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ラ・フォル・ジュルネ金沢 「熱狂の日」音楽祭2013:パリ,至福の時:フランスとスペインの音楽
本公演1日目
2013年5月3日(金祝) 石川県立音楽堂コンサートホール,JR金沢駅周辺

Review by 管理人hs  

ラ・フォル・ジュルネ金沢2013 本公演1日目は,全公演スケジュールの書かれたリーフレットの表紙どおりの好天になり,音楽堂は大盛況でした。私は11:00からの「子どもと魔法」から参加したのですが,この公演以外は,どの公演も満席という感じでした。

まず音楽堂に入る前にJR金沢駅周辺を一回り。
←LFJKはこのコンパクトさが良いですね。

鼓門下では2年連続で全日本吹奏楽コンクールの全国大会で金賞を受賞した金沢市立額中学校の皆さんが演奏していました。

フランス国立ロワール管弦楽団(多分)の方も嬉しそうに眺めていました。

JR金沢駅コンコースでは,ピアノコンサートをやっていました。いきなりラ・ヴァルスが聞こえてきて,「何と贅沢な雰囲気」と思いました。ちなみに私はこの曲を聞くと...グリコのコーヒーゼリー「ドロリッチ」を思い浮かべてしまいます(少し前にCMに使っていましたね)。

                                  もてなしドーム地下では楽器体験コーナーもありました。

今年のプログラムですが,基本的にコンサートホールの公演は全部聞けてしまうという構成になっていますので,まず,びわ湖ホール声楽アンサンブルと園田隆一郎指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)によるラヴェルの短いオペラ「子どもと魔法」を見てきました。さすがに「朝いち」だったことと,裏番組(交流ホール)で児童合唱のプログラムがあったこともあるのか,私の居た3階には空席がありましたが,滅多にみることの出来ないラヴェルのオペラを楽しむことができました。



【111】11:00〜 コンサートホール
ラヴェル(高橋喜治編曲)/歌劇「子どもと魔法」(室内オーケストラ版,演奏会形式,フランス語上演,日本語字幕付)
●演奏
園田隆一郎指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:サイモン・ブレンディス)
びわ湖ホール声楽アンサンブル(子ども:森季子,ママ/とんぼ:本田華奈子,お姫様:中嶋康子 その他)
演出:岩田達宗

この曲を実演で聞くのは初めてでしたが,ラヴェルの「音のパレット」が全部使われているような作品で,色々と面白い音が聞こえてきました。宿題をしないために母親に叱られた子どもが部屋の中の家具や動物に八つ当たりした後,その逆襲を受けてしまう...という一癖のあるお話です。椅子やソファが歌ったりする点では,ディズニー版の映画「美女と野獣」を思わせる部分が,子どもが一人家に残されて色々怖い目に合うという点では映画「ホームアローン」と設定が似たところもあると思いましたが,もしかしたらそういう作品のアイデアをインスパイアする原点になっている作品だったのかもしれません。

今回の歌手はびわ湖ホール声楽アンサンブルの16名の皆さんでした。複数のキャラクターを兼ねたり,ソロを歌ったり合唱団になったりと大活躍でした。主役の「子ども」役はメゾソプラノの森季子さんでした。とてもすっきりとした,まっすぐな歌だったので「子役」らしいと思いました。

今回の版ですが,室内オーケストラ用にアレンジされており,OEKの編成はいつもよりさらに小さいぐらいでした。各楽器の音がクリアに聞こえ,ファンタジーの世界に相応しい雰囲気を出していました。

今回は演奏会形式での上演ということで大道具は使っておらず,「炎」とか「木」の「感情」をラヴェルの作曲した音と小道具だけで表現していました。特に木が泣いている部分の音楽はとても不思議なサウンドでさすがラヴェルと思いました。

演奏会形式ということで音楽に集中はできたのですが,せっかくなので,もう少し舞台や照明や衣装にも凝ってほしいかなとも思いました。この点については,次々と演奏者が変わるラ・フォル・ジュルネに期待するのは難しい面もあるので,是非,石川県立音楽堂邦楽ホールでのOEK室内オペラシリーズなどで再演して欲しいな,と思いました。

