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日本基督教団金沢教会オルガン建造10周年記念コンサート
2013年9月14日(土) 金沢教会礼拝堂
グリニ讃歌「めでたし海の星」
アラン/クレマン・ジャヌカンの主題による変奏曲 JA118
即興演奏
バッハ,J.S/バビロン川のほとりに
バッハ,J.S/前奏曲とフーガ ハ長調,BWV547
メンデルスゾーン(メルカート編曲)/前奏曲とフーガ ホ短調 op.35-1
フランク/パストラーレ op.19
ヴィエルヌ/子守歌 op.31-19
ヴィエルヌ/スケルツェット op.31-14
「小さな秋みつけた」による即興演奏
ヴィドール/オルガン交響曲第6番 op.42-2〜ファイナル
(アンコール)バッハ,J.Sのコラール
●演奏
ジャン=フィリップ・メルカート(オルガン)
Review by 管理人hs  

石川県立音楽堂に置いてあった「金沢教会オルガン建造10周年記念コンサート」(無料)というチラシを見て,秋の連休...といいつつ夏のように暑かった休日の午後にオルガンの演奏を聞いてきました。



金沢教会というと分からない方もいるかと思いますが,柿木畠のうつのみや書店の向いにある教会です(次の写真)。


金沢市で音楽イベントがあれば,どこにでも聞きに行っている私ですが,キリスト教会というのはやはり敷居が高く,この教会をはじめ,金沢市内の教会の中にはほとんど入ったことはありません(敷居が高いと言えば,仏教のお寺も同様です。神社の方は初詣をはじめ,それなりに行っていますね)。こういう音楽イベントがないと一般の人には近づきにくいという面もありますので,その点では,音楽による布教活動は重要なことなのだと思います。

教会に入ると,ちょっとした体育館ぐらいの広さの,天井の高い明るく開放的な雰囲気の礼拝堂がありました。牧師さんがお話をするステージ(?)の反対側の上の方にパイプオルガンがあり,今回は礼拝の時とは椅子の向きを逆にして,ちょっと上を見るような感じで音楽を楽しみました。



パイプオルガンについては,石川県立音楽堂のパイプオルガンしか聞いたことがなかったので,まず,「音楽堂以外にもこんな立派な楽器が金沢市内にあったんだ」という新鮮が発見がありました。演奏のジャン=フィリップ・メルカートさんは,ベルギー出身のオルガン奏者で,札幌コンサートホールKitaraをはじめ,現在,日本国内でオルガン奏者として活躍されている方です(日本語もかなりお上手のようでした。)。

チラシを見ただけだと,無料ということもあり1時間以内かな,と思っていたのですが,実際には休憩やアンコールを含めて2時間近くあり,オルガン・リサイタルとして大変充実した内容になっていました。

この教会は調べてみるとプロテスタントの教会ということで,ステンドグラスなどは無く,内装などもすっきりとした感じでしたが,パイプオルガンの音も清々しい印象を持ちました。個人的には,教会といえば,暗い部屋の中にロウソクが灯っているいるという印象があったので(やはりクリスマスの時期の印象でしょうか),柔らかい外光が差し込む中で聞くオルガンはとても新鮮でした。

最初にグリニとアラン(有名なオルガニストのマリー・クレール・アランのお兄さんに当たります)の曲が演奏されました。どちらもフランスの作曲家で,初めて聞く曲でしたが,間近で聞くオルガンの音には十分な迫力があり,メルカートさんの世界に引き込んでくれました。

その後,即興演奏が行われました。譜面を見て主題を演奏した後,自由に変奏を行っていた感じでしたが...実は一つ前のアランの曲も変奏曲だったこともあり,どこから即興演奏が始まったのかはっきり分かりませんでした。

前半最後はバッハの曲が2曲演奏されました。「バビロンの流れのほとりに」は,ライプツィヒ・コラール集の中の1曲です。メロディが朗々と歌われ,深々とした呼吸を感じさせてくれました。最後の部分の不思議な気分を持った和音も絶妙でした。前奏曲とフーガの方も,他のコラールのメロディを転用した曲でした。曲全体に気高さがあり,前半の最後を大きく盛り上げてくれました。

後半最初に演奏されたメンデルスゾーンの前奏曲とフーガも良い曲だと思いました。メンデルスゾーンはマタイ受難曲を復活させたことでも有名ですが,オルガンの作品的にもバッハの後継者と言えそうです。曲の最初の方には,解説に書いてあったとおり「無言歌」を思わせるようなアルペジオが入るなど,ほのかにロマンティックが気分が漂っていました。私にはこれぐらいのちょっと甘さがある曲の方が聞きやすく感じます。

この曲では,途中で,結構頻繁に音量を変えたり,音質を変えたりしていました(最初の方はどこか尺八を思わせるような音でした)。この日はオルガンの隣に座っていたアシスタントの方が操作を手伝っていました。この辺は石川県立音楽堂のオルガンとは違う点かもしれませんが,こういう「手作業の労働」の方が見ていて面白いですね。2人がかりで演奏していたこともあり,終盤の輝かしい盛り上がりとその後のデクレッシェンドが聞きものだと思いました。

続いて,フランクのパストラルとヴィエルヌの曲が演奏されました。パストラルもヴィエルヌの子守歌はどちらも穏やかな曲で,狙いどおり(?)ウトウトとしてしまいました。ヴィエルヌのスケルツェットの方は,小形のスケルツォといった意味なのでしょうか,とても可愛らしい感じの演奏でした。

オルガンの演奏会では,即興演奏がよく行われるようで,後半でも即興演奏がありました。今度は,中田喜直作曲の「小さい秋みつけた」に基づく即興演奏でした。さすがにこちらの方はよく分かりました。シンプルに主題を演奏した後,一呼吸置いて変奏が始まったのですが,大変ゴージャズでした。お馴染みのメロディだとその崩し具合がよく分かってが楽しめます。今回は「誰かさんが,誰かさんが...」の部分のメロディを中心に変奏していました。この日から金沢市内では金沢ジャズストリートというイベントが始まりましたが,時々外から漏れ聞こえてくるジャズの音を聞きながら,「精神としては意外に近いかも」と感じました。

最後にヴィドールのオルガン交響曲第6番の最終楽章が演奏されました。解説によると,シューマンの「謝肉祭」から影響を受けた曲とのことでしたが,音の動きがキラキラとしており,演奏会全体を締める華やかさがありました。

その後,バッハのコラールがアンコールで静かに演奏され,メルカートさんの挨拶があって演奏会はお開きとなりました。演奏会の後,外に出てみると,柿木畠の広場でジャズストリート関連の音楽を楽しげに演奏していました。この時はゴスペルを歌っていましたが,この異業種交流的な雰囲気も良いなぁと思いました。教会のイベントについては,クリスマスが近くなると増えてきますので,機会があればまた参加してみたいと思います。

 

一瞬,オイスターの牡蠣かと思ってしまいましたが,柿木畠商店街では,次のとおり「かきまつり」と銘打っていろいろイベントを行っていたようです。


(2013/09/16