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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2013:パリ,至福の時:フランスとスペインの音楽
金沢まちなかプレリュード
2013年4月27日(土) 金沢市内各所

Review by 管理人hs  

ラ・フォル・ジュルネ金沢の開幕イベント「金沢まちなかプレリュード」に参加してきました。このイベントは,野外を含む金沢の中心商店街の9か所で無料の室内楽の演奏会を行うというものです。一つの場所でじっくりと聞くという案もありましたが,物好きな私は自転車を使ってハシゴをしてみました。

まず各会場で配っていたチラシです。

金沢市の市街地は非常にコンパクトなので(それが金沢市の良さだと私は思っています),自転車ならば大体どの場所も10分以内ぐらいで移動できます。

まず最初は広坂交差点(金沢21世紀美術館前)での筒井裕朗サクソフォン・アンサンブルの演奏を聞いてきました。


今回は,先日JR金沢駅で聞きそこなったカルメンをしっかり聞くことができました。ちなみに,今回の「金沢まちなかプレリュード」では,演奏が始まる前に決まったセリフを担当の方が読み上げるのが決まりになっていましたが,広坂交差点の方のアナウンスがいちばん楽しかったですね。ゾクゾクとするようなセリフ回しでした。

この曲を聞いた後,金沢21世紀美術館の中に入り,この日始まったばかりの展覧会「内臓感覚」をざっと見てみました。結構,「濃い」感じの展覧会だったので,今度改めてじっくりと見てこようと思います。


続いて,タテマチ商店街へ移動し,タテマチ・オーバル前でフルート・アンサンブルのカメラータ・コンチェルティーノの演奏を聞きました。


この団体の演奏を聞くのは初めてだったのですが,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の元フルート奏者の上石薫さんが指導をされている団体のようで,上石さんが指揮をされていました。曲目解説も上石さんがされていましたが,実はOEK時代上石さんのトークを聞いた記憶がなかったので,中々貴重な機会でした。

ここでも「カルメン」の中の曲がいくつか演奏されていました。ビゼーの作品には元々フルートの活躍する曲が多いのですが,フルート・アンサンブルだと「魔性の女」というよりは,清潔で可愛らしい「カルメン」になるのが面白いところです。

その後,しいのき迎賓館に行きました。「まちなかプレリュード」のシリーズではなかったのですが,低い声の女性歌手がシャンソンの「パダン,パダン」を歌っていました。ホールの中に落ち着いた声が広がり,この建物のレトロな雰囲気によく合っているなと思いました。


片町のラブロに移動し,金沢クラリネットアンサンブルの演奏を聞きました。ここでは,アルベニスのセヴィリア,フォーレのパヴァーヌ(MCの方はファリャのパヴァーヌと曲を紹介していましたが...),チック・コリアのスペインを演奏していました。アルベニスのセヴィリアは,先日,筒井さんのサクソフォン四重奏でも聞いた曲ですが,クラリネット四重奏も良い味が出ていました。とても気持ちの良い曲ですが,聞いているうちにどこか切ない気分になります。


続いて,香林坊大和へ。「4階特設会場というのはどこだろう?」と思って4階まで行ってみると...普通の衣服売り場でした。ここにも大勢の人がいました。さすが大和です。ラ・フォル・ジュルネ金沢弦楽四重奏団という団体の演奏でしたが...その実態は元OEKのお馴染み大村夫妻を中心とした弦楽四重奏でした。


ドビュッシーのゴリウォークのケークウォークをまず演奏していましたが,人が多すぎて良く見えなかったので,文房具売り場で(入場料代わりに)買い物をした後,柿木畠商店街のうつのみや書店前のポケットパークに移動しました。ここでは,再度,フルート・アンサンブルが演奏していました。用水のほとりでの演奏というのはなかなか良いものです。


この辺りでさすがに疲れてきたので香林坊のミスタードーナツで休憩しました。何気なく無料情報誌LINKを眺めていたら,ここでもしっかりラ・フォル・ジュルネ金沢の宣伝が掲載されていました。


続いて,香林坊109前へ。ここでは金沢クラリネット・アンサンブルが2回目の演奏を行っていました。こちらも用水のそばでの演奏でした。


「金沢まちなかプレリュード」の最後は,香林坊大和1階のアトリオステージでの上田智子さんと山徳理紗さんによるハープ二重奏でした。最後ということで,じっくりと30分間楽しませていただきました。次のような曲を演奏していました。

1)グラナードス/スペイン舞曲
2)ドビュッシー/月の光
3)シャルメールの松
4)ハッセルマン/泉
5)サティ/ジムノペディ第1番
6)ビゼー/カルメン・メドレー
●演奏
上田智子*1-3,5-6,山徳理紗(ハープ)

この中では特に「月の光」が印象的でした。最初,上田さんの独奏で始まった後,しばらくして山徳さんのハープの音が加わる構成になっていました。途中で音がふわっと広がるような感じがあり,月の光が明るく差し込んでくるようでした。



2階の手すりにもたれて聞いていたのですが,デパートの大きな吹き抜け空間に軽やかで艶やかな空気が広がり「ちょと気だるい陶酔的な午後」といった気分に浸ることができました(少々疲れていたこともありますが...)。

が,何と何と最後の曲の「カルメン」の「闘牛士の歌」が終わろうとしたところで,アトリオ名物の飾り時計が「16:00をお知らせします!」という感じで華々しく音楽を「これでもか,これでもか」と鳴らし始めました。


これにはお2人も苦笑されていました。1970年代,朝比奈隆指揮大阪フィルがオーストリアのザンクト・フロリアン教会で演奏した時,2楽章が終わった後に教会の鐘が鳴ったという有名なエピソードなどを思い出してしまいましが...今回の時計の音については,まさに苦笑するしかないような華々しさでした。ただし,こういうハプニングもまた,こういう演奏会の面白さの一つだと思います。

ここで帰っても良かったのですが,「ここまで来たら近江町市場まで行ってやろう」と思い,近江町いちば館前に行ってみたところ,筒井さんのサクソフォン・アンサンブルがララのグラナダを演奏していました。


こういう感じでハシゴをしてみましたが,どこの会場もよい感じでにぎわっており,ラ・フォル・ジュルネ金沢への期待が大きいことがしっかりと伝わってきました。

本当は,夕方から北國新聞赤羽ホールで行われるフランス歌曲とアリアの夕べにも行ってみたかったのですが,オープニングコンサート前から飛ばし過ぎるのも良くないだろうということで,本日はこれで打ち止めにしておきました。

金沢市内を一回りして,心地よい音楽と適度な疲労感に浸った午後でした。



その後,ラ・フォル・ジュルネ金沢のツイッターの情報を見て,夜になってから長谷川章氏による鼓門のライトアップを見てきました。なかなか面白いものでした。なぜかNHK大河ドラマ「利家とまつ」のサントラ盤の音楽が流れていましたが,それに合わせて,色合いが定期的に変化していました。

カメラの感度を上げて撮影してみたところ,フラッシュなしでも結構きれいに写りました。こうやってみると,綺麗というよりはサイケデリックという感じですね。ストラヴィンスキーの音楽などの原色的な音楽でも合うかもしれませんね。





私はライトアップの終了間際に見に行ったのですが,写真を撮影している人がかなりいました。


ドームの下には,ラ・フォル・ジュルネ金沢の開幕用の準備もできていました。


(2013/05/11)