 
今年からこういう表示になっていました。        カフェコンチェルトでやっていた「家具の音楽」のPR

 
おなじみのLFJK特製クリームパン              よく見ると作曲家でない人が一人混ざっています。



【122】12:15〜 邦楽ホール
ドビュッシー/弦楽四重奏曲ト短調 op.10
ラヴェル/弦楽四重奏曲ヘ長調
●演奏
モディリアーニ弦楽四重奏団


続いて,邦楽ホールに移り,モディリアーニ弦楽四重奏団によるドビュッシーとラヴェルの弦楽四重奏曲を聞きました(演奏順は,リーフレットではラヴェル,ドビュッシーとなっていましたが,直前になってドビュッシー,ラヴェルの順に変更されました。)。これは本当に聞きごたえたっぷりでした。非常に緻密にじっくりと聞かせてくれました。全体的にしっかりと抑制が聞いていて知的な雰囲気がある一方で,ところどころで耽美的な雰囲気になり,演奏にしっかり集中させてくれました。何よりも音のバランスが良く,曲の良さがそのまま伝わってくるようでした。

ドビュッシーとラヴェルと言えば,標題のある音楽を多数作っていますが,この公演では形がくっきりした音楽の魅力を感じさせてくれました。それでいて堅苦しいところはなく,自然にフランス風の香りが漂ってくるのが非常に魅力的でした。

特に各曲の緩徐楽章をじっくりと演奏していたこともあって,公演時間は1時間以上あったと思います。その後の公演の開始時間が全体に10分ほど遅くなりましたが,大満足の公演でした。

 
クラシックソムリエ検定のPR企画(やってみましたが,結構難しかったです)。


ローザンヌ国際バレエ・コンクールで3位入賞した山本雅也さんは残念ながら欠場



【112】13:10〜 コンサートホール
1)ラヴェル/ラ・ヴァルス
2)ラヴェル/ピアノ協奏曲ト長調
3)ラヴェル/ボレロ
●演奏
井上道義指揮フランス国立ロワール管弦楽団,アンヌ・ケフェレック(ピアノ)*2

この日2回目のコンサートホールに移ると,今度は超満員でした。やはり,ボレロ人気でしょうか。井上道義さんとケフェレックさん人気でしょうか。こちらもまた,フランスのオーケストラ音楽のエッセンスをたっぷり楽しませてくれる公演でした。

ラ・ヴァルスは,まさに井上さんのためにあるような音楽ですね。素晴らしい演奏でした。ラヴェルの音楽には,この曲の冒頭部のようなちょっとグロテスクで大胆な部分と中間部に出てくるような洒落た感じとが融合しています。それを非常に流れよく楽しませてくれました。特にワルツの部分は,まさに「ザ・ワルツ」という感じでした。

ラヴェルのピアノ協奏曲は,OEKの定期公演などで何回も聞いている作品ですが,ケフェレックさんの軽快で気品のある演奏もまた,大変魅力的でした。ケフェレックさんの演奏は毎年のように聞いていますが,いつもさりげなく,味のある演奏を聞かせてくれます。ロワール管弦楽団の明るめの音色と相俟って,とても親しみやすい演奏を聞かせてくれました。ピアノの軽やかなタッチとオーケストラの弾むようなリズムが一体となった第3楽章など,フランス人演奏家ならではの洒脱さを感じました。

お楽しみのボレロですが,非常に変わった配置を取っていました。演奏の前半に出てくる楽器が全部打楽器の後ろの最後列に立っていました。ステージ上の照明も落とされており,曲の前半の音量が小さい間は,これらの楽器に(それともちろんスネアドラムにも)スポットライトが当たり,どの楽器が演奏しているのか一目瞭然という形になっていました。一種,「青少年のためのオーケストラ入門(フランス版)」といった感じで,誰が見ても楽しめたのではないかと思います。

各楽器のソロも楽しめました。スポットライトが当たっていると,ミスすると大変目立つのでプレッシャーもあったと思いますが,どのソロも明晰で,全体に明るい響きが印象が残りました。特に「難しいソロ」として有名なトロンボーンはお見事でした(当然,演奏後は盛大な拍手)。

