりが聞こえてきて、これはこれで新鮮な響きでした。

続いて、ニコリッチさんが登場し、チャイコフスキーの歌劇「オルレアンの乙女」の中の「森よ,さようなら」が歌われました。今回、ニコリッチさんの声を聞いたのはこの時が最初だったのですが、まさに、「本物の声」という感じでした。比較して申し訳ないのですが、カピタン・ロシア民族アンサンブルの方の声は、交流ホールの中だと、向きが変わると非常に聞こえにくくなりました。ニコリッチさんの方は、どちらの方角に向っていてはっきり聞こえてきました。さすがだと思いました。

鳴りやまぬ拍手に応えて歌われたのが、「カルメン」の中の「ハバネラ」でした。実は、OEKは、今年の秋、ニコリッチさんを主役に迎えて「カルメン」を上演します。そのPRの意味もあったのではないかと思います。ニコリッチさんは、かなり上背のある方で、カルメンに相応しい強さと美しさを持った方です。歌いながら、井上さん、コンサートマスターのブレンディスさん(井上さんと似たタイプ?ですが)に続き、お客さんまで次々と誘惑をしていき、会場は大いに盛り上がりました。じっと見つめられた最前列のお客さんは、後から汗を拭いていましたが、確かにニコリッチさんに見つめられると「逃げられない」という感じになりそうです。

最後に演奏された「1812年」は、この公演のお楽しみでした。OEKが単独でこの曲を演奏するのも、初めてかもしれません。終盤のクライマックスでは、テクノロジー(シンセサイザードラム?)を駆使して、大砲と鐘の音を鳴らし、さらにエンディングでは、交流ホールの2階部分に潜んでいた金沢大学フィルの金管別動部隊がバンダで加わり、ホール内はさらに盛り上がりました。今年のクロージングコンサートは、これまででいちばん充実した内容だったように思いました。

今年のラ・フォル・ジュルネ金沢もこれで終わりましたが、さらに金沢市民への定着度が高まった実感を持ちました。井上道義さんとオーケストラ・アンサンブル金沢、そして、スタッフの皆様には心から感謝をしたいと思います。


音楽祭終了後の音楽堂入口です。名残を惜しむ人が大勢いました。「1812年」を聞いたせいか、花火の後のような感じもしました。
(2012/05/12)



この日は,絶好のLFJK日和














金沢市街に向かうまちバスもにぎわっていました。


写真もいっぱいに。




実は,午後から頭痛がしてきてのですが,


生ビールを飲んだら治りました(本当)。




家族を放置していたので...お土産を買って行きました。