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ふだん着ティータイムコンサートVol.16
2013年6月9日(日)14:00〜 金沢市民芸術村


子供のためのコンサート 14:00〜 オープンスペース(PIT3)
シュトラウス,J./ポルカ「狩り」
ドラえもんの歌
アンダーソン/ワルツィング・キャット
アンダーソン/シンコペーテッド・クロック
恒例,1分間指揮者コーナー(ラデツキー行進曲,ベートーヴェン/交響曲第5番〜第1楽章)
みんな歌おう(ビリーブ Believe)
●演奏
オーケストラ・アンサンブル金沢のメンバー(コンサート・マスター:松井直),司会:柳浦慎史

■室内楽コンサート 15:10〜 オープンスペース(PIT4)
1)久石譲/ジブリ・メドレー(「となりのトトロ」「天空の城ラピュタ」「魔女の宅急便」「崖の上のポニョ」の音楽から)
2)ハイドン/弦楽四重奏曲変ホ長調op.33-3「冗談」〜第4楽章
3)モーツァルト/ファゴットとチェロのためのソナタ
4)ダンツィ/木管五重奏曲変ロ長調 op.56-1
5)シンスティン/トリスティッキー
6)久石譲/映画「菊次郎の夏」〜サマー
7)ロッケンガンプ/アフリカン・ブルース
8)ホーリフ/スウィング・キングズ
9)葉加瀬太郎/情熱大陸
10)バッハ,J.S./無伴奏チェロ組曲第3番BWV1009〜ブレー
11)ボッケリーニ/弦楽五重奏曲op.135〜メヌエット
12)ベートーヴェン/弦楽四重奏曲ハ長調op.59-3「ラズモフスキー第3番」〜第4楽章
13)レノン&マッカートニー(すぎやまこういち編曲)/エリノア・リグビー
14)レノン&マッカートニー(すぎやまこういち編曲)/ロング・アンド・ワインディングロード
15)レノン&マッカートニー(すぎやまこういち編曲)/レット・イット・ビー
16)レノン&マッカートニー(すぎやまこういち編曲)/イエスタディ
17)レノン&マッカートニー(すぎやまこういち編曲)/オブラディ・オブラダ
●演奏
松井直*12,原三千代*12,坂本久仁雄*13-17,トロイ・グーキンズ*11,13-17,若松みなみ*1-2,ヴォーン・ヒューズ*1-2,11(ヴァイオリン),石黒靖典*12-17,古宮山由利*1-2,11(ヴィオラ),大澤明*1-2,10-17,早川寛*3,11(チェロ),今野淳(コントラバス*13-17),加納律子(オーボエ*4),岡本えり子(フルート*4),木藤みき(クラリネット4,*13-17),柳浦慎史*4,12-17,渡邉聖子*3(ファゴット),金星眞(ホルン*4,12-17),渡邉昭夫,平松智子,城田絵里子(打楽器*5-9)

Review by 管理人hs  

毎年恒例のオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)メンバーの企画・運営による「ふだん着ティータイムコンサート」を金沢市民芸術村で聞いてきました。このコンサートも今回で16回目となります。音楽堂楽友会や芸術村のボランティアの協力による運営もスムーズで,本当に間近で演奏するOEKメンバーの演奏を楽しむことができました。

前半の子どものためのコンサートはこのような雰囲気でした。



この距離感は芸術村ならではですね。演奏された曲は,シュトラウスのポルカ「狩り」で元気よく始まった後(司会の柳浦慎史さんによる「ピストル2発」入り),ルロイ・アンダーソンの曲やテレビ・アニメの曲など,親しみやすい曲が続きました。

定番の楽器紹介コーナーの時に,弦楽合奏で「ドラえもんの歌」が演奏されましたが,これがとても爽やかでした。オープンスペースの窓の外には芝生が広がっているのですが,その気分にぴったりでした。



続いて恒例の1分間指揮者コーナーがありました。以前に比べると大変活発に手を挙げる子供たちが多かったと思います。手は上げてみたものの,前に出てきてインタビューを受けると「音楽は好きでない」とか「大したことなかった」と答えたりするのもいかにも子供らしいですね。いずれにしても一生の思い出になったのではないかと思います。

最後に「ビリーブ Believe」を皆で歌いました。この曲は,学校の教科書に載っているようで,子どもたちはみんな,メロディを知っているようでした。柳浦さんが順番にマイクを回すと,元気よく歌う子どもの声が聞こえてきたりして,とても良い雰囲気の中,このコーナーは終わりました

