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サイトウ・キネン・フェスティバル松本2013スクリーン・コンサート
2013年9月3日(火) 19:00〜 キッセイ文化ホール(松本市)からの中継を金沢市文化ホールで視聴
1)モーツァルト/交響曲第33番変ロ長調 K.319
2)リゲティ/フルート,オーボエと管楽器のための二重協奏曲(日本初演)
3)(アンコール)モーツァルト/歌劇「魔笛」の中のアリア2曲をフルートとオーボエによる二重奏用に編曲したもの
4)シュトラウス,R./交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」
●演奏
大野和士指揮サイトウ・キネン・オーケストラ*1-2,4
ジャック・ズーン(フルート*2-3),フィリップ・トーンドゥル(オーボエ*2-3)
Review by 管理人hs  

この日の金沢は日中から激しい豪雨だったのですが,夜になって小雨になったので,金沢市文化ホールで行われたサイトウ・キネン・フェスティバル松本2013のスクリーン・コンサートを聞いてきました(要整理券,入場無料)。松本市と金沢市が文化・観光交流都市協定を結んで以来,このイベントは恒例になってきているようです。私自身,参加するのは2回目です。


↑このイベントのチラシです。この日の豪雨を予想するように「雨天決行」などと書いてありました。野外でスクリーンコンサートを行っていたところもあったようです。

スクリーン・コンサートについては,スクリーンの「向う側」と「こちら側」でどうしても「空気の熱さ」が違ってくるので,拍手をして良いか迷ってしまうのですが,どの曲も素晴らしい演奏で,「盛大な」とまでは行きませんが,それなりに拍手が起きていました。

最初に演奏されたモーツァルトの交響曲第33番は,オーケストラ・アンサンブル金沢が演奏する機会もほとんどない曲ですが,とても良い曲です。よく聞いていると,「ジュピター」の第4楽章の音型が第1楽章に出てきます。大野和士さん指揮サイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)の演奏は,そんなに変わったことをしているわけではないのですが,各フレーズのニュアンスの付け方が大変念入りで,退屈せずに楽しむことができました。全体的に慌てることなく,明快に鮮やかな音楽を楽しませてくれました。「本当の音量」は実際の会場でないと分からないのですが,自然体で各楽器をしっかり鳴らした演奏だと思いました。

2曲目のリゲティのフルートとオーボエのための二重協奏曲では,管楽器を中心としたサウンドの素晴らしさを堪能させてくれました。ヴァイオリンが入っていない代わりにフルートが4本ぐらい入る,かなり変則的な編成でした。いわゆる現代音楽ですので聞きやすい作品とは言えないのですが,リゲティの作品については,他の作曲家にないような根源的な力のようなものを持っている気がします。

独奏として登場した,フルートのジャック・ズーンさんとオーボエのフィリップ・トーンドゥルさんの音も素晴らしいものでした。特にフルートは,ズーンさん以外にもアルト・フルート(多分)なども加わっており,暖かみのある音を聞かせてくれました。決して心地よい響きではないのですが,この2人の音に浸るだけでも幸福感を感じました。

アンコールではモーツァルトの歌劇「魔笛」の中の2曲を2台の楽器用に編曲されたものがお2人によって演奏されました。ここでは音の素晴らしさだけではなく,自由自在の闊達さや名人芸を楽しませてくれました。

後半の「ツァラトゥストラはかく語りき」は,後期ロマン派の作品だけあってうねるようなスケール感があるのですが,大げさ過ぎる感じはなく,むしろ純音楽的な構築感がありました(この点は恐らく,実際の会場で聞くのとかなり印象は違っていると思います)。SKOはソリスト集団だけあって,各モチーフの押し出しが明確で,その積み重ねや受け渡しを追っていくだけで,充実感を感じました。

有名な冒頭のファンファーレはトランペット,ティンパニともに大変鮮やかでしたが,全体的にあっさりとした感じでした。曲のエンディング部分もあっさりとした感じでしたが,こういった点も含め,曲全体のまとまりがとても良いと思いました。ロマン派らしい熱さはあるけれども,よく整理された演奏だと思いました。

ちなみにSKOの今回のメンバーは次のとおりです。弦楽器は日本人中心ですが大変豪華なメンバーですね。反面,管楽器の方は”サイトウ・キネン”という言葉からは離れ,多国籍オールスターチームという感じになって来ているようです。
http://www.saito-kinen.com/j/program/sko_mem/sko_mem.shtml

この日会場では松本市の観光マップを配布していましたが,北陸新幹線が金沢まで開通すれば,松本市まではかなり近くなります。その時は一度,松本でSKOの実演を聞いてみたいものです。


(2013/09/16