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ART_Cafe@尾張町 クラシックコンサート
2013年8月9日(金) 19:00〜 尾張町町民文化館

Review by 管理人hs  

立秋を過ぎ,暦の上ではDecember...ならぬ秋なのですが,金沢でも,このところ夏本番の暑さが続いています。日中は動く気力もなかったのですが,夕方からは日差しも弱くなってきたので,前の日から浅野川周辺で始まった,かなざわ燈涼会2013関連のミニコンサートを聞きに,尾張町町民文化館に行ってきました。

私の場合,野外でもどこでも,金沢市内の目新しい場所で演奏を行うという情報が入ると行ってみて聞きたくなります。今回,Art_Cafe@尾張町という企画の一環で演奏の行われた尾張町町民文化館もそういう場所でした。入口は次のような雰囲気で,元々は銀行だったようです。



中は意外に広く,リサイタルや室内楽ならば十分に行えます。壁面にはモリ川ヒロトーさんによる金沢の四季の風景を撮影した映像が投影されており,文字通り「Art_Cafe」の雰囲気でした。



コンサートは8月9日と10日の2日連続で行われました。9日の方は,ソプラノの直江学美さんとピアノの長野良子さんが登場しました。飲み物を飲みながら演奏を聞けるようになっており,私は塩サイダー(珠洲市の名物のようです)を注文してみました。


演奏会は次のようなプログラムでは前半は西洋の歌曲,後半は日本の歌曲という構成でした。この日は紙のプログラムの配布はなかったのですが,曲目を後で思い出したいという人もあったと思うので,用意しておいて欲しかったと思います(さらに贅沢をいうならば,ワンドリンク付きでも良かったと思います)。

1)ヘンデル/歌劇「セルセ」〜オンブラ・マイ・フ
2)ドヴォルザーク/歌曲集(曲名不明3曲)
3)シューマン/子供の情景から3曲
4)シューマン/献呈
5)越谷達之助(石川啄木詩)/初恋
6)平井康三郎/幻想曲さくらさくら
7)中田喜直(江間章子作詞)/夏の思い出
8)成田為三(林古渓作詞)/浜辺の歌
9)小林秀雄(野上彰詩)/落葉松
10)(アンコール)武満徹(武満徹作詞)/小さな空
(アンコール)あじさい
11)(アンコール)かけら
●演奏
直江学美(ソプラノ*1-2,4-5,7-9),長野良子(ピアノ*1-9),星稜大学ギターサークル*10-11

直江さんの声には穏やかな暖かさと,間近で聞く迫力が共存しており,大変聞きごたえがありました。直江さんはチェコに留学していたことがあるそうで,ドヴォルザークの曲が3曲歌われましたが,どの曲も民謡のような親しみやすさがあり,リラックスして楽しむことができました。シューマンの「献呈」は,クララに贈った愛の歌です。至近距離で聞いたので,熱さと感動がしっかりと伝わって来ました。

長野良子さんのピアノも素晴らしいと思いました。クリアで美しい音が会場内に染みわたるようでした。楽器は次の写真のような感じで配置されていました。



後半は,「初恋」「夏の思い出」「浜辺の歌」などお馴染みの日本の歌曲が歌われました。個人的にはつい最近,テレビで「二十四の瞳」を見たばかりだったので,「浜辺の歌」の爽やかさが特に印象的でした。ドラマでは,最後に成長した女の教え子がこの歌を歌うシーンが出てきて終わったのですが...今回の直江さんの方がずっと素晴らしい歌でした。

合唱曲としてよく知られている「落葉松(からまつ)」も良い曲です。ただし,この曲は気分的にはもう少し気温が下がってから聞いた方がぴったりだったかもしれません。

アンコールで歌われた,武満徹の「小さな空」は,合唱曲版で何回か聞いたことがありますが,ソプラノ独唱で聞くとまた違った味わいがありました。明るさと懐かしさに溢れており,直江さんのトークにあったとおり,聞きながら,子どもの頃の夏休みの気分を思い出してしまいました。

その後,直江さんが所属している星稜大学のギター・サークルの学生2人がモリ川さんの映像の前で静かな曲を2曲演奏しておしまいとなりました。

モリ川さんの映像は金沢市内の名所を,四季折々に,美しく新鮮なアングルで撮影した映像をスライドショーのようにつなげたものです。

# 少し前に金沢21世紀美術館でやっていた「ス・ドホ展」に少し似た感じの映像作品があったのを思い出しました。





建物に入った部分では工芸品の展示も行っていました。


元々はモリ川さん自身による音楽も付いているのですが,今回は映像だけを流していました。金沢に住んでいる私たちにとっても,金沢の美しさを再認識させてくれるような映像で,県外の人たちが見たら,「金沢に行ってみたい」と思う人が増えるのではないかと思います。

