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新谷要一フルートの夕べ
2013年8月10日(土) 19:00〜 金沢文芸館
ヴァン・エイク/笛の楽園 から
テレマン/12の幻想曲〜第7番
クヴァンツまたはフリードリッヒ大王の作品
バッハ,J.S./無伴奏フルート組曲第1番(原曲:無伴奏チェロ組曲第1番)
大中寅二(島崎藤村詩)/椰子の実
●演奏
新谷要一(フルート)

Review by 管理人hs  

前日に続き,かなざわ燈涼会関連のミニコンサートを聞いてきました。今年の夏,金沢市内の美術館や博物館では開館時間を延長し,通常の閉館時間以降の17:00〜21:00を無料公開するナイトミュージアムというイベントを行っています。このイベントとかなざわ燈涼会との併せ技的な企画として,この日は金沢文芸館でフルート奏者,新谷要一さんのミニ公演が行われました(入場無料でした)。





新谷さんは金沢出身で,インスブルック交響楽団に在籍後,1986年に帰国し,現在は東京学芸大学で講師をされている方です。通常のフルートだけではなく,フラウト・トラベルソやリコーダーなどの古楽器奏者としても活動されています。

会場は,金沢文芸館の1階全部が使われていました。元々それほど広くないのですが,ほぼ満席という状態でした。



今回は,4曲が演奏されました。まずリコーダーで,ルネッサンス時代のファン・エイクの作品が演奏されました。リコーダーの音は素朴で,曲の雰囲気もどこか粗野な感じで,独特の味わいはありましたが...どうも捉えどころがない感じでした。この日は新谷さんによる,「フルート音楽史」の説明をはさみながら演奏が行われましたが,ヴァン・アイクという人はストリート・ミュージシャンとして活躍した人で,現代の音楽家の先駆けともいえる人とのことでした。

続いて,テレマンの曲がフラウト・トラヴェルソで演奏されました。こちらも現代のフルートに比べると随分落ち着いた響きでした。緩やかな前半部の後,後半は舞曲風にテンポが速くなる構成でした。フラウト・トラヴェルソは間近で聞くと結構息漏れが多かったので,尺八にも似ているなと思って聞いていました。

3曲目はロココ時代の宮廷で演奏された曲が演奏されました。クヴァンツの作品かフリードリヒ大王の曲かはっきり聞き取れなかったのですが,なかなか風格のある変奏曲風の作品でした。ロココ時代のドイツは,実は戦争の時代で癒しの意味も含めて,優雅さのある作品が作られたと新谷さんは説明をされていましたが,なるほどと思いました。

最後に,通常のフルートでバッハの無伴奏チェロ組曲第1番のフルート版が演奏されました。やはり,古楽器での演奏と聞き比べてみると,こちらの方が音全体に輝きがあり,音量も豊かでした。今回,こういう聞き比べを間近で実感できたのが良かったと思いました。

バッハのこの曲は,チェロによる演奏ではすっかりお馴染みですが,フルート1本で演奏すると和音がないので,純粋に「線の音楽」になります。ただし,新谷さんの演奏は,メロディラインが単純にサラサラと続くのではなく,どこかゴツゴツとした感じがありました。前奏曲のメロディなども,フレーズの最初の1音をぐっと長目に演奏したり,強い表現力を感じました。最後の部分では大きく音が盛り上がり,ダイナミックさも感じました。

その後,アルマンド,クーラント...と続きますが,それぞれに曲想がじっくりと描き分けられていました。最後のジーグだけは非常にサラリとあっさりと演奏されていました。

全体に折り目正しくかっちりとまとまった演奏というよりは,草書風の自在な崩しがある演奏で,ベテラン奏者らしい演奏だったと思いました。

この組曲に関しても,新谷さんによる解説が「へぇ」というものでした。バロック時代の組曲はいくつかの舞曲が集まった形になっていますが,もともとは男女によるスペイン風の艶めかしいる舞曲が起源だったそうです。それを優雅なものへと洗練されたのが組曲とのことです。こういうことを意識しながら聞くといろいろと新たな発見がありそうな気がしました。

最後にアンコールがわりに,「椰子の実」をお客さん全員で歌ってお開きとなりました。フルートによる前奏に続いて,配布された楽譜を見ながら歌ったのですが,皆さん楽しげに歌っていました。バッハやテレマンとは全然関係のない曲でしたが,夏らしい雰囲気もあり,会場はとても良い雰囲気になりました。

演奏途中に,文芸館の展示を見に来るお客さんが次々入って来て,私が座っていた後部座席では少々ざわざわした感じだったのが残念でしたが,文芸館でのイベントには今後も期待したいと思います。

↓演奏会後はすっかり暗くなっており,ライトアップが映えていました。


今年の夏は連日暑い日が続いているので,夕方からゴソゴソと活動をしています。日中は暑くて活動するのが結構大変なので,夏のナイトミュージアムというのは,ヒット企画なのではないか,と思っています。来年も期待したいと思います。
(2013/08/13



このイベントの前には,かなざわ燈涼会関連で行っていた工芸の展示を見てきました。以下,写真を中心に雰囲気を紹介しましょう。

まずイベントの中心(の一つ)と言っても良い,久保市乙剣宮です。


境内を使ってコンサートをやっていたようです。この時には,箏が置いてありました。


神社の裏に回っていると...どうみても流しそうめんですね。


ここから坂を下って,主計町方面へ。この坂は「暗がり坂」と呼ばれていますね。何とも言えない雰囲気のある坂です。


主計町茶屋街では,「一見さんお断り」風のいろいろな茶屋の中で工芸作品が展示されていました。「こういう機会でもないと入れない」と思い,茶屋をハシゴしてきました。

イベントのポスターです。










これは主計町の練習場となっている検番の中の写真ですl。



一箱古本市をいつもやっている源法院では,いろいろな作家の作品が狭いスペースに詰め込まれており,「秘宝展」といった趣きになっていました。


浅野川沿いには雰囲気のある縁台のようなものがありました。有名料亭の食事などを飲食できるようになっていました。


これは展示会場になっていた茶屋の2階からの景色です。こういう雰囲気で一度飲食してみたいものです。


主計町の街並み。


その後,時間があったので自転車で広坂方面まで行ってみました。


この日,しいのき迎賓館裏でやっていた野外映画(本日は金沢でロケをした「ファンシイ・ダンス」でした)も楽しそうでしたが,これはまた別の機会にしたいと思います。