演奏が終盤に近づくにつれて会場の照明も明るくなり,最後は客席の照明まで明るくなって終わりました。井上道義さんのアイデアだと思いますが,サービスたっぷりの素晴らしい演奏でした。エキゾティックな感じはあまり感じなかったのですが,いかにもお祭りに相応しい明るさのある演奏だったと思います。

ちなみにこの公演ですが,オーケストラ曲の間にピアノ協奏曲が入っていたので,ピアノの移動がかなり大変そうでした。そのこともあり,予定よりも公演時間が長くなっていたようです。

終演後,音楽堂玄関でアンヌ・ケフェレックさんのサイン会を行っていたので手早く頂いた後,邦楽ホールに移動しました。
 
ラ・フォル・ジュルネの公式CD(\1000)にサインを頂きました。日付の順番を間違えて,にこやかに←で修正する辺りもケフェレックさんらしいところです。

 
邦楽ホールに行く途中のやすらぎ広場では子ども向けのイベントを色々行っていました。その他,ワインなども販売していました。



【123】14:45〜 邦楽ホール
ドビュッシー/ピアノ三重奏曲ト長調
ラヴェル/ピアノ三重奏曲イ短調
●演奏
ジャン=クロード・ペヌティエ(ピアノ),レジス・パスキエ(ヴァイオリン),ロラン・ビドゥ(チェロ)

122番のモディリアーニ弦楽四重奏団の公演は若手による室内楽でしたが,今度はペヌティエさん,パスキエさん,ピドゥさんのベテラン3人によるピアノ三重奏でした。ここでは,122番の選曲と対を成すように,ドビュッシーとラヴェルのピアノ三重奏曲が演奏されました。こちらの方も大変聞きごたえがありました。

ドビュッシーの曲は,ドビュッシーの若い頃の習作ということで,「ドビュッシーらしからぬ」どこか初々しくロマンティックな気分がありましたが,とても気持ちよく楽しませてくれました。こういう曲を聞けるのもラ・フォル・ジュルネならではだと思います。

ラヴェルの方は円熟した味のある作品でさらに聞きごたえがありました。第1楽章の「明るいけど暗い」といった感じのメランコリックで詩的な気分は最高ですね。この曲はこれまでほとんど聞いたことがなかったのですが,すっかり気に入りました。ベテラン三人の演奏では,静かな楽章での味わい深さも素晴らしかったのですが,第2楽章や第4楽章のような動きのある楽章でも生命力を感じさせてくれる力強さも印象的でした。底知れぬ力強さが伝わってきました。また,全体を通じて,特にペヌティエさんのピアノの音の透き通るような美しさも印象的でした。

 邦楽ホール前の看板



【113】16:00〜 コンサートホール
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ラヴェル/高雅で感傷的なワルツ
ドビュッシー/交響詩「海」
●演奏
パスカル・ロフェ指揮フランス国立ロワール管弦楽団


先ほどラヴェルを演奏したフランス国立ロワール管弦楽団ですが,今度は音楽監督を務めるパスカル・ロフェさん指揮で,ドビュッシーの海,牧神の午後への前奏曲,ラベルの高雅で感傷的なワルツが演奏されました。これらの曲はOEK単独では演奏できませんので,この公演も金沢の聴衆には注目度は高かったのではないかと思います。

「牧神の午後」では,柔らかく気だるい雰囲気が伝わってきました。明るいけれども元気が良すぎない。色彩的だけれどもケバケバした感じではない。そういような演奏で,曲のイメージどおりだったと思います。

「高雅で感傷的なワルツ」は,実演で聞くのは初めてでした。ワルツということで,井上道義さん指揮のラ・ヴァルスと比較してしまうのですが,そちらに比べると,ちょっとダイナミックさや流れの良さが足りない気はしました。ただし,この曲は短い曲が沢山つながった曲なので,曲自体の性格かもしれません。メルヘン的な軽やかさのある演奏だったと思います。

最後のドビュッシーの「海」でも,このオーケストラの持つ明るく爽快な響きをしっかりと楽しむことができました。ロフェさんは,演奏後チェロパートを讃えていましたが,文字通り「瑞々しい(というよりは水々しい?)演奏を聞かせてくれました。各楽章とも気持ち良くオーケストラを鳴らしていましたが,全体としては堅実な演奏だったと思います。その中で第3楽章の最後の部分での陽光が見えるような輝かしさは特にお見事でした。