町民文化館で演奏を聞くのは初めてだったのですが,金沢蓄音器館よりもゆったりとしているので,今後も「飲食しながら演奏」という企画に期待したいと思います(ジャズでも行けそうですね)。ただし,冷房か何かを制御する機械の音が今回はかなりうるさかったですね。この点だけは改善が必要と思いました。

その他,この日は浅野川〜尾張町周辺の博物館が延長営業しており,夜間無料で入ることのできるナイトミュージアムという企画をやっていたので参加してきました。スタンプラリーをやっており,所定の個数のスタンプを集めると記念品がもらえるということでした。

久保市乙剣神社からスタート


佃の佃煮の店頭にはお菓子?で出来たことじ燈籠がありました。


まず演奏会前に泉鏡花記念館と金沢蓄音器館に行きました。

泉鏡花記念館


すぐそばにある金沢蓄音器館


金沢蓄音器館は1階には何回も入ったことはあるのですが,建物の中で蓄音器を実際に聞くのは今回が初めてのことでした。丁度良いタイミングで2階で蓄音器の聞き比べをやっていました。電気を使わずに再生するのですが,さすが最高の蓄音器が集まっているだけあって,どれも大変立派な音が出ていました。CDなどに比べると,ダイナミックレンジは狭いのですが,音に丸みがあり懐かしい気持ちになります。機械というよりは,楽器に近いですね。

今回は次のとおり5台の蓄音器の聞き比べをしました。蓄音器時代の録音はやはり蓄音器で聞くのがいちばんと思いました。
  1. スター・ダスト(アーティ・ショー楽団,蓄音器:ビクター クレデンザ) 蓄音器の王様と言われているそうで,大きな音が出ます。管の長さは2m以上あるとのことです。
  2. ケ・セラ・セラ(ドリス・デイ,蓄音器:コロンビア?)
  3. スマイル(ナット・キング・コール,蓄音器:グラモフォン(英国)) 人の声がリアルに聞こえるのが蓄音器の魅力
  4. 青いカナリア(ダイナ・ショア,蓄音器:EMGエキスパートシニア(英国)) 紙でできた大きなラッパが付いていました。向きによって音量がかなり違います。音には不思議な立体感がありました。
  5. チゴイネルワイゼン(一部)(ヤッシャ・ハイフェッツ,蓄音器:ブランズウィック) ボウリングの会社として知られているだけあって,全部木で出来ている蓄音器。そのこともあり,ヴァイオリンの音が特に良いとのことです。
ドリス・デイの「ケ・セラ・セラ」,ナット・キング・コールの「スマイル」,ダイナ・ショアの「青いカナリア」などを聞きましたが,昔の英語の歌は非常によく歌詞が分かるなぁと思いました。どの曲も私でも十分シャドウイングできそうなぐらいで(シンプルな英語を明確に発音しているんですね),嬉しくなりました。

リーフレットに掲載されている写真です。今回はこの辺で試聴しました。



帰宅するときに再度,金沢蓄音器館の前を通りかかったのですが,おなじみのニッパー犬がトロピカルな雰囲気になっていました(ソフトバンクのCM辺りに出てきそうな雰囲気?)。


ナイトミュージアムのスタンプラリーの商品ですが,文庫本用の特製カバーでした。いろいろとブックカバーを集めるのが趣味なので,個人的には「大当たり」の商品でした。


最後,「梅の橋」でモリ川さん風に撮影しようと思ったのですが...いまいちですね。


以下がモリカワさんの作品
http://www.youtube.com/watch?v=wj-fGk6HyIs&feature=c4-overview-vl&list=PLCD3F133D47B718FC



その他,日中に尾張町商店街を散策



四国の四万十市で気温が41度になり話題になりましたが,こちらは四万六千日の張り紙です。


歴史を感じさせる商店街です。








終演後です。すっかり暗くなりました。


久保市乙剣神社前です。


その後,東山方面に向かいました。「たばこの吸える喫茶店」という看板が印象的な喫茶店「禁煙室」の店頭です。



最後に金沢市立安江金箔工芸館に入ってスタンプを押してもらいました。


ナイトミュージアムのポスター


その後,東茶屋街へ。ここでもライトアップを行っていました。






モリ川さんのように美しくは撮影できませんが,尾張町〜東山は写真に撮りたくなるような風景ばかりです。
(2013/08/13)