休憩時間は屋外の芝生の上でボール遊びをしたり,池で水遊びをしたりする親子連れの姿が目立ち,いつもの演奏会と違うのどかな風景が広がっていました。



オープンスペースの上の方では,OEKメンバーやボランティアメンバーがお茶や飲み物のサービスをしており,こちらも賑わっていました。



後半はミュージック工房でいろいろな編成の室内楽が演奏されました。以前よりはやや演奏時間が短くなったのですが,こちらの方は,次の写真のとおり,「かぶりつき」の至近距離でOEKメンバーの演奏を楽しめました。



今回の選曲は,スタジオジブリのアニメの曲,ハイドンやベートーヴェンの弦楽四重奏曲,ダンツィの管楽アンサンブルなど,どの年代の人にも楽しめるような「よくできた」構成になっていました。

スタジオジブリの曲については,外国人の方も喜んで聞いていました。そのうちに久石さんの作品についても,「世界的な古典」になっていくのかもしれませんね。ハイドンの弦楽四重奏「冗談」は,最後の終わり方が独特で,途切れ途切れに演奏した後,フッと終わってしまうという曲です。考えてみると,いつ終わったのか分からない「現代音楽」のパロディのようでもあるな,と思ったりしました。

モーツァルトのファゴットとチェロのためのソナタは,まず,こういう編成の曲自体があったことを初めて知りました。渡邉聖子さんの解説によると,伊丹十三監督の映画「タンポポ」の中で使われているとのことです。一見地味な曲ですが,どういう感じで使われているのが是非見てみたいと思います(マーラーのアダージェットを使っていたのは覚えているのですが)。

ダンツィの木管五重奏曲は過去何回か聞いたことがありますが,こういうスペースで聞くととてもくっきりと音が聞こえてきて迫力がありますね。

休憩後は,まず渡邉昭夫さんを中心としたパーカッションのステージでした。



小太鼓3台による「トリスティッキー」(以前別の演奏会でも聞いたことがあります),久石譲のサマー(これも古典化していますね)の後,「アフリカン・ブルース」と言う曲が演奏されました。これは本来はもう少し楽器が必要な曲らしいのですが,この日はそれを逆手に取って,マリンバ奏者の足に鈴を付けて演奏するという,曲芸的な演奏を楽しませてくれました。手はでマリンバを叩きながら,足で一定のリズムを刻むというだけで大変だと思いますが,途中で平松さんと城田さんが高音部と低音部の位置を交替しており,歩きながら鈴の音を聞かせるという面白いパフォーマンスも見せてくれました。

その後のボディパーカッションだけの曲では,手拍子,太腿叩きだけではなく,いわゆる「腹鼓」(?)なども出てきました(少々痛そうでしたが)。おなじみの「情熱大陸」の演奏でこのコーナーを終わりましたが(この曲もクラシックのレパートリーとして違和感はない感じですね),大いに盛り上がりました。

その後,チェロの大澤さんの独奏でバッハの無伴奏チェロ組曲第3番のブレーが演奏されました。アンサンブルの曲が続く中で良いアクセントになっていました。

ボッケリーニのメヌエットは,正真正銘のオリジナルの弦楽五重奏編成で演奏されました。ヴァイオリンのトロイ・グーキンズさんが主旋律を演奏することが多かったのですが,音がコロコロと転がるような感じで,小さな子どもが戯れているような光景を想像しながら聞いてしまいました(先ほどの「子供のためのコンサート」の影響かもしれません)。

ベートーヴェンのラズモフスキー第3番の最終楽章は,5月以降,俳優の西村雅彦さんと全国各地で演奏しているトーク入りの室内楽公演でも演奏されている曲です。金沢公演は5月11日に行われましたが,その時を彷彿とさせる聞きごたえのある演奏でした(ただし,この日の第2ヴァイオリンは,原三千代さんでした)。

最後のコーナーは,先日,安永徹さんとの室内楽公演で聞いたばかりの八重奏の編成で(全く同じ編成でした),ビートルズの曲が演奏されました。以前のこのコンサートでも,すぎやまこういち編曲によるビートルズの曲が演奏されたことがありますが,このコンサートを締めるのに相応しい聞きごたえと親しみやすさがありました。各曲ごとに主旋律を担当する楽器があるのも良いですね(ホルン,ヴィオラ,クラリネットなど)。聞いているお客さんは奏者に対して親近感を持つことができるので,この「ふだん着」コンサートにはぴったりの選曲だと思いました。今回演奏された曲以外にも,すぎやまさん編曲の曲はあるようなので,一度,まとめて聞いてみたいものです。

最後の方の曲目紹介の時にチェロの大澤さんが語っていましたが,今回のコンサートでは演奏会の最後の方でも,「かぶりつき」の席(相撲で言うところの砂かぶりの席ですね)にも大勢人が残っており,例年にも増して盛り上がったようです。今回の演奏会を機会に,OEKメンバーに親しみを感じる人がさらに増えたのではないかと思います。
(2013/06/15)