 コンサートホール前の看板



続いて,この日初めて金沢市アートホールまで行きました。
 

【134】17:15〜 金沢市アートホール
ソレル/ソナタ第87番ト短調
ソレル/ソナタ第84番ニ長調
グラナドス/詩的ワルツ
グラナドス/組曲「ゴイェスカス」〜嘆き,又はマハと夜泣きウグイス
グラナドス/組曲「ゴイェスカス」〜愛と死
アルベニス/組曲「イベリア」〜エル・アルバイシン
(アンコール)アルベニス/アストゥーリアス
●演奏
ルイス・フェルナンド・ペレス(ピアノ)


ここでは,LFJKでもおなじみのルイス・フェルナンド・ペレスさんのピアノでスペイン音楽を楽しみました。ペレスさんについては,数年前のショパンの時から注目をしていましたが,今回も凄かったです。ピアノのタッチそのものがクリアで硬質的で,音そのものにスペイン的な陰影があるような感じでした。

最初のソレルの曲はスカルラッティのソナタのような雰囲気がありました。非常に明晰で,曇りのない演奏は大変魅力的でした。

その後はクラナドスとアルベニスとスペインの作曲家の曲が続きました。ロマン派時代の作品ということで,湧き上がってくるような情感が曲想に応じて押し寄せてきました。ペレスさんのピアノのタッチが素晴らしく,陰影の濃い夜のスペインのムードがどの曲からも伝わってきました。曲が進むにつれて,どんどん熱気が増していくようなところがあり,最後のアルベニスの作品では,圧倒的な迫力が伝わってきました(アートホールでの公演は本当に迫力がありますね)。

アンコールではアルベニスのアストゥーリアスがものすごいスピードで演奏されました。実にスリリングでした。ペレスさんの演奏を聞きながら,インターナショナルであると同時に,やはりルーツはスペインなんだなぁと感じました。改めて素晴らしいピアニストだと思いました。

 金沢市アートホール前の看板



【114】18:30〜 コンサートホール
1)ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ
2)ファリャ/「三角帽子」第1組曲
3)ロドリーゴ/アランフェス協奏曲
4)(アンコール)ディアンス/タンゴ・アン・スカイ
●演奏
井上道義指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(コンサートマスター:サイモン・ブレンディス)*1-3,パブロ・サインス・ビジェガス(ギター)*3,4


コンサートホールのこの日最後の公演には,お待ちかねの井上道義指揮OEKが登場しました。客席は超満員で,ラ・フォル・ジュルネ金沢名物の「ステージキャスト席」も登場していました。


この人気ですが,アランフェス協奏曲を聞きたいというお客さんが多かったからかもしれません。

最初のラヴェルの亡き王女のためのパヴァーヌでは,ホルンがちょっと不安定な感じがあったのが残念でしたが,じっくりと端正に透明感のある音楽を聞かせてくれました。

ファリャの三角帽子組曲第1番はOEKは,意外によく演奏している曲です。冒頭のティンパニからスペイン情緒たっぷりでした(解説リーフレットには冒頭の「カスタネットの乱打が聞きどころ」と書かれていましたが...この組曲版には入っていなかったようです。ちょっと残念)。井上さんらしく「フラメンコを踊りたくて仕方がない」ような力強さのある演奏を聞かせてくれました。途中出てきたファゴットの柳浦さんのソロも,即興的な自由さがあり印象的でした。

というわけで,前半の2曲もOEKらしい井上さんの手足になったような,表情豊かな演奏でしたが,何といってもパブロ・サインス・ビジェガスさんがソリストとして登場したアランフェス協奏曲に感動しました。

この協奏曲を1500人程度のホールで演奏する場合,楽器の音量の関係で通常はPAを使うのですが,ビジェガスさんは,マイクなしで演奏していました。まず,これがすごいと思いました。私は3階席で聞いていたのですが,しっかりと音が届いていました。どの部分についても集中力抜群の熱演だったと思います。第2楽章については,ムード音楽のように聞かれることもありますが,ビジェガスさんの演奏は気合い十分で,思わず身を正して聞いてしまいました。カデンツァの部分での弦をかき鳴らす部分の迫力も印象的でした。この楽章のもう一人の主役である水谷さんのイングリッシュホルンも哀愁たっぷりでした。第3楽章も力いっぱいの演奏で,演奏後は盛大な拍手が起きました。

井上さんは,この時「この曲をPAなしで演奏することは異例だが,見事だった。それにしても驚いた。OEKメンバーも大歓迎だった」ということを語り,会場はさらに盛り上がりました。その拍手に応え,アンコールではタンゴ・アン・スカイという曲が演奏されました。打楽器的な感じのある大変格好良い演奏で,会場はさらにさらに盛り上がりました。



 
夜になってもこんな感じで大賑わい

終演後,一休みして通路を歩いていると,何とビジェガスさんがにこやかに歩いて来ました。「これはこれは」ということで,すかさずサインを頂いてしまいました。大変良い記念になりました。見た目通りの好青年でした。
 色々とメッセージも書いていただきましたが...読めません。

 
クラシック・ソムリエ検定のPR企画。3種類の問題のうち1つだけ全問(10問)正解したので,記念に作曲家のイラストの入った缶バッチをいただきました。



【125】20:00〜 邦楽ホール
1)ラヴェル/ボレロ(4手版)
2)プーランク/「ナゼルの夜会」〜「分別の極み」「手の上の心臓」「磊落と慎重と」
3)サティ/ジュ・トゥ・ヴ
4)ラモー/歌劇「プラテー」〜フォリーのアリア
5)ラヴェル/鏡〜「悲しい鳥たち」「道化師の朝の歌」
6)ドビュッシー/まぼろし
●演奏
能:渡邊旬之助*1,6,渡邊茂人*1
熊田祥子(ソプラノ)*3-4,6,田島睦子*1,3-6,相良容子*1-2(ピアノ)


本日最後の公演は,「金沢ならでは(Regard de Kanazawa)」公演で,二台のピアノによるボレロと能舞の組み合わせでした。ピアノの田島睦子さんと相良容子さんは,ぞれぞれ黒と白の衣装,能舞の渡邊旬之助さんと渡邊茂人さんも黒と白の衣装。舞台の上手側にピアノ(連弾。背中を見せるような配置になっていました),下手側に能舞,ということでステージ全体がシンメトリカルな対比を見せるような構成になっていました。そういう点では,どこか西洋のダンスを見るような感じもありました。先程,井上さん指揮で聞いたオーケストラ版のボレロ同様,曲が進むに連れて,照明の方も徐々に明るくなっていく構成で,不思議な緊張感と和洋の相互作用を楽しめる面白い舞台になっていました。

その後,能舞なしの演奏が続きました。相良さんの独奏によるプーランクの「ナゼルの夜会」の抜粋は「動物の謝肉祭」の人間版といった感じでしょうか?洒脱さのある演奏でした。ただし,どの曲も初めて聞く曲だったので,それぞれの曲の内容の解説を読んでから聞いた方が楽しめるかなと感じました。

続いて,熊田祥子さんのソプラノを加えて,サティの「ジュ・トゥ・ヴ」とラモーのアリアが歌われました。熊田さんの声は大変軽やかなので,妖精役によく合っていると感じました。,

田島さんによるラヴェルの「鏡」の中の2曲は大変聞きごたえがありました。特に「悲しい鳥たち」の透明感のあるミステリアスな響きが印象的でした。「道化師の朝の歌」での奔放な力強さも田島さんらしいと思いました。

最後に再度,ドビュッシーの「まぼろし」という歌曲にに合わせて再度,能舞が舞われました。こちらの方はそれ程長くない曲でした。赤い髪,赤い衣装での舞(一人だけでした)ということで,全体的に若々しさを感じました。

ラ・フォル・ジュルネ金沢ならではの,「能とクラシック音楽との共演」についてもすっかり定着してきているのですが,能舞の意図であるとかストーリーについては,よく分からないということが多いですね。今回もそうでした。先入観なしに音だけで表現するのが理想的ではあるのですが,現在となっては,能の世界は西洋音楽よりも遠い世界のような面もあるので,プレトーク的な説明が合っても良いかなと感じました。

 本公演1日目終了。

というわけで,午前中から夜8時過ぎまで,本当にいろいろな種類の音楽を楽しむことができました。大満足という本公演1日目でした。

(2013/05/11)